大切な君
流血シーンが冒頭からあります。
苦手な方はご注意ください
「あっ…ああああっ!」
悲鳴をあげてその場に倒れそうになるも太ももに刺さる氷柱が倒れ込むことさえ許してくれない。傷口が痛くて熱いのに突き刺さる氷柱で冷やされて冷たい。不安定な体勢なためにどうしても起こる僅かな動きのたびに痛みが襲い脳が、神経がチリチリとすり潰されるようだ。
「カシアっ!」
駆け寄るセランが身体を支えてくれて襲いくる痛みが多少緩和される。それでも脚に刺さる氷柱が自分の血で赤く染まっていくのが見えた。
「セ…ラン、ごめ…ん、私…」
ダメ、このままじゃ一緒にいるという理由でセランまで処刑されちゃう。そんなの嫌だ。言葉が紡げない代わりに涙が溢れる。
「聞いていたよりも幼いな」
氷柱を出した姿勢から腕を引くと剣を構え直して、カシャリと剣を鳴らしなから国王が歩いてくるのが涙で歪んだ視界の端で見える。
「しかも、思っていたよりもずっと人族に見える」
「?!」
言われたことが一瞬理解できなかった。私のこと、人族じゃなくて、そう見えるって言った?そしてそれは隣のセランも同じだったようで、一瞬目を瞬かせてから、少しして国王を睨むように見た。
「許せとは言わない。だが、これも全て人間界のため。その平穏のため人柱になってくれ」
カシアに剣が届くくらいの距離になると、迷う間も無く剣を振り上げる。あぁ、私の首を狙ってるのかな…。私を支えるセランは少し脚寄りにいるから、それなら当たらないかな。どうか、神様どうかセランには剣が当たりませんように…。私の大切な人、なにがあっても、守りたい人に。
カシアは祈りながら目を閉じる。迫り来る剣を見続けられるほど怖いものなしではなかった。
♢♦︎♢♦︎♢
「しかも、思っていたよりもずっと人族に見える」
その言葉を聞いた瞬間は理解ができなかった。何を言っているんだ?カシアがまるで、人族ではないと、だから処刑も受け入れろと言っているような。
理解した途端、血が熱くなるのを感じる。強い怒りはこんなにも激しいものなのかと自分でも驚く。自分の心臓の音がうるさい。血の熱さに翻弄されて身体が自分のものなのに自分の自由にならない感じすらする。
目前に振り下ろされる剣を見ながら、思い通りに動かない身体に焦りを覚える。早く物理防御魔法を展開しないとと思うのに血が熱すぎて魔力がうまく流れない。
「や、やめろぉぉ!」
声で剣を吹き飛ばせたらいい。そんな祈りを込めた叫びをあげる。
♢♦︎♢♦︎♢
「弾けろ、ホウセンカ!」
「広がれ!」
聞き慣れた声と共に国王の呻き声がして目を開ける。
目の前で剣を地面に向けた国王と、その手前に広がる薄い水の膜が見えた。
「カシア、大丈夫か?」
コウモリを船のようにして飛んできたパパが空から飛び降りながら聞く。だいじょばないです、痛すぎます、でも生きてます。この場合大丈夫といえるのか悩む。痛みのせいで考えがまとまらない。
「その銀髪…そうか、君たちは、あの森にいた子たちか。ありがとう、あの時も、今も、カシアを守ってくれて」
パパは、私の隣で私を支えるセランと、国王の後ろから水膜の盾を展開してくれたアズロに向かってお礼を述べた。
「…ヴァーダイト、自分が何をしているのかわかっているのか?」
「…」
国王がアズロを振り返りながら低い声で唸る。そうだ、アズロは騎士団、国王陛下のために剣を振るはずなのに、その国王の剣を阻むように魔法を使ってくれたんだ。それを国王が許すはずなかった。
アズロが何か言おうと口を開いた時だった。リンリンと鈴の音があちこちから響き始めたのは。
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