森の寵愛
その日はせっかくなので、とそのまま秘密基地でアズロにこれまでみつけたコレクションを紹介することにした。色んな木の実や種、葉っぱなどなどカシアとセランがこの森で見つけたものたち。
「…お前ら、よくこんなに色々集めたな…。俺もこの森は何度か来ているが初めて見るものの方が多いくらいだぞ」
驚き半分呆れ半分といった顔でアズロが呟いた。
「なんとなく歩いてたら見つかるよ?」
「こっちに面白いものがあるって感じがするところに行くと色々見つかるんだ」
「「ねー♪」」
仲良くハモる2人を、アズロが珍しく優しい瞳で見つめていたことに気づいて、なんだか心臓が跳ねた気がした。
優しい顔すると、アズロはセランそっくり。やっぱり双子なんだ、と思う。
「あ、せっかくなら、アズロも今日の探検に一緒にいく?」
カシアがそう誘うと、セランも是非、とキラキラした目を兄に向ける。
「…しゃぁねぇな…、俺がお前らのお守りをしてやるよ」
「やったぁ!」
「珍しいものたくさん見つかるといいね、カシア」
「だよね!じゃあ今日はあっちの湖の近くを見に行ってみる?今の時期ならそんなに町の子達も来ないし」
♢♦︎♢♦︎♢
「カシア、この葉っぱ、仮面みたいだよ」
「あはは、ホントだ!でもなんか、セランには似合わないよー?どっちかというと…」
「おいお前、なんで俺につけようとするんだ」
「あはは、アズロ悪そう」
静かな湖畔に、3人の楽しそうな声が響く。カシアの予想通り少し寒いこの時期の湖の辺りは人がいない貸切状態だった。
「あ、いいものみーっけ!」
「わ、フユイチゴだ!」
「いちご?」
「違うよ、フユイチゴだよ」
「ほら、この陰に隠れてる赤いのだよ」
「今年はもう実がなってるんだねぇ」
落ち葉に隠れる形で実をつけた小さなフユイチゴの赤い果実を嬉しそうにカシアがつまむ。
「おいしーい♪」
「そのまま食うのか?!」
「家ではなかなかない体験だと思うけど、美味しいからやってごらんよ、アズロ」
何故かおっかなびっくりになるアズロを笑いながらカシアはどんどん甘い果実を口に入れる。
「…甘くて、うまい」
驚くように開かれた2つの空色が瞬く。そんな反応を見てしまうと、もっと楽しませたくなる。本気を出したくなる。
(嬉しい。もっと、もっと見つけたい、すごいもの-!)
そう、カシアが祈った瞬間、風もないのに草が倒れて、1本の木の根元までの道を描いた。
「なっ?!」
「っ!」
アズロの驚く声と、セランの息を呑む音。それらを遮るように響くカシアの足音。
「見て見て!こんなの見つけたよ!」
草が示す道を駆けた先でくるりと振り返ったカシアは、今見つけたばかりのキノコを2人に向かって振ってみせた。
「「ま、マシュたけ?!」」
丸く見開かれる2組の空色を見て、カシアは満足げに笑った。
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