No.917
宜しくお願いします。以前書いていた話ですが、前の作者ページにログイン出来なくなってしまったので、推敲しながら再投稿。話が変わった部分もあります。
宜しくお願いします。
「気がつきましたか?」
眼を開けてもピントが合っていない。シロウを覗き込む様に見ている顔がある。
「聞こえてる? 聞こえているなら何か反応して」
右手を上げる。
「意識はあるみたいね。そのままで良いから聞いて。今、無理して起きる必要はないわ、君は魔力切れと疲労で倒れていたからね、そのうち、自然と起きれる。肩の怪我は治っているから」
シロウの微睡を妨げない心地の良い声色。何を言っているかというより、その声に不思議と安心し再び眼を閉じた。深い海に揺蕩っている様な感覚。少しずつ海中に落ちていく。コンコンと額を叩かれた。
『あーあー、聞こえてる? 私の声が聞こえますかー?』
聞こえてるよ。
『良かった、私はNo.917、生まれて直ぐに君に食べられたダンジョンコア、きっと最短記録。私は強いモンスターを生み出して、一緒になるはずだった。そして他のダンジョンを制覇して、あいつに挑むはずだったのに』
食べてないし、あいつってなんだい?
『いや食べたし、あいつってのは君にはまだ早い。私の思い描いた計画通りに進んではいないけど、君と私は他にはない特性がある。私達はダンジョンに縛られない』
ダンジョンに縛られる?
『コアを食べてダンジョンマスターになった君だけど、ダンジョンを創りたくならないでしょ?』
さっきから情報が多すぎるんだよ、俺はダンジョンマスターなの?
『私達は本能でダンジョンを創るの、創らないと安心出来ない。そして他のダンジョンを攻撃しなきゃって思う』
ダンジョンを創る?そんな事は考えた事はない。
『そうだね。でも君は既に111個もコアを壊した、そしてそれを喧伝する事もしない、有名になりたいって思わず、ダンジョンとの関わりを隠しているよね』
確かに、隠す事に明確な根拠はないし、とにかくダンジョンを制覇して強くならないとダメだって思ってた。
『私は生まれたのが遅い割にランキングは低くない。ダンジョンを創る事もなく、君が攻撃だけをしているから。だから君と上手くやっていこうって、今は思ってる』
ランキング? 上手くやっていく?
『来るべき時にまた話すよ。上手くやる為にも一つアドバイスだ。君がスキルチェンジって言ってるものだけど、確かに君はスキルを選択する事が出来る。でも本当は生み出した魔物に渡すスキルを選択しているんだ』
魔物を生み出すのか?
『私はもう出来ない。君に食べられたから。でも君は誰かにスキルを渡す事が出来ると思うし、貰う事もできると思う』
誰かとスキルのやりとりが出来るとして、あげたスキルはなくなるのだろうか、渡す相手に条件とかはあるのだろうか
『多分、あげても君からスキルがなくなる事はないけど、渡せる相手の条件はわからないな、誰かにあげてみる事だね』
スキルを上げても、相手のスキルスロットに空きが無ければわからいんじゃないかな?スキルスロットの空きなんて解らないからな、試すのは難しい。
『いや、多分だけど、上げる事が出来る相手のスキルやスロットはわかると思う。だから君はスキルのやりとりが出来る相手に会っていない。そろそろ君の意識が覚醒する。時間がないからもう一つ教えておくけど、スキルを強化したり統合させる事も出来るはずだ。色々と試して、、』
最後の方はよく聞き取れない。反対に深い海の底にあった意識が上昇していく、上昇するにつれて思い出す。タケルは助かったのか? スタンピードは抑えられたのか? そうだ、お金もいるんだった。
目を開ける。上半身を起こすと、左肩に鈍い痛みがあるが左腕は普通に動いている。
「起きたのね、シロウ。何か痛いところとかある?」
目の前の白衣を着た人は、大きな垂れ目の美人さんだ。大きな目に見つめられ少し緊張してしまう。患者に安静にして欲しかったら、美人さんは大変だな。
「大丈夫です」
「立てる? 外傷はないから、意識さえはっきりしていれば、普通に動けると思うけど」
ベッドの横に立つ、身体は普通に動く。
「ここはどこでしょうか?」
「そういった話は他の人がするわ、ちょっと待ってて、直ぐに来ると思うから」
ガチャッとドアを開ける音がすると、着たわねと言いながら女医さんがシロウのベットから離れた。ベットの横はカーテンがあり、入口は見えない。
「何その格好?」
「シロウと話す時わね、この格好なの。そこには触れずに、少し外れて貰っていいかな? 埋め合わせはするから」
シャッとカーテンを盛大に開けられた。予想通り、そこには久しぶりのシカさんがいた。
「3年振りだね、シロウ」
読んで頂きありがとうございます。
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