カルラ
宜しくお願いします。以前書いていた話ですが、前の作者ページにログイン出来なくなってしまったので、推敲しながら再投稿。話が変わった部分もあります。
宜しくお願いします。
西9ダンジョンの件でシロウ達のパーティランキングは17位まで一気に上がった。ポイントの付け方は明らかにされていないが、ダンジョン制覇は一気にポイントを稼げるのだろう。
シカさんの約束まであと1年ある。上がり方から見れば1位は可能な様に思えるが、トップ集団も制覇をしているだろうから、ランキングの上がる勢いは鈍化するはずだ。
「次はどのダンジョンに行く? 私は東16と考えているけど」
ヨウコもそれをわかっている様で、積極的にダンジョンの情報を集めてくれている。
「東16は出来てから一年半くらいだから、そろそろランキング上位者かターゲットにすると思うわ」
「そうだね、やるからには出来る限り制覇まで行きたいから、あんまり古いのは怖いな」
「でもランキング上位者は、新しいダンジョンに潜ってはダメって言う暗黙の了解があるみたいなの」
1番良いのは、新しいダンジョンに潜り、制覇の確率を上げる事だが、ランキング上位者がそんな事ばかりをすれば全体が育たない。プロの世界ではともかく、ここはアカデミーだからそんなルールはありそうだ。
「ヨウコの言う通り、東16にしよう」
「あと、その前に武器や防具を買わない? アーシアさんからカルラさんに相談した方が良いよって言ってもらったんだ。シロウはバットケースが破れてるし、ファフは斧をそのまま持ち歩いてるし、私も弓でなくて、杖が欲しいし、、」
「カルラさんってこの前のアーシアさんの時の人だよね」
「そう、装備具については、アカデミー史上最高の天才って言われてるの、一度話を聞いてみたくて」
「それは出来れば話を聞きたいね、行ってみよう」
ーーーーーーー
カルラの工房のドアは開いており誰でも入る事が出来る。アーシアの工房と違い整然としており、武器や防具が壁に掛かられていて、それぞれに値札が付いている。
「うわっ、2万ユーロ。すごい!」
「う〜ん、中級以上の価格がするのね。どうしよう、この杖を買おうかな、シロウはどう思う」
「えっ、ヨウコ買えるんだ、お金持ちなんだね」
半年前までは、家賃で苦労したシロウなのだ、ヨウコが買えることに驚いたが、元々ヨウコは攻略者だったから蓄えがあるのだろう。シロウは毎月シカさんから送られてくる生活費だけで過ごしているから貯金とは無縁だ。
「シロウはダンジョン制覇しまくってるじゃない。かなりの報奨金が貯まっているはずだよ」
「それが、ここにくる前は隠れてやってたから、報奨金はないんだ」
「でも。アカデミーに入ってから二つ制覇したよね。私もびっくりするくらい入ってた。前は制覇したことなかったから、制覇するとこんなに貰えるんだって驚いた。シロウは何かに使っちゃったの?」
「えっ?」
「えっ? さてはシロウ、攻略者カード見てないわね。」
「見てない。前は1円も入らなかったからさ、ダンジョン制覇したら報奨金が入るなんて事も忘れていたよ」
「先に一回みて来たら? 工房舎の入口にATMあったよ」
「そうするよ、ヨウコは見てる?」
「直ぐ帰ってくるよね。私はここで待ってるわ」
「ファフ、ちょっと外に行こう。あれっファフ」
いつもの様に近くにいるはずのファフがいない、周囲を見れば、ファフはいろんな武器や防具を見ている。自分でシロウから離れるのは珍しい。ファフに近寄り声をかけた。
「ファフ直ぐ帰ってくるけど、ちょっと出てくる。一緒に行く?」
「見たい」
「じゃあ、待っててね。ヨウコがいるから、何かあったら声をかけて」
「うん」
ーーーーーーー
シロウが工房に戻ると、ヨウコもファフもいない。それどころか、シロウ達以外にも3人位いたのだが誰もいなくなっていた。キョロキョロと周囲を見回すと奥のドアが開いた。
「シロウ、こっちに来て」
ドアから顔を出したヨウコが手招きをしている。ドアを開け奥に入ると、そこは武器や防具の製作所になっていて工具が所狭しと並んでいた。
「来たね、シロウ。私はカルラ、この前一緒にギルドに行ったけど、ろくに挨拶も出来ていないわね」
カルラさんは茶色の髪を肩口で揃え、白いシャツにブルーのスーツを着ており、何というか、出るところが出ている女性だ。
「シロウです、この前はありがとうございました」
「お礼を言うのはこちらさ、アーシアは私のライバルだ、私があそこに行くのは当然さ。シロウ達は何も関係がないのに行ってくれたんだろう」
見るからに大人の女性であるカルラさんと、見た目には幼くも見えるアーシアさんがライバルというのは面白く感じるが、ギルドの時のカルラさんは必死に見えた。
「さっき表を見たら、ヨウコとこの子がいたからね。中に入ってもらったんだ。表に出してあるものも、悪い出来じゃないが、あれらは言ってみれば一般用でね。気に入った攻略者はこちらに呼んでいるのさ」
「シロウが出た後に、カルラさんに声をかけられて、少し話したんだけど凄いの、オーダーメイドも出来るみたいだから、私は杖を造って貰おうと思って」
「良かったね、是非そうしなよ。ファフもさっきから何かじっと見てるけど、ファフは何か欲しいものがある?」
「シロ、これ」
ファフが指を指した先には、赤色の鉱石かある。
「それはたまたま出来た鉱石で、なんの効果があるかわからない、まだ売り物ではないんだ」
カルラさんの話を聞いても、ファフはじっと見ている。
「カルラさん、例えば、この鉱石を使って、斧のケースとかペンダントとか、今のこの子の身につけられるものは造れますか?」
「もちろん造れるぞ、ファフはどうしたい? ペンダントが良いか? ケースが良いか? 他に欲しいものはあるか?」
「ペンダント」
「わかった。ペンダントを造ろう。あと斧ケースもだな。幼い子が斧をむぎ出しにして歩いているのは、アカデミーとは言え物騒だからな、それとシロウは何かあるのか」
「ちなみに、ファフの装備でいくらぐらいでしょうか」
「うーん、1万ユーロでいいぞ。手持ちがないのであれば、支払いは後払いでもいい」
頭の中で計算する、1ユーロは135円くらいだから135万! 金額にはビックリしたが、表の武器でも2万ユーロなのだ、かなり良心的なのだろう、幸いヨウコの言っていた通り、シロウもお金がかなり入っていたし、
「では、剣の鞘もお願いしたいのですが」
シロウはそう言うと、バットケースから2本の剣を出した。カルラさんが雷獅子キリンの剣を見ると、手に取りじっくりと見入る。
「これはアーシアが造ったのか?」
「剣自体はドロップしたものですが、その後にアーシアさんが手を加えた形です」
「流石、アーシアだな。この剣は不思議と生きている様にすら感じる。良い剣だな、名前はあるのか?」
「雷獅子と名付けました」
咄嗟に口にしてしまった。名付けたというかモンスターの名前で最初からついていた様なものだ。スキル欄にも浮かんできた名前だ。
「雷獅子からドロップした剣ですので」
「雷獅子とは珍しい。確かに承った、鞘を二つ造ろう。価格はさっきのと合わせて、1万ユーロでいい。この剣の鞘を私が造りたいのだ。幸いヨウコの杖の材料も揃っている。五日後に取りに来い」
「わかりました、それと良いんですか? お金は払えると思います」
「いや、いいんだ。私が造りたいと思った。ただし、そうなった時は心のままに造らせて貰うからな、シロウの細かなオーダーは聞かない」
そう言いながら、片目を閉じてウインクをするカルラさんは、とてもチャーミングな女性なのだろう。
「宜しくお願いします」
シロウは頭を下げてそう言った。
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