24話【呪い2】
ステータスに見慣れない。呪いの項目が追加されていく。
「やっぱり…服についた血を見てそうじゃないかと思ったんだよね…。呪いはそういう神聖なものを媒介にして相手に押し付けるものだから」
さ、最悪だ…。どんどん僕弱くなっていくじゃないか…。
しかも呪いって僕にかけられた魔王のペナルティと一年間守り続ける契約の二つも合わせたら実質僕今三つの呪いを同時に受けている事になる。
つまりスキルの数を呪いの数が上回っている状態だ。何だこれ、この異世界は俺弱ええ、を楽しむものなのか…?。
「多分お兄ちゃんはその呪いを受けている限りこの街の敷地から出られない。出たらどうなるかはかけた本人にしかわからないけど…死なない程度に酷いことが起きるんじゃないかなぁ…。」
「こ、これ治す方法とかは…」
「うーん…簡単な呪いとかなら解呪魔法で何とかなるんだけど今回は人の命をコストに使われてるから…多分、【解呪マスター】とか【解呪の達人】みたいなレアスキルを持ってる人じゃなきゃとけないと思う」
ここにきて再びスキル。
リリスがスキルを欲しがった意味もわかった気がする。
スキルひとつあれば才能や努力を無視して一気に何かのスペシャリストになれるんだ。
そしてそのスペシャリストは百人に一人。
今言ったようなレアスキルだと数十万人に一人とかで見つけるのは相当難しいらしい。
「い、一応わたしも明日図書館に行って解く方法がないか調べてみるよ!人間の回復知識なら案外あっさり解呪する方法あるかもだしっ!」
と、また慰められる僕。
思えば異世界に来てからずっとこの妹に支えられまくってる気がする……………僕自身も何か成長しないと…。
「あと、もう一つ解呪の方法があるんだけど…」
「!それって?」
リリスの負担にならず僕自身の力でどうにかなるモノなら自分でやりたい。
そう思い尋ねたが
「呪いをかけた本人が死ぬこと」
「………………」
お、終わった…。
早々に諦めるのは良いことではないが、すでに僕はアイツとの格の違いを見せつけられている。ステータス、知識、経験の全てで劣っている相手にどうやって勝つのか。
神にでも祈って依頼中に事故死する可能性をあげた方が現実的な気がする。
「…でもやっぱりまずは相手を知ることが大事じゃないかなぁ、向こうだけがお兄ちゃんを知っている今の状況はフェアじゃないし」
「あ、あぁ…、うん。そうだね、相手の顔もわからない相手なんじゃ対策のしようもない…。」
「うん、だからやっぱりまた異世界人の情報収集からはじめよっか」
しばらくの目的は解呪の方法を探すこと、それから異世界人カズトを見つけることとなった。
向こうに僕がバレている以上、リリス発案の異世界人誘き寄せ作戦はお蔵入りとなる。
…リリスの正体がバレれば僕を殺さない理由も無くなるし、一刻も早くどちらかを達成しなければいけない。
もう時計の短針は空を指していたため、妹を先に寝かせて僕はいつやってくるかわからない。
異世界人の脅威に怯えながら朝まで部屋の扉を見張り続けた。
※※※※
翌朝、僕らは朝早くから図書館にいた。
異世界の図書館は大人気なようで開館すぐにも関わらず中には数十人以上の人がいるように見える。
生活インフラを支え就職の有利さにも魔法が関わってくる世界となると当然か、この世界では本の価値がまだ高くて貸し出しなんかもやってないみたいだし。
リリスの案で解呪について少し調べるとのことだったんだが、それドランあたりに聞けばすぐわかりそうだしお前が魔法について調べに行きたいだけなんじゃないの?と言いかけたが僕のためのことなので流石に言わない。
きっと今頃リリスは僕のために解呪について必死に調べているのだろう。なんか呪いについての本が置かれているコーナーを通り過ぎて魔道書の棚へ一直線に向かっていった様にも見えたが僕は信じてる。
「……暇だなぁ」
一方で魔法の使えない僕は、何するでもなくただうろうろと図書館の中を散歩していた……というか、落ち着けないのだ。
今この中にいる数十人の中、例えば司書さんが急に僕に話しかけてきて「やあ昨日ブり」とか言いながらまた自殺でもされたらと思うと本当に怖い。
あいつの人間を支配する能力は最悪だ、僕は人間が信じられなくなってきていた。
…目的もなく歩いていたのだが本棚の案内板の「歴史」という項目に目が止まる。
「…ここなら少しはこの世界について学べるかな」
当然だが魔法や呪い関して以外の本も図書館には置いてある。
異世界についての知らないを減らすためにも、適当な一冊を手に取ってみた。
「…………っ」
本は開かない。
…いや、僕には本が開けない。
わかっていた。
魔法の力ではなく、これは僕の呪い。ステータスウインドウにも表示されない僕が前世から抱えたトラウマのせいだ。
教科書のような薄い本やライトノベルですら僕は開くことができない。
震える手を押さえ落とさないように慎重に本棚へ戻す。
欠落適正なんてなくても魔法は使えないと思っていた理由がこれだ。
「……ほんと、これじゃ僕弱ええだ…」
緊張した胸を抑えてゆっくり息をする。
…また自分が役に立たない理由が増えてしまった。
不甲斐なさにその場に屈みこむと誰かから背中を優しく叩かれる。
途端に恐怖心が胸を支配して一気に体温が下がるのを感じる。
ゆっくりと振り返った先には、
「………やぁ、昨日ぶり」
「…う、うわあああああああああ!!!?」
カ、カズト!?情けなくも僕は体勢を崩し転ぶ。
や、やばい。逃げられな───
「………大丈夫?」
「…………………………………えっ?」
差し出された手を見て驚く、そういえば昨日の殺気や嫌な気配を一切感じない。
それどころかその相手は申し訳なさそうな表情で、僕の目を優しく見つめていた。
「……図書館では静かに、ね」
その眠たげな目を見て思い出す。
昨日図書館で僕に欠落適正について教えてくれた少女が、そこに立っていた。




