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15話【変態ペットブリーダー】

異世界生活三日目、変態ペットブリーダーの朝は早い。

いや早くねえよ、まず何なんだその職業は。

どうやら昨日受付嬢のお姉さんは僕の登録をする前に職業欄に勝手にこの変態という文字を書き足してくれたらしい。

…まあ正しく動物とかのブリーダーしている人達と妹をペットとして扱っている僕を一瞬にするのは良くない、という配慮だろう。仕事のできる人だなあ。

昨日僕達はドランと共にギルドへ冒険者としての登録を済ませに行った。

僕の母親が「今息子さんは異世界で変態ペットブリーダーとして頑張ってますよ」…なんて聞いたら泣くんじゃないかな。

とかネガティヴな妄想はやめて昨日購入したパンを齧る。


「……体が痛い…」


昨日は歴史に残る新たな職業の誕生に、一部の気の良い冒険者たちが僕たちのギルド加入を祝ってくれた。

男性冒険者たちは僕に色々飲ませながら(もちろんギリギリノンアルコールを)時に歌い時に騒ぎ、一方で女性冒険者たちはリリスを囲って僕との壁を作るように彼女を慰めている姿が見えた。

あとサニー?だったかの大男はこの大ニュースを皆に聞かせようと僕とその職業をギルドのみんなに話して回ってやがって新しくギルドに入ってきたまだ僕を知らない冒険者達を驚かせる姿を覚えている。

…あの大男いつか殺す………。

なんか僕もうこの世界で結婚とか恋愛は一生無理な気がしてきた。…元の世界でもできなかったけど。


そんな乱痴気騒ぎを夜遅くまで行い、リリスと僕はお互い無言で僕らの宿まで帰ってきた。

同じ部屋に入れるのも拒まれるかと思ったがそこまではしなかったらしい、あまり身体が強くない僕としては助かる…。

ただそれでも流石に同じベッドで寝るのは生理的に無理だった様で床に枕が置いてあったので大人しくそこで寝た。

体の節々が痛いのはそのせいだろう。

時刻はすでに11時を回っている。

今日から日銭を稼ぐためにまたギルドへ行って依頼をこなさなきゃいけない。

そう思ってまだ布団でくるまるリリスを優しくゆすって起こした。


「リリスおきて、そろそろギルドに行こう」

「行きたくないぃぃ……」


顔を覆って恥ずかしそうに悶えるリリス。どうやらすでに目は覚めていたが街の人と会いたくないため布団に潜っていたようだ。

この子をずっと部屋の中に置いて僕だけが仕事をする形でもいいんだが(というかリリスが魔族バレするリスクを抑えようとしたら本来そっちの方がいいんだけど)外の世界の脅威に僕が1時間と耐えられる気もしないので何としても起きてもらう。

僕もリリスやドランのように魔法が使えれば一人でも冒険できるのにな…。

なんて考えながら無理やり布団を剥ぎリリスを出す。

筋力が常人の数倍ある魔族のお嬢様をお布団から出すのは至難の業だが、この程度変態ペットブリーダーの誇りにかけて造作もなく行わねば…!




※※※※



そうしてリリスの口に無理やりパンをねじ込み服を着替えさせた後。

外へ出た僕達は再び悪夢の地、ギルドへ向かった。


「はぁぁ………わたしもうあそこの人に会いたくないんだけどぉ…何なのペットってさあ……」

「そうはいうけど仕方なかったでしょ、昨日リリスのステータスを隠すにはあれしかなかったんだからさ。もしリリスが魔族ってバレて処刑でもされたら…」

「アレならまだ処刑でもされた方がマシだった!」


そう怒って僕に突っかかるリリス。

それでも僕のペナルティである頭痛が治っていることから本心では流石に処刑よりはマシだと思ってくれてるのだろう…。いや本当流石に申し訳ないけど…。


「はぁ…本当の予定ならこんな人間がいっぱいのところじゃなくて、もっと小さな村とかで静かに力をつけるつもりだったのに…」

「静かに力を?」

「…お母様が死んで次期魔王の権利が私になったから…。あとは私が成長すれば次第に力が覚醒していくの……」


異世界の魔王だとそういうシステムで強くなるのか…。


「私に完全な魔王の力さえあれば異世界人たちだって…」


異世界人、そういえば僕を召喚した魔王も何度か言っていた、異世界人を殺せとかって。

僕の契約は1年間リリスを守ることだし流石にそこまでするつもりはないけど、でももしその異世界人とやらが僕みたいに平和主義で誰かに無理矢理異世界で生きる理由を押し付けられてこの世界にいるんだとしたら…すこし会って話してみたいというのが本音だ。


「その僕と同じ異世界人って今もどこかにいるの?」

「…いるよ、12人」


まあまあいるな…


「まあ12人ともお兄ちゃんと違ってちゃんとこの世界の人類が呼んだ勇者たちだから、全部が全部お兄ちゃんと一緒ってわけじゃないけどね…」

「?同じ召喚魔法で呼ばれてるんでしょ?」

「同じって…お兄ちゃんは私のお母様、魔王がその命と引き換えに転生させられたただほんの少し魔王のスキルを引き継いでる異世界人。一方相手はこの国の数百人の命と引き換えにきちんとした聖地で召喚された勇者様だからね。スペックが違うの」

「…え、い、命……?」

「…知らなかったの?別世界から人間を呼ぶなんて魔法軽いコストで使えるわけんないじゃん。お兄ちゃんはお母様の莫大な魔力を使って一人で連れてこられたみたいだけど向こうの人たちはさらに大勢の人間の命っていうコストを使ってより強力な召喚魔法にしてるんだよ」


知らなかった、いや魔王様の最後を考えればどこか召喚魔法とはそうなんだろうなと思うところもあったが………他の異世界人は何百人もの犠牲の上に召喚されている?

自分の命が自分以上の数の命で成り立っているなんてどんな気分なんだろうか、僕には想像もできないことだった。


「異世界人たちはチートスキルだけじゃない。生まれながらに魔族と同等…あるいはそれ以上の魔力と筋力を持ってる奴もいるだからたった12人相手でも魔族が勝てないの」


…やはり知らないことばかり、改めて聞いた事実に驚きが隠せない。

少なくとも魔王が言っていた異世界人を殺せなんて話、絶対僕には無理だろう。

そうしてまだまだたくさんの歴史をリリスに教わりながら歩いているとなにか嫌な匂いが漂ってきた。


「っ……」


横を見るとリリスは僕より辛そうな表情をして鼻を抑えている。

そういえば前に魔族は嗅覚もいいみたいな話してたっけ。

異臭の元が何か探そうと見渡すとその正体はすぐに見つかった。リリスの視線の先、教会の前にある小さな広場。

女性………が…、いやもっと正確に表現する。


───魔族の女性の生首が、そこに飾られていた。


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