姫と付き人
宜しくお願いします。以前書いていた話ですが、前の作者ページにログイン出来なくなってしまったので、推敲しながら再投稿。話が変わった部分もあります。
宜しくお願いします。
シロウがアカデミーに来てからあっという間に三ヶ月が経った。今は最初の面談の為に待合室で順番を待っている。アカデミーでは単位とかテストは無い。その代わりに三ヶ月毎の面談によって滞在許可の更新が行われる。三ヶ月間の行動が、アカデミー生として相応しく無いと判断されれば退学となるのだ。三年間を経ると卒業の資格を与えられ、いつ出て行っても良いが、在籍する限りは三ヶ月毎の更新面談が行われる。
シロウは先ず学べと言われた事もあり、この三ヶ月間は基礎講義を一通り受けただけである。それでも覚える事は多く、かなりハードな毎日であった。
シロウの他には3名が待合席で待っていた、そのうち2人が多くの資料を抱えているのを見て少し焦った。面談の為にはあれほどの準備が必要なのだろうか?
まさか3ヶ月で出て行けと言われないよな、、。
何も持っていない1人と目が合った。彼はちょっと良いかな?と声をかけながらシロウの横に座った。
「君は日本人か?」
「そうです、シロウです」
「俺はリョウ。いきなり声をかけてすまん。この時ばかりは落ち着かないだろ? 更新面談は初めてか」
「始めてです」
「最初の三ヶ月であれば怯える必要は無い。真面目に講義を受けていれば更新不可は滅多にでない、ほとんど次の三ヶ月からの説明さ」
「リョウさんは何回目ですか?」
「7回目。リョウで良いよ、あっシロウはあれか、ひょっとして付き人って呼ばれてたりする?」
「まあ、そう呼ばれてるのを最近知りました」
「綺麗な日本人が入ってきてるから、紹介しろとうるさくてな、日本人ならみんな知り合いだと思ってやがる。あとその日本人はいつも付き人と一緒にいるってな。ここは世界中から来るから、本当に付き人がいるヤツもいるんだ。だからシロウを卑下している訳じゃなくて、もう1人を綺麗と言いたいだけなんだろうけど、付き人呼ばわりは気分が良くないよな」
「嫌ではありますけど、積極的に否定して周るつもりはありません」
「それが良いな。ここはアカデミーだ。美醜で何かが決まる訳ではないし、くだらない事に時間を費やす必要は無いしな。同じ日本人のよしみだ、何かあれば俺を訪ねてくれよ」
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最初の面談は特に何もなかった。リョウさんが言った様にほとんどがこれからの説明だ。次からは、攻略者であればダンジョンへのアタックが評価されるし、研究者であれば研究内容が評価対象になる。
「シロウ」
カフェのテラス席から、ヨウコが手を振っている。シロウは店内でコーヒーを買うとヨウコの席に着いた。
「お待たせしました」
「丁寧語? どうしたの、まさかの更新不可?」
「いや、何となく言った方がいいかなって思ってね。更新はされたよ、特に何もなかったかな、ヨウコさんと違って基礎講義しか受けてないから、ちょっと怖かったけど」
「私はダン校で学んだからね。それで、昨日、私が言っていたパーティ募集の会合に参加してみる? ダンジョンアタックが評価になるのであれば、パーティは三人か四人で組むのがいいかなって思うんだけど」
「うーん。パーティ募集の集まりか、正直、抵抗があるんだけど、パーティを組む組まないは置いといて、どういうものなのか知っておくために参加しようか、それとその後で良いから時間を貰えるかな、話したい事があるんだ」
「えっ、それなら会合に行くよりも、シロウの話を早く聞ききたい」
「いや。会合の後にしておこう」
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ヨウコは会合が行われるレストランの近くでシロウを待っていた。ちょっとしつこかったかなと、会合に誘った会話を思い出しながら反省をしてしまう。
ヨウコは本当は二人パーティが良い、気になるのは、ヨウコが弱いせいでダンジョン攻略が進まない事だ。でも、もしパーティに可愛い子が入ってきて、シロウがその子と付き合う事になったらどうしよう、とか変な心配をしてしまう。シロウに対して何か独占欲みたいなものがある。
「ごめん、待たせたね」
シロウが来た。やっぱり二人で話さない? そう口にしようとした時、じゃあ行こうと言われてしまった。
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シロウがレストランの扉を開けると、目が一斉に向けられた、、気がする。みんなこっちを向いてはいるが、目線はシロウを素通りし、少し後ろにいるヨウコに向かっている。元々、パーティ募集の為の集まりだから、気になる人を探して話しかけるのは当たり前、まあ予想通りだ。
シロウが参加した目的は一つ、誰かに触れる事だ。ヨウコにスキルチェンジの事を話すと決めた。ヨウコのスキルが見えたのはハンカチを渡す時に指が触れた事がキッカケだろう。であればヨウコ以外でも見えるのかを確認したいのだ。
実はこの三ヶ月間、誰かに触ろうと考えていたのだが、そう考えると中々に難しい。満員電車なんてものはなく、広大なアカデミーのスペースでは、人との距離を余裕を持って取るのが普通で、近寄る事もあまり無い。レストランに多くの人が集まるのであれば、その機会があるんじゃないかな?と思ったのだ。
こちらに 人が向かってくるが、案の定シロウを素通りしてヨウコに群がった。そのうちの一人が手慣れた手つきでヨウコにドリンクを渡している。あれだ!
「ヨウコ、後でね」
そう言うと、シロウはドリンクを取りに向かった。
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