裏切り
「やっと落ち着いて来たな」
「ああ、一時はどうなるかと思ったが収まったようでよかったよ」
王都内の魔物の駆除をあらかた終わらせた騎士たちが話している。そういう会話をする余裕が出るくらいには魔物の数は減り、今はどこかに隠れ潜むものがいないかを探している段階になっていた。大量に入り込んだ牛の魔物はもう全滅したようだが、初めに侵入したはずの狼が、狩られた中に思いのほか少なかったのでどこかに潜んでいないか探しているのだ。
アオーン!
騎士たちの顔に緊張が走る。やはり、いたのか。遠吠えは団長と戦っている狼の魔族の長のもののようだが、遠吠えしたということはそれを聞いて応じる部下がまだいるということ。遠吠えに応じるなら団長の元に集まっておいた方がいいがしれない。そう判断した騎士たちが王都のあちこちから団長とオンの戦闘が行われていた研究所近くの広場に集まっていく。
その目に飛び込んできたのは、木にもたれるように座る騎士団長、その前でポーズを取るオン、その周りに集まる狼、そして上空から現れた3人の人影だった。
「だ、団長!」
駆け寄ろうにも魔族が周りに多すぎて迂闊に近づけない。遠目に見る限り深すぎる傷はないようだが、俯くかたちで座り込むその顔は見えなかった。
「おぅ、この人族の仲間たちだな」
何を言われるのか、はたまたいきなり襲い掛かられるのかと息を呑む騎士たちの注目をあびながらオンがその口を開く。
「見たか、この獣の魔族のオン様こそが、最強だ!オレ様こそが、てっぺんだ!がははは」
「「オン様強いっす」」
「だが、この人族も強かった、オレ様たちの戦いにふさわしい、熱い戦いだった…!」
ポーズを決め決め、拳を握り突き上げるオンに冷たい声がかかる。
「熱かったのは貴殿の叫び声だけだ」
木にもたれていた騎士団長が顔を上げて、呆れたような顔で告げる。足を痛めているのか相変わらずもたれたままではあるが、顔色は悪くなく命に関わる怪我はないようだと騎士たちはひとまず安堵する。
「何を言う、オレ様の素早いかぎ爪を剣で捌き、逆にオレ様も剣をひらりとかわす。てっぺんの取り合いとして恥じない重たい一撃!そんな攻防を-」
「オン、少し黙れるか?」
絶好調に喋り続けるオンに、上空から声がかかる。
「げ、魔王…」
「げ、とはなにさ、脳筋オオカミ」
「うるせえな、コウモリ女。…うん?そいつはなんだ?」
オンがそいつと指差した先には、白衣を翻しながらたくさんのコウモリを足場として空に浮かぶ人族の男がいた。
「我の切り札だ」
「…」
金色の目の男が薄く笑って答える間も、その白衣の男に表情が浮かぶことはなかった。
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