ライコネン
宜しくお願いします。以前書いていた話ですが、前の作者ページにログイン出来なくなってしまったので、推敲しながら再投稿。話が変わった部分もあります。
宜しくお願いします。
「熱くなっても、何も変わらないな。クランク教授とアーシアさんはギルドで研究を行う」
ライコネンがそう言うと、一枚の書類を出した。細かな文字の様なものは模様にも見える。最後にアーシアさんのサインとおもしき署名があるのはわかった。
「誓約書。しかも締結魔法付きとは・・学生に使うものでは無い」
「学生、学生とロバートは彼らを甘やかす事しか出来ないのだな、それが彼等の成長を妨げている事もある。彼等は充分な判断能力を備えている」
ライコネンが書類を出してから、シロウには書類とアーシアさんを繋ぐ黒い線が見えた。黒い線はアーシアさんに巻き付いている様に見える。
「アーシア、俺とアカデミーに戻ろう」
ロイさんの声に、アーシアさんは少し反応している。しかし黒い線が抑えつける様に巻き付いている。
「君は、締結魔法というのを知らないのか? まあ目にする機会はそうは無いだろう。ロバート、教えてやれ」
「ロイ、あまりアーシアを刺激するな。アーシアが締結魔法に背けば、何が起こるかわからない、内容次第だが、アーシアにとって良くない事が書いているに決まってる」
「何故、悪様に言うのだ。わからないか? 良い契約なのだ。アーシアさんはクランク教授と共に、設備の充実したこのギルドで研究を続け、人類を救った英雄となる」
「アーシアは英雄になりたいわけじゃない。誰かを助けたいだけだ。自分達がそうされた様にだ。わからないのはお前らの方だ」
静かに独り言を言うようなロイさんの言葉に、アーシアさんはまた反応した。
「私は・・」
アーシアさんが何かを言おうとするのを、黒い線が邪魔をしている。巻きついていた線の面積がどんどん拡がっている。
その姿を見る事が出来ず、シロウは剣を入れたバットケースで黒い線を断ち切る様に振った。
黒い線が斬れた。斬りたいとは思ったが本当に斬れるなんて。
いち早く反応したのライコネンだ。
「貴様!何をした」
「何って、素振りかな、ずっと話を聞いてばかりで、身体を動かさないと」
「ぶざけた事を言う。アーシアよ。このペンを受け取れ」
「アーシア、受け取るな支配系のスキルにかかるぞっ」
リョウさんの声に、アーシア差し出されたペンを避ける様に立ち上がると、ロイの方に駆け出した。
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締結魔法が斬られた。とぼけた顔をしたあの男は何者だ。ライコネンは直ぐに頭の中を整理するが思い当たらない。主要な学生は記憶しているはずだ。
「貴様は何をした? アカデミーのあるこの地区のギルドマスターとして命令する。教えろ」
「拒否します」
「だから副ギルドマスターとして、命令したと言っているのだ。貴様どこの国出身とかは関係ないのだ、アカデミーである間はEUギルドの命令には従う義務がある」
おかしな雰囲気だ。こんな時は必ず口を挟むロバートが、なにも言わない。
「ライコネン、やめた方がいいぞ。続ければ貴様の経歴に傷が着く」
ロバートはものを知らないが、決して馬鹿ではない。こんな事を理由なく言うやつではない、頭を巡らせる。副ギルドマスターたる自分が命令出来ない奴、直ぐに思い当たるが、学生ごときには関係ないはずだ。
「特権もちだとでもいうのか?」
「こいつは甘利シカの庇護特権を認められている。警告はしたぞ」
「おっさん、あんた支配系のスキル持ちだろ。先程のペンは制約か?」
この男はエルザのパーティのリョウか、面倒だな。アーシアは先程のペンをかわした事で完全に『誘導』から外れた。まあ良い、締結魔法を外したとしても契約は有効だ。
「アーシアさん、貴方はギルドと契約したのだ。契約は履行して頂く」
「スキル影響下での契約は無効だ」
「その通りだ。しかしスキル影響下かどうかは証明される必要がある。無効だと言うなら、証明はそちらがすべき事で、私がする事ではないな」
「私が証明してみせます」
「君はカルラさんだね、将来を期待される君が無理をする事ではない」
「私はアーシアを知っています。だから誰が正しいかを知っています。必ず証明してみせます」
面倒、面倒、面倒だ。既に目的は果たした。あわよくばの欲を出して、この手の熱血漢達に時間を割かれるのは苦痛でしかない。
「アーシアの契約内容を言え、学生を預かる学長として、それは聞く権利があるはずだ」
「いや、ロバートよ。私は思い違いをしていたようだ。アーシアさんがそのように嫌がるのであれば、良い成果は得られまい。契約は破棄しても良い、しかしだ、一度結んだ契約を破棄するのだ。条件はつけさせてもらおう」
「有難い申し出だが、もちろん条件次第だ」
「では、条件について話す前に、学生の皆さんには退出頂く。ロバートよ、まさか交渉すら学生の前でないとできないなどとは言わないだろうな」
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「デール様、残念ながら身柄の確保までは至りませんでした」
「ライコネンらしくないな。お主は必ずやり遂げると期待していたのだが、失敗が続いているな」
「申し訳ございません。アカデミーが甘利シカの名前を出してきたので引かざるを得ませんでした。しかし、研究内容は取得済みです。アカデミーを獲るよりも、成果を吸い上げる方がギルドのお役に立つかと思いますが、、」
「賢しいな、お前は駒だ。考える駒は不要な動きをする。研究内容は私の元に送れ、念のために言っておくが、小細工はするな。私はお前を信頼していない。成果に結びつかない内容で有れば、お前が何かをしたと判断する」
「承知しました」
デールへの電話を切ると、執務室のリクライニングを倒し、一息着く。先ずはデールの直通者を探す必要がある。それはライコネンにとっては難しい事ではない。ふと頭に締結魔法を斬られた事が思い浮かび、電話をかける。
「ライコネンだ、ハインツに電話する様に伝えろ」
読んで頂きありがとうございます。
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