魔界主部族会議
魔界では力がなにものにも勝る。だがその力とは、知略も含むものである。故に、純粋な力の強さだけならギベオンを凌ぐ狼の獣の魔族のオンたちだが、相手を翻弄する知略に長けた血の魔族のギベオンに屈しその配下に入っていた。
「皆に集まってもらったのは他でもない、人間界に今の拮抗を崩し得る存在が確認されたからだ」
今現在、ここ数十年魔界勢力は人間界を攻めあぐねている。身体能力に優れる魔族は力では人族なぞに遅れをとるわけはないが、数十年前に開発されたらしい守護結界なるものが厄介だった。精霊の力も借りて作られたものだろうそれは複数の種類の魔力で編まれているようで、解析して破壊することができないものであり、しかもどう言うわけか魔族の魔力を妨害するように働くものであった。そのため人間界に侵攻した魔族は本来の力を出しきれず、防御魔法が得意な人間界の種族たちを滅ぼすことができないでいるのだ。ただ、人間界の種族も魔界に侵攻できるほどの力はないためお互いの領地を奪い合うことにはなっていなかった。
「人間界に?だったらあいつらが強くなるってことか?」
「むろん、その可能性もある」
「んだよ、やべぇじゃねえか。そうなる前に消しとくか」
言うが早いか席を立とうとするオンを影が縛り上げる。
「話は最後まで聞いたらどう?脳筋のオオカミさん」
「てめ、この、コウモリ女!離しやがれ!」
「…うん、オンちゃんは脳筋」
「蔦女!てめえもなにどさくさに同意してんだ!」
「…進めていいか?」
玉座から呆れた声が問いかける。影に口まで縛られて動けなくなったオンが強制的に首肯させられ、オン以外の3人が視線で肯定を伝えたのを確認してからギベオンが口を開く。
「相手はおそらくは人族だが、魔法でありながら物理攻撃になる変わった魔法を使うようだ」
この世界の防御は大別すると2種類ある。対魔法用と対物理用だ。防御に用いる素材は土壁、水膜など様々な属性があるが、魔法か物理、どちらを優先して防ぐかは防御魔法展開時に指定する必要がある。例えば同じ土壁でも、魔法を防ぐための土壁と物理を防ぐための土壁は別物になるのだ。もちろん、指定してない側の攻撃もある程度までは防ぐことができる。魔法用の土壁も多少の落下物なら"壁"なので防ぐことはできよう。だが、仮に剣で攻撃をされればあっさりと崩れ去るだろう。そのため戦闘では、相手の攻撃のタイプを読み解き、それに応じた防御魔法を展開する必要がある。
「なんだと…?つまり、嘘つき野郎ってことか」
「戦略的と言え」
なんとか口の拘束を解いて発したオンのセリフをコウモリ女と呼ばれた血の魔族が即座に訂正する。
「…オンちゃんは頭が残念だから」
「いちいちうるっせえんだよ、蔦女!」
玉座からため息が聞こえた後、金色の眼が主部族の長である4名を見据える。
「その者についてはノールが10年ほど前に存在は確認していたが、この度人族の王都周辺にいる可能性が高いとわかった」
「ワタシが人間界で見つけたこの種と同じ魔力が王都のあたりで反応したのだ。10年ほど前は火攻めで弱らせてから捕えようとしたが反応が消失したので死んだかと思っていたが…どうやったのか火攻めから逃れただけでなくワタシの追跡からも逃れていたようだ」
「…その人族、ノールの追跡かわすとは、できる」
「…」
それまで話を聞いているだけだった石の魔族が発した言葉を隣で樹の魔族も感情の薄い笑みを浮かべて聞く。
「難しいことはわかんねえけどよ、とりあえずその嘘つき野郎を生きたまま捕まえてくりゃいいんだな?」
「そうだ。可能ならこちらの戦力にしたい。生きたまま連れて参れ」
「おうよ、任せておけ」
「御意に、我が主」
「受諾」
「…」
獣の魔族オンと血の魔族ノールが我先にと席を立つ。オンはノールを牽制するかのように一声吠えると、来た時と同じように土煙を上げながら走り去った。ノールはその間にコウモリの群れに姿を変えて飛び立つ。その様子を見守ってからのそりと石の魔族のガンテが席を立ち、最後に残された樹の魔族のローラが静かに姿を消した。
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オンが暴走しすぎるので、書いててギベオンがちょっと可哀想になりました笑
17:25誤字修正




