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14話【ペットと奴隷】

「………………えっと、今なんて?」


口角を無理やりあげながら僕に尋ねる受付嬢のお姉さん。

視線が痛いが今は堂々と嘘をつくしかない。


「ですから、そこに書いてある通り僕はペットブリーダーでここにいる妹が僕のペットなんです。ペットは冒険者として登録できないんですよね?」

「えぇぇ、い、いやけどぉ…」


あきらかに動揺した様子の受付嬢と驚いて固まる様子のドラン。

あとさっきからリリスの視線が痛いし握られた僕の手も痛い。

おそらく「何を言ってるのお兄ちゃん」の意味だろう。

けど……今は引かない。


「お、おおおお前リリスちゃんをなんだと思って…」

「はぁ…違うよドラン。僕らはお互い合意の上で主従関係を結んでるんだから」

「はぁ!?そんなわけ──」


疑ってかかるドラン。

……そりゃそうだよね、僕も自分の妹をペットですって紹介する兄がいたら疑う、っていうかブン殴る気がする。

ここですぐに殴られたりもしもしポリスメンされないのは現代との価値観の違い、それとここ冒険者ギルドでは職業を自由に名乗って良いというその文化からだろう。

もし神様より与えられた職業がうんたらかんたらとか神聖な教会で定められた職業のみがなんたらだったらこの作戦は使えなかった。

───ガバガバな職業宣言ルールのあるこの異世界だから使える、たった一つのウルトラC。


「え、えっとお兄ちゃん私ペットじゃ…」


リリスが何か言いかける。

きっと今まさに何も聞かされず昨日出会ったばかりで昨日奴隷にしたばかりの兄役にペット扱いされて混乱しているのだろう。

僕も自分で言ってて混乱してきてるがもうこれしかないんだ、今彼女本人に否定されるわけにはいかない!

息を小さく吸ってスイッチを入れる意識をする。

僕が異世界で使える唯一無二の武器、最強の魔王のチートスキル。

昨日もう君には使わないなんてカッコつけちゃったけど、緊急事態ではそうもいかない。

僕は【魔族隷奴(まぞくれいど)】を起動させてこう伝えた。


「『リリスは僕のペットだよね?』」

「───わ、わんっ!!!」


………静まり返る声。

さっきまでギルド内で騒いでいた全員がいつのまにか僕たちの会話に注目しているらしい。

何か別の言葉を言いかけていたはずのリリスも、自分の口から意を反して出るその愛くるしい鳴き声に驚いているようだ。


「わ………わんっ!?わんわんっ!!わ、くぅん…」

「リリス、『お手』」

「わんっ!」


笑顔を作って僕の手のひらにそっと手を乗せる可愛いペット。

本来の性格であれば絶対しない行動を僕にはさせることができる、それが【魔族隷奴】のスキルだ。


「う、嘘だろリリスちゃん…」

「へ、変態……」


受付嬢とドランがドン引きした様子で僕たち兄弟、いやペットと飼い主を見つめる。

………早く解放してくれ正直僕もこれを演じ続けるのはきついんだ………!

だから真剣に向き合って、あとひと押しを、僕は押した。


「………あの、早くしてくれませんか?このあと妹を散歩に連れて行かなきゃなので……あっ、受付のお姉さんも一緒に行きます?」

「け………結構ですっ!!!!」


彼女は初めて会った時の優しい笑顔からは想像もできない程の怒声と共に、提出した書類にハンコを強く押してくれる。

すると書類はそのまま光の粒となって空気中へ消え、同時に僕のステータスが更新された。

……何か今勝手に書類に書き足された気がするけど恐ろしく早かったため見逃しちゃったな…。


「お、お前…いやお前ら………」

「わ、くぅん…………」


ドランとリリスはまだ混乱しているようで宇宙に行った猫みたいな表情のまま固まっている。

しかし台風の目のように固まった僕らを他所にギルドの他の人間たちが続々と騒ぎ始めた。


「あ、あいつらとんでもねえ変態だぜ…!」

「俺たちの西の街に変態兄妹が来やがった…!」

「うおおおおお!とんでもねえルーキーだあああ!!」

「きゃあああああああ!!!」


驚いた目で見るモノ恐怖心で僕らを見つめる者、勝手に僕らを酒の肴にしそのジョッキを飲み干し始めるモノ。

何人かは笑いながら僕らに話しかけてくれた。

元から異物、異世界人の僕。

これくらいの反応してもらって当然だよね…!とか普通の人間ならストレスでぶっ倒れるようなシチュエーションを、ほんとちょっとだけ被虐適正のある僕は何とか涙を堪えて無事冒険者として登録したのだった。



【ステータスを更新しました】

吉田優人 種族:人間

職業:変態ペットブリーダー


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