表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
花の歌声と精霊の祈り  作者: 衣緒
幼年編
8/74

カシアの力

 マシュたけとは


 「たまにしか見つからないけど、見つけるとパパとママがよろこぶいいにおいのするおいしいきのこ」 by カシペディア


 「香りの強い高級食材。焼くことで香りが増すことから焼き料理が好まれる。品質にもよるが、1本で一般的な4人家族が半月暮らせる金額になることもあるという」 by アズペディア


 「腐植質の少ない比較的乾燥した土壌を好む。秋にアカマツの単相林のほか針葉樹が優占種となっている混合林の地上…(中略)…成長速度は遅い。生育地となる松林が世界的に松枯れなどの病気に悩まされていることなどもあって、減少傾向にある」 by セラペディア



♢♦︎♢♦︎♢



 その日の夕飯は、マシュたけのホイル焼きにホクホクシチューをママが作ってくれた。


 「んー♪ おいしー♪♪」

 「ふふ、カシアがマシュたけを採ってきてくれたおかげね」


 ママが笑いながら頭をなでてくれる。


 「本当にすごいな、カシア。何度目だい、マシュたけを採ってきてくれたのは。確か去年も一度採ってきてくれていたよね?」

 「うん、()()()()()()()()()ときに見つかるんだよ」

 「道を…作る、って誰がかだい?森の動物かなにかかな?」

 「ううん、違うよ。森が作るのよ、こう、さぁっと」

 「…森が…」


パパが驚いて繰り返すのと同時に、ママが唇に指を当てると首を振った。


 「カシア、それは森があなたのことを好きだから見せてくれる力、みんなにあるわけじゃないのよ。だから、ね。みんながびっくりしすぎないためにも内緒にしてね?」


ママのその言葉にパパが目配せしたのが見えたけど、すぐに2人ともこっちを向いて「うちの娘はすごいなぁ」などと言いながら私の頭をわしわしなでた。



♢♦︎♢♦︎♢


 コツコツン。夕飯も終わる時間頃、自室の窓を叩く音にセランは読んでいた森の植物図鑑から顔をあげた。

 風だろうか、部屋の中にふわりとマシュたけを焼いたような香りもした気がした。今夜は、本宅ではカシアと半分こしたマシュたけが家族に振舞われたはずだ。アズロは初めて食べるはずだが気に入ったろうか。セランは家族とはいえ離れで生活しているので食事も別になる。そのためにせっかくのアズロのマシュたけデビューの顔を見れなくて残念だ、と苦笑を浮かべる。


 「なにを笑ってるんだ」

 「!」


慌てて窓を開けると、近くの木に登って窓の近くまで来ていたらしいアズロの姿が見えた。


 「あ、アズロ?どうしたのいったい…」


セランが疑問を言い終わらないうちに、ふわりといい香りが漂う。


 「お前がもらったものだ。俺も、初めて食べる。だから…せっかくなら弟と一緒に食いたいと思ったんだ」


 ぐいっと左手を突き出してきた。その手にはホイルが握られていて、いい香りはそこから漂ってきている。


 「…もしかして、夕飯のマシュたけ、持ってきてくれたの?こっちに来たことが父様に知られるだけでも叱られるのに」

 「知るものか。だいたい、俺たちは兄弟なんだ。それがこんな…いや、すまない。俺の力が足りないばかりにこんな状態を…」

 「ありがとう、アズロ。俺はアズロと兄弟で、嬉しいと思ってるよ。確かに今は自由に会えないけど、それでも俺にとってアズロは大事な兄さんだよ」


 笑いかけると照れたように顔を背けて、ホイルを差し出してきたので、ありがたくご相伴にあずかることにする。

 2人で食べたマシュたけは、話に聞くよりずっとずっと、美味しく感じた。

いつも読んでいただきありがとうございます!

下の⭐︎で応援してもらえるととっても励みになって嬉しいです♪


セラペディアはほぼ松茸のウィキです。ありがとうございます、ウィキペディアさま!


カシアサイドよりセランサイドが長くなる…アズロさんが思いの外饒舌になりました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ