エルザ
宜しくお願いします。以前書いていた話ですが、前の作者ページにログイン出来なくなってしまったので、推敲しながら再投稿。話が変わった部分もあります。
宜しくお願いします。
久しぶりのアカデミーだ。エルザはアカデミーの空気を大きく吸い込んだ。この一ヶ月は最悪だった。自国の臨時クランに呼ばれての帰国は名誉な事だが、その後は市民賞の検討とか、政治家のパーティへの参加とか無駄な時間が本当にキツかった。やはり、ひたすらにダンジョンの事を考えられるアカデミーは最高だ。
[祝!イケメン帰国]と大きな文字でパーティルームに貼られている。こんな事をするのはリョウだろう。だいたい私は女だし、髪を短くしているのは戦いに邪魔だと思ってるからだ。アカデミーでイケメンと呼ばれてるのは知っているが、この様に堂々と書かれれば清々しささえある。
「遅かったなエルザ」
懐かしい声、リョウは私の反応が見たいのだろうが、私が怒ることはない。帰ってきたという喜びが勝つ。
「私がいない間に、ガット達に抜かれているじゃないか?」
「そうだな。あいつら熱苦しい上に真面目なんだよな」
「どうかな、私にはリョウが不真面目で、彼等が普通に見える」
「奴等が普通?勘弁しろよ」
「日本人は勤勉と聞いたがな」
「俺は勤勉だぞ、自分のやりたい事にはな。そして朗報だ。俺のやる気がダンジョンに向いてきてる」
「私に会えて、そんなに嬉しいのか?」
「言っとけよ、相変わらずダンジョン馬鹿だな」
「そうだな、私はそうだ」
「西9の件は情報入ってるよな。エルザの帰国に合わせて組まれたって感じだ」
「参加はするぞ、私はその打診がアカデミーからあったから帰れたのだ。それがなければ、今も愛する我が国で拘束だ」
「名家の生まれってのもな、それと良い事教えてやるよ、西9の臨時クランはアカデミー主導だ。リーダーは誰だと思う?」
「その口振りは、まさかロバート学長か!」
「ご名答」
ーーーーーー
「西9のダンジョンは、アカデミーの周囲にある未制覇ダンジョンで最も古いものだ。諸君らを知っている様に、アカデミー周辺のダンジョンは学生の攻略対象となり、早い段階で制覇される事が多い中で、西9ダンジョンは発見以降で既に15年以上が経過した。20年経過すれば一回目のエクスパンションする可能性がある。その為にアカデミーは臨時クランをつくり、諸君らに参加を呼びかけた。参加を募った上で、こんな事を言うのは偽善だとわかっているが、それでも言っておく、危険なら逃げろ、そして死ぬな!以上だ」
参加パーティを前に、臨時クランのリーダーとなるロバート学長が挨拶をした。年齢は45歳くらいだろうか? 精悍な顔つきや口調からは、シカさんと話した時の様な気さくな印象はなく、威厳があり近寄り難いものを感じる。
「ロバート学長ありがとうございます。私は今回の副リーダーである、ハインツだ。今回のパーティ選抜は私と学長で実施し、現在のアカデミーの精鋭を揃えたと自負出来るメンバーだ。一部パーティは学長の強い推薦のもと参加しているがな。では、パーティリーダーは今回の参加決意を述べろ、パーティランキング1位 ガット」
一部パーティという所でシロウは嫌な予感がした。パーティは人数がまちまちなので何組がこの場にいるのかはわからない。しかしこの場には総勢20名もいないのだ、精鋭ならば、ここにいるのはランキングの高い者で、60位のシロウ達が、その一部に該当するだろう。しかもファフも付いてきているので、集合の時から何人かに白い目で見られている。
前に、これぞファイターという感じの男が立った。長身でがっしりとした体格。
「俺はガット。今はランキング1位だが納得はしていない。エルザ達との決着をこのダンジョンでつける為にきた。だが、勘違いはしないで欲しい。私的な目的でこの場にいるわけではない。エルザ達という壁が俺たちを高みに連れて行ってくれた。今回もそれを期待しているし、それが本来の目的であるダンジョンの制覇に繋がるから言っている。ともに戦い生き残ろう」
ガットの物言いこそ淡々としていたが、その底には熱い情熱がある事を感じさせる。周囲から盛大な拍手が起こった。
「次、パーティランキング2位 エルザ」
次に前に立ったのは、モデルのようにスタイルの良い女性だ。髪をボーイッシュに短くしているが、大きな瞳、くっきりとした顔立ち。
「私はエルザ。ガットに格好良い事を言われたが、私達は壁になったつもりはない。しかしその壁を欲する者がいるなら壁になる、助けを欲するなら助ける。私は名声に興味はなく、西9の制覇者なんて名声はいらないが、諸君らとともに、西9の制覇メンバーと呼ばれたいとは思っている。ともに戦い生き残ろう」
エルザが話終わると、先程のガットに負けない程の盛大な拍手が送られる。
「次、パーティランキング3位 ジュド」
「次、パーティランキング4位 ガネーシャ」
名前を呼ばれ前に立つ人達は、堂々と話し拍手を送られている。全員が最後に、ともに戦い生き残ろうと言うから、それが決まり文句なのはわかったが、それ以外の内容が決まらない。しかも予想通りパーティランキングの上位どころか、ランキングトップばかりだ。
「次、パーティランキング60位 シロウ」
会場がざわつく、4位の後に60位だ。これをおかしいと思わないものはいない。
「静粛に!シロウ達は南14を制覇した。入学後半年も経っていないのにだ。先程の学長の推薦は彼らだ、しかも、彼等は世界ランキング8位のシカの推薦で入学した者達でもある。シロウ、早く前に来い」
シロウが前に進めば、当たり前のようにファフも付いてくる。せめて待っておいて欲しいが、ここで無理に待たせようとすると余計に酷い事になるだろうと思い、ファフとともに前に出た。
「シロウです。私達はまだ経験不足だと思われてるし、実際にその通りです。このアカデミーに来て多くの事を学びました、アカデミーでの毎日が楽しいし、ここにこれた事に感謝しています。このアカデミーが好きです。だからアカデミーからこのクランに参加を呼びかけられた時に、何も考えず参加を決めました。その時は実力や経験の不足なんて考える事もありませんでした。出来ることは精一杯やります。宜しくお願いします、、、あっともに戦い生き残ろう」
少しの間があり、拍手がまばらに聞こえた。
「私もこのアカデミーが好きだ」
そのエルザの一声が契機となり、まばらだった拍手は大きなものになった
読んで頂きありがとうございます。
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