後始末
宜しくお願いします。以前書いていた話ですが、前の作者ページにログイン出来なくなってしまったので、推敲しながら再投稿。話が変わった部分もあります。
宜しくお願いします。
「だから、アカデミーの取り込みに失敗しましたか、、」
部下が差し出した書類には、アカデミーからのエクスパンション警告から始まり、救援の依頼やそれを断った事、最後には、ダンジョンをアカデミーが自力で制覇したと一連の顛末が書かれている。ライコネンは書類に目を通すとデスクに投げた。
まあ、このプランは降って湧いた計画で、上手くいけばラッキーというものであったから、特に怒るような事ではないが、、
「馬鹿もの!だから救援を検討せよといったではないかっ」
事更に大きな声をだす。その言に恐縮する部下。部下には私が間違えないという事を教えておく必要がある。
電話がなる、嫌な番号。部下に手を振り下がらせる。
「デール様、プランBは失敗しましたが、当初の計画は順調に進行しています」
実務は副ギルドマスターである自分に丸投げ、その割に停滞や失敗と思わしき事案があれば連絡がくる。
「はっ、プランAは次の段階に入ります。またご報告致します」
このタイミングでの電話か、やはりこのギルドに直属の部下を入れているな。大体、EUギルドの伸長などライコネンに興味はない。
世界中から優秀なスキル保持者が集まるアカデミーを取り込み、全員をEUの攻略者としたとして、次の世代はアカデミーに集まらなくなるだけだ。だから、アカデミーを取り込めという指令には裏の意味がある。
「裏がつまらない理由でなければ良いがな」
そう呟くと、ライコネンはデスクの上にある電話を取った。
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コアを壊した後、平野に戻るとみんながいた。ヨウコが抱きついてきて、人間の姿に戻ったファフが引き離そうとする姿を誰もが見ている。それが恥ずかしくなって、シロウからみんなに声をかけた
「なんとか、ダンジョン制覇出来ました」
「良くやった」
学長が答えるとハインツさんが前に出る。
「シロウ、すまないが聞かねばならん事がある」
「ファフの事でしょうか?」
「ハインツ、シロウは特例保持者だ。自発的に話す以外は聞いてはダメだ言った」
「しかし学長、ドラゴンに変身出来るスキルなんて初めてです」
シロウは学長には話していた、ファフが離れないから学園に連れて行くしかなかったのもあるが、学長であればドラゴンについて知っている事があるかと思ったのだ。
「ドラゴンではない、ファフニールだ。特殊なスキルを持ってしまった故に実験材料の様に扱われる子供にしたいのか? 俺は嫌だぞ。みんなも他言無用だ。命の恩人の秘密を守れない馬鹿はいないと知っているがな」
「シロウ、助かったぞ。私は穴に落ちてからの話を聞きたいのだが、それも聞いてはダメなのか」
「エルザ、それは聞くとしても落ち着いてからだな。シロウ、ありがとう、お前のお陰で帰ってこられたぜ。しかし、俺らを差し置いて制覇しちまうとは、やるなお前!」
「リョウさん、ある意味では、リョウさんのおかげです。直行出来ましたからね」
「まあ、俺のおかげだな。制覇の事じゃねーぞ、お前の後を追って穴に飛び込もうとしたヨウコを止めた事だ。怪我なく帰れただろ」
「リョウさん、言わないでください」
ヨウコが顔を真っ赤にしている。
「シロウ、ハインツと俺もダンジョンの話は聞きたいぞ、俺からは聞かなくても、お前が話すのを聞くのは問題ないからな。まあそれはリョウの言う通り、学園に戻ってからだな」
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ロバートは学長室のデスクに座り、亡くなった学生のファイルを見ながら、耐えていた。人の死に心を動かされる事はない。しかし学生の死は違う。作戦を始め、各所の状況判断、思い返すと全てが間違えていると思えた。今までも学生の死はあったのだ。自分で指揮したから殊更に応えている部分も大きい。
ハインツはロバートを責めなかった。プロの攻略者に依頼するべきだと当初に自分の意見を述べた以降は、一貫してロバートを支持している。いっそ誰かに責めてもらった方が楽だな。それが弱音である自覚もある。
電話が鳴った。ライコネン、学園のある地域の副ギルドマスター。
「ロバート、ダンジョン制覇おめでとう。さすがだな」
「情報が早いですね。救援は寄越さないのに、見張りは出す」
「私は君を信用している。君の言う通りダンジョンがエクスパンションする様な事があれば、大変な事態だからな。君達を見張っていたのではなく、ダンジョンを見張っていた。それに救援の話は虫が良すぎとは思わないのか? 日頃アカデミーの自治にうるさいのは君の方だ」
「私が自治と言うのは、卒業生の自由についてで、それは各国から入園者を受け入れるアカデミーでは当たり前の事だ。彼等の多くは自国に帰る事を希望している」
「私は国に帰れないと言った事はないだろう。所属がEUギルドになるだけだ。アカデミーがEUにある以上、それは自然な事だ」
「自然ならば、何も言わなくても学生がそうする。ダンジョンに潜る際のEU所属規制など不要だ。そんな事をしたら誰もアカデミーに来なくなるだけだぞ」
「それこそ学生や各国が考える事だろう。それにダンジョンの自治をうるさく言うから、今回の様に救援手配が難しくなるのだ。まあ、そんな話をしたくて電話したわけではない。電話の要件は、明後日に視察訪問する。以上だ」
そう言うとライコネンの電話は切れた。
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