騎士の家系
「…時々、セランが怖い日があるなぁと思ってたけど…」
正直な感想がぼそりと口から溢れると、
「あぁ、お前いつになったら俺がセランじゃないって気づくかと思ってたのに気づかないんだもんな」
呆れたような顔で睨まれた。そんなこと言われても困る、まさか双子なんて思わなかったから、セランそのままの見た目の人がいたらそれはセランだと思う。だいたい、セランは珍しい色合をしているのだ。空色の瞳も珍しいし、緑がかった銀髪も他では見たことがない。だから、それで双子の存在を知らなかったらわかるわけがないと思う。
「あれ?じゃぁ、どうしてアズロはセランと遊ばないの?」
そうだ、セランは普段ひとりぼっちと言っていた。兄弟、まして双子がいるならいつだって遊べそうなのに。
「……」
なんということはない、素朴な疑問を聞いただけのつもりだったが、なぜかアズロは唇を噛んで俯いてしまった。
「俺たちの、ヴァーダイト家は代々騎士の家系でね。特にアズロは魔法適性が高いから、後継として色々学ぶことが多いんだ」
代わりにセランが話し始めた。
「カシアは、今の騎士団長を知っているかな?」
「あ、えと、確かすっごく強い魔法剣士だって聞いたことが…」
「ふふ、俺たちの父さんなんだ」
「えぇ?!騎士の家系っていうか…騎士団長?!」
「うん、だから小さい頃からうちでは剣術を学ぶんだよ」
「おもちゃ代わりに木剣をもらうしな」
2組の空色が同時に細められる。笑った顔は、2人ともよく似ている、とぼんやり思う。
「元々兄であるアズロが後継に決まってはいたんだ。俺はアズロほどの魔法適性はないし、それに、俺は気味の悪い子供だからね」
微苦笑を浮かべて淡々と話すセランが、なんだか悲しかった。周りから否定されていても周りを恨まない傷つけない、こんなに、優しい人なのに。
思わず涙ぐんだ私を見て、アズロが空色の目を細めた。
「個性のない奴なんかいない。セランはそれがちょっと珍しい形なだけだ。それだけなのに…」
「うん」
「…お前、バカだけどいいやつだな」
ん?今、ぼそりとひどいことを言われた気がする。
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