12話【ギルド】
「おい優人、ギルド行くぞ」
「……はぁ?」
僕たちのボロ屋に来る客人は一人しかいない。
まだ昨日の疲れが残ってるからゆっくりしたいっていうのにあのロリコン騎士、ドランが訪ねてきたのだ。
「あれ…リリスちゃんはどうした?」
「………今トイレに行ってるよ」
「…ふーん」
こいつ本当気持ち悪いな…。
大方ギルドの話も適当でリリスの様子を見にきたんだろう、仕事しろよ騎士…。
「まあ、とにかくもう昼だ。この宿だっていずれお前自身で金出さなきゃならないし飯代だってかかるんだから、働きに行くぞ」
「それはわかるけど何でドランと一緒に行く必要あるのさ」
「お前ギルドの場所も知らねえだろ」
…確かに、正論。
昨日異世界から転移してきたばかりの僕にはギルドの場所どころか勝手も知らない。
相棒は魔王の娘だしここは人間社会に詳しいドランと行動した方がいい気がする。
「…あれっドランっ、さん、どうしてここに…?」
お手洗いから帰ってきたらリリスが尋ねる。そりゃ昨日知り合ったばかりの男が自分の家の前にいたら怖いなあ…というわけで昨日知り合ったばかりで同じベッドで一夜を過ごした僕からリリスに経緯を話す。
「ドランがギルドに冒険者として登録しに行こうって」
「そうだ」
「ぼ、冒険者ギルドに登録…!?」
リリスの顔が青ざめた。
?…何だろう、何か登録にあたって不都合でもあったかあったああああああああアアアっっ!!!!!
「う、うお…どうした吉田…大丈夫か…」
急にあることに気づいてよろけた僕をドランが心配する。
…やめろお前がヒロインムーブするな、まともななろう作品ならそこは奴隷の女の子か王女様の立ち位置だろ。
「えっと………ねえドラン、登録って何か書類とか必要?」
「書類?いや特別な理由でもない限り手ぶらでできるぞ」
「そっかあ…手ブラかあ………」
手ぶら、何も持って行く必要がないという意味。
…それはそうだこの世界ではきっと免許証や保険証なんかで身分を証明する必要はないのだろう。
だってこの世界にはもっと便利な携帯身分証明証、ステータスウインドウなるものがあるんだから…。
「ちょっと僕今日具合悪いからまた今度でいいかな…」
「ばか、薬代だってかかるなら早めに登録だけでもしちまえよ。終わったら俺がお粥でも何でも作ってやるから」
だからお前がそういうムーブをするな。
…あとお粥あるのかこの世界、それは必然的に米があるという事で日本人の僕的にはちょっと嬉しい情報。
「えっと…実はリリスも具合悪くてさ、今日僕だけ行くってわけにいかないかな?」
「え!?リリスちゃんも!?………いや家に一人で置いていくのも心配だしどうせすぐそこだ。とっとと行って済ませるぞッッ!」
あーまずい。ロリコンに変な火がついた…。
当のリリスは言い訳か作戦を考えているのか目をぐるぐる回して俯き黙っている。
………そう、僕じゃない。リリスがやばいんだ。
昨日森の中で見た限りステータスウインドウには名前と種族も表示されていた。
もしリリスの種族をこの人間だらけの街で見られたらどうなるだろうか。
…か、考えたくもない。
「あーもう、うじうじすんな早く行くぞ!」
「え、ちょ、ちょっと待って──」
立ちすくんでいた僕らの手を引き街へと歩き出す。
僅かな頭痛を感じて嘘から出た誠の様に、本当に具合が悪くなったのかと思ったがこれは違う。
…振り返るとゆっくりと不安げな表情で僕らについてくるリリスの顔が見えた。
この頭痛はペナルティ…!僕が彼女を助けないと解除されない魔王の呪い。
ズキズキと割れるような痛みを感じる頭を必死に僕は回した。




