終わらない世界
夜、夢でこのシーンを(細部は定まってなかったけど)見て、この物語を書き始めました。
ここで花の歌声と精霊の祈りは完結です。ここまで読んでいただきありがとうございました。お楽しみいただけたなら嬉しいです^ ^
それでは、セランが世界を救うためにカシアにどんな協力を求めたのか…最終話をお楽しみください。
「私の…?」
精霊王ならなんだってできそうなのに、そんな彼に私が力になれることなんてあるのだろうか?そう思いながら聞き返すと、セランがはっきりと頷いた。
「うん、カシアと俺、2人にしかできないことがあるんだ」
「…2人にしか…」
ま、まさか世界平和のシンボルとしてセランとの子供を産んで欲しいとか?!もちろんセランは大好きだしいつかはそうなったらいいと思ってるけどそんなパパの目の前で言われちゃうと困っちゃう/// などと考えて赤くなっている私に気づいてパパが複雑な表情を浮かべた気がする。
そんなこちらの空気感には一切気づかず、国王がセランに話しかける。もう剣はしまって膝をついた姿勢でいるので少なくともすぐに私をどうこうするつもりはなさそうで一安心だ。
「セ…精霊王よ、なにをなさるおつもりかわかりませんが…その者は人族の血も確かに引いているようですが、魔族なのです。おっしゃる通りその者自身は協力するつもりかもしれませんが、他の魔族がそうとは限りません。実際、この度複数の魔族が人間界に侵攻してきて王都は壊滅こそしなかったものの大きな被害を受けております」
国王はそこにいる魔王さんとノールさんに非難するような目を向けながら主張する。確かに今回王都は結構壊されてしまっているし、魔族への恐怖はむしろ高まっていると私も正直思う。
「まず、そんなに畏まる必要はありませんよ、人族の王。貴方はこの国を統べる者なのですから、俺相手に膝を折る必要もありません」
「…」
言われた通り立ち上がりセランと向き合う。やっぱり精霊王信仰の厚い方だからか、すんなり聞いている。
「貴方は、カシアの中にある魔族の血を恐れているのですね。でも、種族の違いが気にならないくらい、人間のエルムさんと魔族のリラさんがお互い大切に思いあって生まれたのがカシアだと捉えることもできると思いますよ。確かにカシアは禁忌の子かもしれないけれど、それと同時に、人と魔族が想い合える希望の子でもあるはずだと」
「…希望の…」
そんな発想がなかったのだろう、セランの言葉を繰り返しながら考える国王。
「もう一度問います。貴方が望む未来は、誰かの犠牲の上に築きたいものですか?」
2つの空色に真っ直ぐ見据えられ国王がしばし沈黙する。
「…望む、未来は…。できるならば誰の犠牲もなく、安寧を祈りたい…」
「うむ。我らもなにも人族たちを害することが目的ではない。ただ、生命が生まれる土地を我らも手にしたいのだ」
これまで静かにやり取りを見守っていた魔王さんが口を開く。そっか、魔物は他の生き物を見ると襲ってくる怖いものだけど、魔族はそういうわけじゃないんだ。
人間界と魔界、それぞれの統治者たちの言葉を聞いてセランは頷くと、くるりと私の方を向いた。
「カシア、さっきカシアが言ってくれた通り、人間界を広げるっていうことができれば、みんなが仲良く暮らせるんだ」
「う、うん」
夢物語を肯定されて、どう反応したらいいのか少し困った。もちろんそんなことができればみんなハッピーだと思うけど…。
「カシア、力を貸して」
セランが私に手を差し出す。何をするつもりなのかはわからないけど、私にできることならなんでもしたい。そんな思いを込めてその手を取る。繋いだ手から温かい魔力が流れてくるのを感じる。
「ふしぎな魔力ー」
「ねー」
途端に、精霊たちが周りにたくさん見え始める。ってこんなにいたの?!
私の身体を通ってまたセランに戻った魔力が、今度はセランの身体から溢れて周りの精霊たちに伝わる。
それは不思議な光景だった。魔力が光で織った薄絹のように見える。魔力の帯は精霊の手によって更に周りへと広がっていく。そしてそれが触れたところには植物の芽が出てきたり、綺麗な水が湧き出たりしてきた。
セランがぐっと繋いだ手に力を入れると、突然目の前の風景が二重に見えた。今実際私の目の前に広がる風景と重なるようにして、どこかわからないけど薄暗いゴツゴツした岩場のような場所を上空から見ているような風景が見える。これが魔界なのだろうか。確かにここでは命の気配がなく、いのちが生み出されるのは難しいのかもしれない。そう思いながら見ていると、視界の端の方からさっき広がっていった魔力の薄絹が現れた。
「ここにもこの魔力のにおいがあったー」
「お届けー」
精霊たちが口々に言いながら魔界にも薄絹を広げていく。広がっていったところから順に植物が芽生え水が湧き、命の気配が生まれてくる。どこからともなく羊の群れがやってきて生え始めた草を嬉しそうに食べ、鳥たちが木の上でその実をつつく。
「おーさま、ただいまー」
「魔力のにおいのするところ全部に行ってきたよー」
魔力の帯を持ったまま空中に浮かぶ精霊たちがセランに報告する。もしかして、さっき見えた命の気配は、この精霊たちがもたらしてくれたのだろうか。
「ありがとう、みんな」
セランにお礼を言われて精霊たちが嬉しそうに騒ぐ。本当に、精霊王さんが好きなんだとわかるくらいの喜び方だった。
その間、魔王さんとノールさんの近くに突然女の人の姿の魔族が現れてなにやら言葉を交わしていた。騎士団長から逃げる時に手助けしてくれた、葉っぱのかんざしの人だ。確か、ローラさん。しばらく3人は話し合っていたけど、揃ってセランの方を向いた。
「宣言通りだったな、今ならできるという。恵みに感謝する」
「俺だけの力じゃないよ。カシアの中の人族の魔力と樹の魔族としての魔力のどちらも俺の魔力と合わせたからできたんだ」
「ふぅん?人族の大好きな"愛"ってやつなのかしら?」
ノールさんが口を挟む。その顔は今まで見てきたものよりも嬉しそうだった。
「…そうだね、俺の中の精霊王は、想い合う心が力の源みたいだから」
そこまで言うと優しい目がこちらを向く。見慣れた空色のはずなのに、目が合うとドキドキする。
「セラン、大好きよ。大好き、ずっと大好き」
「俺もだよ、カシア。これからも、ずっと一緒にいよう」
柔らかい陽射しの中で見つめ合う2人の姿がゆっくりと重なる。そんな2人がいる、人間界と魔界という境界がなくなった終わらない世界を精霊たちが見守っていた。
(FIN)
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作者に音楽的素養が全くないためタイトルの花が歌うということを表現しきれず汗 イメージではカシアには植物の声が歌声のように聞こえてそれによって意思疎通ができて…とか考えてたのですが。。
なんにせよ、セランとカシアの力で魔界も生命が住める地になって、争わなくてもいい世界ができました。この世界がこの先どうなるかは、住んでいるみんな次第…。どうか幸せでいられますように




