森の中で
「ん、しょっと」
おむすび、もといカシアはころりん転げた先の木のうろをよじ登りなんとか地上への復帰を果たしていた。
ずいぶん転がったからここはどこなんだろう、と辺りを見回す。見覚えがあるようなないような。でも、なんだか森の中に出て心が安らぐのは感じた。王都に来てからも周りに植物は常にあったが、やはり森にいると落ち着く。これが樹の魔族の血によるものなのか単なる好みの話なのかカシアには判断がつかなかった。
(どうしようかな…。騎士さんたちからは逃げられたみたいだけど、こんな森の中じゃセランかアズロに会うのも難しいよね。どうにかして2人にだけ会えるようなとこに行きたいけど…どこに行ったらいいんだろう…)
困ったように空を仰ぐカシアの目に、遠く上空を旋回する黒い影が見えた。鳥だろうか、それにしては飛び方が不思議な気もするが、遠くてよくわからなかった。
♢♦︎♢♦︎♢
アズロ=ヴァーダイトは走っていた。先に王都に現れた魔物は既に片付き、王都の守護結界こそ破られたままであるものの門番たちが門を閉じ強化し始めたことで外から追加の侵入は起きていないようだった。
本来ならばそのまま王都の守護の任についてもいいはずだった。もともと下されていた第四班の任務はカシアの捕縛。しかし騎士団長と狼の魔族が戦い始めたタイミングで目標を逃してしまったためにやむなく他の班同様王都守護の任が下されていた。だが、見えてしまったのだ。森へとつながる門へ駆ける緑がかった銀髪を。律儀に周りの者を治癒しながら走り抜けたセランが向かった先にカシアがいるのではないか、と予感めいたものがしてアズロも駆け出していた。その目的が騎士団としてカシアを捕縛する任を果たすためなのか、兄として弟を援護するためなのか、幼馴染としてカシアを逃すためなのか自分でも決めかねたままで。
♢♦︎♢♦︎♢
リンリィン…。
鈴の音に導かれるまま森の中を走る。こうして走っていると昔を思い出す。まだ幼かった自分たちは何も知らずただ森を駆けていた。当時は何故か、としか思わなかったカシアの軽やかな足取り。あれは樹の魔族の能力で森が走りやすいようにしてくれていたのだろう。きっとそうして、昔からカシアの能力は随所に見えていた。でも、だからなんだというのだろう。カシアはそれでなにか人類に被害をもたらしただろうか?そんなことない。それなのに、持って生まれた血だけで判断を下す今の大人の考えに賛同できない。そんなことを思いながらセランは森を駆ける。きっともうすぐ会える、そんな予感を感じながら。
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