鍵
オーン、と狼の遠吠えが響く。魔界と人間界の境から程近い人里のあたりに、その群れはいた。本当は王都まで一気に駆け抜けるつもりだったのだが、人間界に来てからというもの身体が重くなり、休みなしで走り続けることができなくなったのだ。
「ちっ、これが噂の守護結界ってやつか。見えねえくせに生意気な」
「「うっす、きついっす」」
生意気というのは違うようだと突っ込む役もいない狼の群れの同意に気をよくしたのかオンはどかりと腰を据え直すと、今夜はここで休んで明日また王都に向けて移動を開始する、と宣言した。
そんな狼の群れを上空から見つめる目が2つ。小さな体をふわりと翻すとそこから更に王都の方向へと滑空し始める。体が重くはなれどそもそもが小さく軽いコウモリの体、移動も飛翔ではなく力を使わずに済む滑空にしているので移動に問題はない。問題はないが、王都までは飛ばずに森を挟んで隣の位置にあたる街に降り立つ。かつて、例の植物使いがいた街だ。
魔力を探知してみるが、やはり何の変哲もない人族の魔力しか感じない。特筆して魔力の高い者もいないようだ。
「…」
比較のため、あの植物使いが残した種を亜空間から取り出す。
調べたところ、この種は普通の植物の種のようで、時間経過により発芽する可能性が高いことがわかっていた。それに、単なる物質に込められた魔力はじきに霧散してしまうことから、この特有の魔力を探知するのに使うため、時間経過のない亜空間にしまっているのだ。
「…いない、か」
もともと前回の偵察では王都内で感じた魔力だ。この街にいる可能性は低かった。が、もしこの街にいるのなら直接接触できるので一応調べてみたのだ。
逆に、もし前回の調査のときのように王都内にいるなら直接接触はできない。人間界全体に展開されている守護結界とは別に、王都にも守護結界がある。そちらはより狭い分強固なのか、魔族の魔力では入り込めないようになっていた。
「いったいどうやってワタシたちの魔力を検出できるようにしているのやら…魔族の協力なしには難しいはずだが。そんな技術を持つあたり、ワタシたちは人族を侮りすぎているのかもしれないな…」
再びふわりと舞い上がり王都を視界に捉える。
「…せめて、魔族の魔力と親和性の高い魔力が王都内にあれば楔にして侵入できるのだがな…」
コウモリは王都の上空を旋回する。自分たち魔族の魔力を受け入れられそうな魔力を持つ存在を求めて。
遠くでは狼の遠吠えが響いていた。
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