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花の歌声と精霊の祈り  作者: 衣緒
幼年編
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アズロ

 最近、妙なことがある。

 セランが時々、ごく稀ではあるが、口が悪くなるのだ。怒っているからとかではない、と思う。


 「おい、昨日はなにをしていたんだ?」


 どうやら今日は、怖い方のセランらしい。

 昨日…は、確か宿題がなかなか終わらなくて、しかもそれがママに見つかってしまって森に来られなかった日だ。どうやらセランは待っていたのに私が来なかったことで待ちぼうけになってしまったのだろう、そうだとしたら悪いことをしてしまった。

 そう、思ったので正直に話せば、


 「なんだ、そんなに難しかったのか?」

 「魔法学の属性のところがなかなか覚えられなくて…」


 そう言って私は地面に木の枝で属性を書き出していく。


 -地、水、火、風


 「?書けてるじゃないか」

 「書くくらいならできるよ!でも、それぞれがうまくイメージできなくて…」


 魔法は、イメージが大事だ。だから生活に密着してる手洗いの"水"や煮炊きの"火"は見たことも多いしイメージしやすい。

 魔法学では、基礎の属性については義務教育で全員学ぶことになっている。生活魔法で扱う以上、ある程度制御できないといけないからだ。更に各属性を組み合わせるとか突き詰めるとか言う話になると、それは魔法学園という学校を受験して学ぶことになるらしい。


 「風は使うってことがうまくイメージできないし、地ってなに?!って…」

 「あぁ…」


 セランはなるほどと一つつぶやくと、私に向かって突然手をかざした。


 「えっ?…ぷ?!」


 驚いていると、ざばっといきなり私の上に水が降ってきてびしょ濡れになる。雨じゃない。


 「な、なんで…」


 雨ではなく、明らかにセランの魔法によるものだった。意味がわからない。でも、今日は口調がきついということは、やっぱり怒っていたのかもしれない。それにしてもびしょ濡れはひどいと思う。そう、抗議しようとしたところ、


 「ふぇ?」


 ぶわり、と温かい風が吹いて、濡れた髪も服も乾いていく。


 「あ…風」

 「あぁ。これが風と火」


 どうやら、風を使う、ということを実践してくれたようだった。


 「で、これが…」


 セランが言うと同時に、彼の手のひらにもこもこと粘土でできたウサギやリスの置物が現れた。


 「わ、か、かわいい!」

 「ん」


 褒めると、ずいっと手の上の置物を近づけられる。


  「あ、ありがとう」


 お礼を言って受け取り、また「かわいい」と触っていると、突然置物たちからしゅるしゅると蔦が生えてきて


 「いたっ?!」


 ぺしりとカシアにでこぴんを喰らわせた。

 なんてひどい、と涙目になってセランを睨むと、意地の悪い笑顔を浮かべている。


 「もぅ!なにする-」

 「カシア?どうかしたの?」


 秘密基地の周りの茂みから、()()()()()()()

 

 「セ、セランが増えた?!」

 「んなわけあるか、アホウ!」


 驚いて叫べば、間髪入れずに怖い方のセランに突っ込まれる。


 「アズロ、ここを知ってたんだね」


 後から来たセランが、怖い方のセランに話しかけた。

 アズロ?誰?その疑問が顔に出ていたのだろう、後から来たセランがカシアに振り向くと、


 「カシア、こっちはアズロ。俺の双子の兄さんなんだ」



いつも読んでいただきありがとうございます。


もっとすんなり自己紹介しようと思って書き始めたのに、なかなかアズロが名乗ってくれなくて長くなりました汗

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