嘘つきの魔法
パパパパンっ!破裂音の後にあちこちから響く悲鳴。王都の守護結界が破られたとはいえ王都で最も警備の厚い王城の、それも玉座の間に、である。
その場にいる中でトップクラスの魔力適性を持つルクレは、まだ素早くは動けないながらも冷静に周囲を分析していた。自身にかけ続けている治癒魔法の効果でいくらかは足の感覚も戻ってきた。謁見がつつがなく終わればその場にいる神官長に治癒してもらって完全に動けるようになると読んでいたが、どうやら魔王はそれを待ってはくれないようだ。
不思議な魔力だ。基本となる地水火風どれとも少し違うようで、だが魔族の魔力ほど得体の知れない感じはしない、言うなれば人族と魔族の中間のような不思議な魔力を感じた。再度その魔力が膨れ始めるのを察し防御魔法を展開する。魔法攻撃を防ぐためのシールドを。
パパパパンっ!
「?!」
展開したはずの対魔法防御魔法を、不思議な魔力の魔法がすり抜けた。
周りからまた悲鳴があがる。そもそも防御魔法を展開していなかった者も多いが、自分のように展開したのにすり抜けられた者の驚きは大層なものだろう。現に神官長も驚いて固まっているように見える。分析をしようにもまた魔力の高まりを感じて、今度は対物理防御魔法を展開する。
「…っ!」
また、すり抜けられる。後から思えば先ほどの対魔法防御魔法をすり抜けた攻撃と、今の対物理防御魔法をすり抜けた攻撃とでは魔力が違っていたかも知れない。しかし、魔力の高まりを感じてから実際に攻撃が来るまでのわずかな時間にその違いを読み解きそれに合わせた防御魔法を展開することは至難の業だった。
まるでこれは、私たち人族を翻弄するために作られた嘘つきの魔法のようだ。
♢♦︎♢♦︎♢
「ふむ。上出来だな、エルム殿」
「…」
コウモリの足場に立つエルムに、隣に浮かぶギベオンが声をかけた。それに返事をする代わりに、足下で繰り広げられる混乱に歯噛みする。なにも望んで同族を攻撃したいわけではない。せめてもの抵抗として攻撃位置をできる限り低く、致命傷を与えないようにしているがそれでも多数の怪我人が出て神官長がひっきりなしに治癒魔法を使っている。
カシアは一体どこに行ってしまったのだろう。最後に別れた研究所前の広場にはいなかった。この王城にもいないようだ。探しに行きたいが多数のコウモリで先に探しに行ったノールを出し抜いてカシアと合流することは不可能だろうとわかるので今は黙って従うしかない。なんとかして、カシアの無事を確保できれば…。どうしたらいいか隙を探しながらも、エルムはギベオンと共にランダムに攻撃を飛ばして足下の人々の防御魔法を翻弄し続けた。
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