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1話【魔王】


下を見下ろすと、人間達がこちらを見上げて口々に恐怖の言葉をあげている。


泣き叫ぶもの、逃げるもの、剣を構えるものもいた。


巨大な魔物の上に立つ僕は、そんな人間達を見下し、大きな声で宣言する。


「私は魔王!この街を焦土にされたくなければ…勇者を僕の前に連れて来い!」


人間達の阿鼻叫喚を聞きながら、街の中心へ歩みを進めた。

この世界を滅ぼすために。

最後の戦いを、始めよう。





ーーーーーーーーーーーー





目を開くと、僕は暗闇の中にいた。


「ここは…」


当たりを見渡しても何もない。

真っ暗な空間にいるのかと思い手元を覗くとはっきりと自分の手が見える。

暗闇だと思っていたこの場所はどうやら光源がないのではなくただ黒がある、そんな理解できない空間に今僕はいるらしい。


「ようやく意識が戻ったか、臆病なる者」

「!……だ、誰?」


今まで聞いたことのない程威厳のあり静かで強い女性の声にしせんをむけると何もないと思っていた空間が歪み、声の主人が少しずつ姿を表す。


「私は魔王、貴様をここへ召喚したお前の主だ」

「魔王……?」


黒いローブを身にまとい、原色のままのような目を引く金色の髪。前髪がかかり表情はよく見えないが少なくとも笑顔でないことはわかる。

そして何より頭部から生えた二対の角、明るい髪色と合わさって僕の目はその頭に釘付けになっていた。

…魔王ってなんだろう、もちろんゲームや小説なんかでは聞いたことあるけども、現実で魔王って単語を聞いてもイメージしづらい。

そもそも王様ですらテレビでしか見たことないんだけどな…


「えっと、ごめんなさい…ちょっと状況がわからないんですがなぜ僕はこんなところに魔王様といるんでしょうか…ていうか本当に魔王様なんですか」


僕は頭が良くないから素直に聞いてみることにした。


「お前は死んだんだ、臆病者よ。

死んで今お前の世界と私の世界の狭間にいる、無論夢なんかではないぞ。

どれ、証明してやろう」


そういうとその女性は、右手を前に突き出してゆっくり手首を捻る。

なんかあの手の動きガチャガチャを回す時みたいだなぁなんて静かに見ていると頭に味わったことのない程の激痛が走った。

「痛い痛い痛い!!!な、何だよこれ!!!!」


「お前が私を疑っている様子だったから信じさせてるんだ。お前のいた世界でこのような魔法はなかっただろう?」

「わ、わかった…!わかりましたから止めて!」


痛みで暗闇の中を転げ回る僕を少し笑って魔王は右手を下ろす。

同時に頭痛もふっと消えた。


「はぁ…はぁ…なんて悪夢だ…いきなり知らない女の人にこんな責められ方。僕に多少のMっ気がなければ泣いてたぞ!」


実は既にちょっと泣いてるけど、強がって魔王に抗議してみる。


「貴様が私を疑ったのが原因だろう。初めから私に平伏し素直に言うことを全て聞いていればこうはならなかった」


…なんてさっきより穏やかに笑った様な声で答えるてくれる。

なるほど……確かにさっきより信じられる。先程の痛みもこのサディスティックな性格もこれはいかにも魔王っぽい。

となるとこの空間に呼んだって話もやっぱり本当なんだろうな、夢じゃない妙な現実感と現実離れした現状の違和感をなんとなく理解した。

けど…


「けど魔王様…どうして僕をここに召喚したんですか?こんな何もない暗闇に僕なんかを…」

「…」


じっと見つめられる。


「お前と契約したい」


…契約?何だろう今そう聞こえた気がするけど…


「聞き間違えではない、お前には私と契約してほしいのだ臆病者…いや【吉田優人(よしだゆうと)】」


今までの高圧的な声でも、からかうような軽い声でもなくしっかりと僕の名前を呼ぶ目の前の女性は


「お前にはこれから異世界に転生し、私の娘を助けて欲しいのだ」


はっきりと僕の目を見つめそう言った。



「魔王の力を持って人間を殺せ。」





処女作です。

温かい目で優人くん達の冒険を見てあげてください。


(2023/12/2 編集)

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