秘密の友達
人と違うことは、いけないことなのだろうか?
カシアは不思議に思いながらも、ふと思いついたことを口にした、いや、してしまっていた。
「だいじょぶよ。カシアのパパも、あめがふるのわからないけど、きみわるいっていわれてないよ?」
「…?」
言われたセランは、なんのことだかわからなかったのか首を傾げた。
「ええとね、あめがふるまえに、あめがふりそうだなってわかるでしょ?パパは、それがわからないみたい。いつも、パパだけびしょぬれでかえってくるんだよ」
そう、補足した途端、2つの空色が驚いたように見開かれた。
「…カシア、それ、周りには内緒にしておくんだよ」
「どうして?パパが、ばかにされちゃうから?」
そう、カシアにとって、雨が降ることが予知できる方が"普通"なのだ。そう察してセランはさらに驚いたような顔をしたが、
「違うよ、カシア。カシアと、お母さんが、特別なんだ。お父さんも、俺も、他のみんなも、雨が降る前に確実にわかることなんて、ないんだ」
今度はカシアが驚く番だった。この6年、普通だと思ってきた。そして普通だと思ってた故に、特に話題にもしなかった。
たまたま、言わなかった。だから、みんなといられた。それなのに、同じように"特別"があるセランは、ひとりぼっちでいたのが、なんだかとても悲しかった。
「…じゃぁ、セランと、わたしのひみつ、だね」
「うん」
「わたしたち、ひみつのおともだちだね」
そう言って笑うと、2つの空色も嬉しそうに瞬いて、ふにゃっと笑った。
♢♦︎♢♦︎♢
それから季節がめぐっても、セランと秘密基地で遊ぶことは続いていた。相変わらず2人は"秘密の友達"らしく、秘密基地でひっそりと、でも楽しく過ごしていた。
しかも遊ぶだけではない、学校に上がったことで授業が始まり、その中でわからない部分が出てきたのでセランに勉強を教えてもらうことも増えてきた。
「…ええと、じゃぁここの計算はこう、かな」
「その通り、流石カシアだね」
セランはもともと物知りだとは思っていたが、教え方も上手で、将来は先生になったらいいと思う。そう伝えると、照れたようにふにゃっと笑った。