三度、漢
「ふんっ!」
ひらりとノールの姿が破れて地面に落ちる。ヒットアンドアウェイを軸とした滑空攻撃を捌きながらも何度かコウモリを撃ち落とすことに成功していた。
だが、キリがない。減らしたと思ったコウモリ魔族がいつの間にかまた増えているため倒せども倒せども膠着状態が続いている。むしろ疲労が溜まる分こちらの方が不利なのは確実だ。どうにかして本体の魔族を見つけて討たねばならない。先行している陛下たちの安全のためにもここでコウモリ魔族は討ち取っておきたかった。
そう、思っていた時だった。上空に浮かぶノールの一群の1人が何かを感じ取ったように森の奥を見た。
「…悪いけど、あんたたちとゆっくり遊んでられなくなったみたい」
そう言うや、コウモリ魔族の一群か上空に集まり始める。
「さようなら、人族の騎士さん。ワタシもなかなか楽しませてもらったよ」
そして一斉に魔法光線を照射する。まるで虫眼鏡で太陽の光を集めたかのように太い光線となったそれが騎士団長に迫る。流石にあれを受け切って無事では済まないだろう。避けるほどの時間はなかった。できうる限り致命傷を避けられるようわずかに体勢を変える。人族の身に許される時間の限り。
光線が当たる。きっと回避が間に合わなかった脚は弾け飛ぶだろう。失血死しない程度には止血せねば。神官長がいないこの状況でどこまで治癒ができるかはわからないが、こんなところでまだ死ぬわけにはいかない。そう、覚悟を決めた瞬間だった。
「オレ様登場、バビュン、カッキーン!」
「「うっす、オン様最速っす!!」」
緊張感を根こそぎ吹き飛ばしながらあの狼男が光線と騎士団長の間に飛びこみ、光線をあさっての方向へと殴り飛ばした。
「…」
「…」
突然のことに言葉を失う騎士団とコウモリ魔族の目の前で満足そうにポーズを決める狼男たち。
「……」
「……」
沈黙したまま周りから向けられる視線に気づいたように顔をこちらに向けると、にやりと不敵に笑った。
「また会ったな、人族の戦友よ」
「…すまないが貴殿と友になった覚えはないな」
「な、ぬわぁにい?!このオレ様とあんなに熱い戦いを繰り広げておきながら、戦友ではないだと?!」
「…あ、あぁ、すまん…」
あまりに衝撃を受けた顔をされ思わず謝ってしまった。だが友になった記憶はない。
「…オン、念のため聞いてやるが、お前はなにしに来たのだ?」
怒りを堪えるようにして上空のノールから声がかかる。いつの間にか多数のコウモリ魔族はもとのコウモリの姿に戻り、人型の魔族はノール1人になっていた。
「そりゃ、もちろん、漢は戦友のピンチに駆けつけるものだからな、コウモリ女。がっはっは!」
「「うっす、オン様かっこいいっす!漢っす!!」」
「…ほぅ、ではワタシの邪魔をしに来た、という解釈でいいのかな?」
「む?そういえばそうなるな?」
「…よくわかった、今日という今日はその筋肉が詰まった頭を叩き割って代わりに脳を詰めてやらないといけないことがな」
「お、久しぶりにタイマンか?いいじゃねぇか、コウモリ女!てめぇの魂のアツさを感じてやるぜ!」
微妙にすれ違う会話交わして何故か始まる珍獣戦争を前に騎士団長は心の中で呟いた。
(…放っておいて陛下を探しに行ってもいいだろうか…)
いつも読んでいただきありがとうございます!
下の⭐︎で応援してもらえるととっても励みになって嬉しいです♪




