カシアの力
マシュたけとは
「たまにしか見つからないけど、見つけるとパパとママがよろこぶいいにおいのするおいしいきのこ」 by カシペディア
「香りの強い高級食材。焼くことで香りが増すことから焼き料理が好まれる。品質にもよるが、1本で一般的な4人家族が半月暮らせる金額になることもあるという」 by アズペディア
「腐植質の少ない比較的乾燥した土壌を好む。秋にアカマツの単相林のほか針葉樹が優占種となっている混合林の地上…(中略)…成長速度は遅い。生育地となる松林が世界的に松枯れなどの病気に悩まされていることなどもあって、減少傾向にある」 by セラペディア
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その日の夕飯は、マシュたけのホイル焼きにホクホクシチューをママが作ってくれた。
「んー♪ おいしー♪♪」
「ふふ、カシアがマシュたけを採ってきてくれたおかげね」
ママが笑いながら頭をなでてくれる。
「本当にすごいな、カシア。何度目だい、マシュたけを採ってきてくれたのは。確か去年も一度採ってきてくれていたよね?」
「うん、道をつくってくれるときに見つかるんだよ」
「道を…作る、って誰がかだい?森の動物かなにかかな?」
「ううん、違うよ。森が作るのよ、こう、さぁっと」
「…森が…」
パパが驚いて繰り返すのと同時に、ママが唇に指を当てると首を振った。
「カシア、それは森があなたのことを好きだから見せてくれる力、みんなにあるわけじゃないのよ。だから、ね。みんながびっくりしすぎないためにも内緒にしてね?」
ママのその言葉にパパが目配せしたのが見えたけど、すぐに2人ともこっちを向いて「うちの娘はすごいなぁ」などと言いながら私の頭をわしわしなでた。
♢♦︎♢♦︎♢
コツコツン。夕飯も終わる時間頃、自室の窓を叩く音にセランは読んでいた森の植物図鑑から顔をあげた。
風だろうか、部屋の中にふわりとマシュたけを焼いたような香りもした気がした。今夜は、本宅ではカシアと半分こしたマシュたけが家族に振舞われたはずだ。アズロは初めて食べるはずだが気に入ったろうか。セランは家族とはいえ離れで生活しているので食事も別になる。そのためにせっかくのアズロのマシュたけデビューの顔を見れなくて残念だ、と苦笑を浮かべる。
「なにを笑ってるんだ」
「!」
慌てて窓を開けると、近くの木に登って窓の近くまで来ていたらしいアズロの姿が見えた。
「あ、アズロ?どうしたのいったい…」
セランが疑問を言い終わらないうちに、ふわりといい香りが漂う。
「お前がもらったものだ。俺も、初めて食べる。だから…せっかくなら弟と一緒に食いたいと思ったんだ」
ぐいっと左手を突き出してきた。その手にはホイルが握られていて、いい香りはそこから漂ってきている。
「…もしかして、夕飯のマシュたけ、持ってきてくれたの?こっちに来たことが父様に知られるだけでも叱られるのに」
「知るものか。だいたい、俺たちは兄弟なんだ。それがこんな…いや、すまない。俺の力が足りないばかりにこんな状態を…」
「ありがとう、アズロ。俺はアズロと兄弟で、嬉しいと思ってるよ。確かに今は自由に会えないけど、それでも俺にとってアズロは大事な兄さんだよ」
笑いかけると照れたように顔を背けて、ホイルを差し出してきたので、ありがたくご相伴にあずかることにする。
2人で食べたマシュたけは、話に聞くよりずっとずっと、美味しく感じた。
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カシアサイドよりセランサイドが長くなる…アズロさんが思いの外饒舌になりました。