神殿
神殿の周りが騒がしくなったと思ったら、一気にあちらこちらから戦闘音が響き始めた。どうやら何者かが王都を襲撃しているらしい。神官長は王城に召還されたまま帰って来ていないため、詳しい情報は何も入って来ていなかった。だが、結界の亀裂が見られた後に何かが割れる音がしてからこの騒ぎが起きているので、おそらく王都の守護結界はもう破られてしまったのだろう。それほどの力を持つ者が王都を攻めて来ているということだ。
ダンダンダン!と神殿の戸を叩く音が響く。近くに控えていた神官見習いが戸を少し開けると、王都の民たちが口々に助けを求めながら我先にと神殿に飛び込んできた。
見ると怪我人が多い。騎士でない一般の民も戦闘に巻き込まれていたのか。
「助けてください、神官様。うちの子の血が止まらないんです!」
「こっちは手が焼かれて炭になっちまった!助けてくれ!」
「痛いよ、痛いよぉ!」
「お願いします、この子を助けてください!」
神官長不在で明確な指示はなくても、人々を助けたいと願う人が多い神殿である、皆神官たちはそれぞれ近くの怪我人たちに対して治癒魔法を使い始める。セランも先輩神官たちと共に次々と癒しを進めていく。
「ありがとうございます、なんとお礼を言ったらいいのか」
「神官様、本当にありがとうございます」
しばらく治癒を続けているうちに、助けを求める声よりもお礼の声の方が多くなって来た。どうやら怪我人の山は超えたらしい。
「神官様がいてくださって助かったな」
「本当にな。明日から毎日真面目に参拝にくるよ」
「現金なやつだなー。まあオレもだけど」
笑い声と共に軽口も聞こえ始める。身体の傷だけでなく心の傷も癒せたようだとほっとする。
今はもう治癒を必要とする怪我人はたまに騎士団が入ってくるくらいだった。王都への襲撃は続いているものの、騎士団が善戦しているのだろう。治療院としての役割があるから全員は離れられないが、落ち着いて来た今のうちに少し外の様子を見ておこうか。そんなことを思いながら扉に向かう。
「そういえば、あの子は大丈夫だったかな」
「あぁ、あの騎士団長に囚われていた子だろ?まだ子供だったが…」
「いったいあんな子供が何をして騎士団長に捕まるなんてことになったんだろうな」
「…お前、聞こえてなかったのか?」
「何がだ?」
「あの子、見た目は普通の子供みたいだったけど、禁忌の存在みたいだぞ。騎士団がそう話してた」
「マジで?こえぇな、本当にいるんだな」
騎士団長に囚われた禁忌の存在、まだ子供のその子…。みみに飛び込んできた突然の情報に動悸が激しくなるのを感じた。
「…カシア…」
駆け抜けたせいで驚いた民が「神官様?!」と声をあげていたが応じる余裕もないまま、セランは王都の道を走り出していた。
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