表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
花の歌声と精霊の祈り  作者: 衣緒
青年編
45/74

樹の魔族

 ママが、生きている。

 

 7歳のあの日、焼け跡からイヤリングしか見つからなかったママが。嬉しいはずなのに、信じきれずにいる自分に当惑する。それに、もし本当ならどうしてパパは私にも隠したのだろう。パパはいったいいつ、ママが生きてると知ったのだろう。いくつも疑問が浮かぶ。それに、ママが禁忌の存在…?にわかには信じられない。だって、だってママは普通の人だったはず。いつも優しくて、おっとりしてて、おいしいご飯を作ってくれて、『かわいいカシア、大好きよ』って抱きしめてくれる普通の人だった。

 そこまで思って、ふと気づく。一個だけ。一個だけ普通の人と違うところ。当時は普通だと思っていた、今になって思うと普通ではなかったこと。ママと私にだけあったこと。


 『どうしてパパは、あめふるまえにじゅんびしなかったんだろう』


 幼い自分の疑問。ママと私には、みんなと違って()()()()()()()()


 (…そっか…。本当に、違ったんだ。私たち、()じゃなかったんだ…)


 言葉にして思った途端、胸が苦しくなる。私は、()()()()()()()()()()()()()()



♢♦︎♢♦︎♢



 どうやって庭園に来たのかも覚えてないけど、気づくと魔法学園の庭園にいた。ベンチにぼんやりと腰掛けて、風に揺れる花を見ていた。考えないといけないことがたくさんあって、でも考えたくなくて。

 ママに、会いに行ったら…ひとりぼっちではなくなるのかな。私も魔界で暮らすのかな。だって、人間界では禁忌なんだもんね。


 「…離れたく、ないよぉ…」


 思わずこぼれる言葉と涙を、止めることができなかった。

 止まらない涙を拭こうと、ポケットのハンカチに手を伸ばそうとしたら、ふわりと顔に柔らかい布が触れて驚く。2つの空色が、優しくこちらを見つめていた。


 「…どう…して?」


 少し息が弾んでいるが、いつもの優しい眼差し。


 「カシアが泣いてる()()()()んだ」


 照れたようにふにゃっと微笑むセランは、そのまま隣に腰を下ろした。


 「カシア、俺はどんなカシアでも大切だよ。俺から見たカシアは、まっすぐで包容力がある優しくて可愛らしい女の子だよ」


 いつも、その時一番欲しい言葉をくれるのはどうしてなんだろう。私は禁忌の血で、こっちにいちゃいけないのに。それなのにここから、人間界から離れたくないと願うわがままなのに。


 「…セラン、大好き。大好きで、ずっと一緒にいたいよ。でも…でも、私ここにいちゃ…」


 その先は、抱きしめられて言わせてもらえなかった。でも、耳元で聞こえた「ずっと一緒にいよう、カシア」という言葉が、ここにいてもいいよと伝えてくれていた。

いつも読んでいただきありがとうございます!

下の⭐︎で応援してもらえるととっても励みになって嬉しいです♪

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ