樹の魔族
ママが、生きている。
7歳のあの日、焼け跡からイヤリングしか見つからなかったママが。嬉しいはずなのに、信じきれずにいる自分に当惑する。それに、もし本当ならどうしてパパは私にも隠したのだろう。パパはいったいいつ、ママが生きてると知ったのだろう。いくつも疑問が浮かぶ。それに、ママが禁忌の存在…?にわかには信じられない。だって、だってママは普通の人だったはず。いつも優しくて、おっとりしてて、おいしいご飯を作ってくれて、『かわいいカシア、大好きよ』って抱きしめてくれる普通の人だった。
そこまで思って、ふと気づく。一個だけ。一個だけ普通の人と違うところ。当時は普通だと思っていた、今になって思うと普通ではなかったこと。ママと私にだけあったこと。
『どうしてパパは、あめふるまえにじゅんびしなかったんだろう』
幼い自分の疑問。ママと私には、みんなと違って天気が読めていた
。
(…そっか…。本当に、違ったんだ。私たち、人じゃなかったんだ…)
言葉にして思った途端、胸が苦しくなる。私は、この世界でひとりぼっちなんだ。
♢♦︎♢♦︎♢
どうやって庭園に来たのかも覚えてないけど、気づくと魔法学園の庭園にいた。ベンチにぼんやりと腰掛けて、風に揺れる花を見ていた。考えないといけないことがたくさんあって、でも考えたくなくて。
ママに、会いに行ったら…ひとりぼっちではなくなるのかな。私も魔界で暮らすのかな。だって、人間界では禁忌なんだもんね。
「…離れたく、ないよぉ…」
思わずこぼれる言葉と涙を、止めることができなかった。
止まらない涙を拭こうと、ポケットのハンカチに手を伸ばそうとしたら、ふわりと顔に柔らかい布が触れて驚く。2つの空色が、優しくこちらを見つめていた。
「…どう…して?」
少し息が弾んでいるが、いつもの優しい眼差し。
「カシアが泣いてる気がしたんだ」
照れたようにふにゃっと微笑むセランは、そのまま隣に腰を下ろした。
「カシア、俺はどんなカシアでも大切だよ。俺から見たカシアは、まっすぐで包容力がある優しくて可愛らしい女の子だよ」
いつも、その時一番欲しい言葉をくれるのはどうしてなんだろう。私は禁忌の血で、こっちにいちゃいけないのに。それなのにここから、人間界から離れたくないと願うわがままなのに。
「…セラン、大好き。大好きで、ずっと一緒にいたいよ。でも…でも、私ここにいちゃ…」
その先は、抱きしめられて言わせてもらえなかった。でも、耳元で聞こえた「ずっと一緒にいよう、カシア」という言葉が、ここにいてもいいよと伝えてくれていた。
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