夏休み 最終日
困った。時計の針を戻しても時間が戻らない。
カシアは自室の時計を元に戻しながら困っていた。
そう、色々あった夏休みも今日で終わり。ヨリのおうちに何度も遊びに行ったり、ヨリと湖に遊びに行ったり、森でセランとデ、デートしたり、パパの研究所の特別公開日に遊びに行ったり、ヨリとも試作クレープたちを作ったり…と盛りだくさん、楽しかった。だから、うっかりしていたのだ。夏休みには、"あれ"があることを。
「…ヨリに写させてもらえないか、聞いてみようかな…」
宿題の課題を胸にため息をついて窓の外を見る。ヨリならきっと、呆れながらも写させてくれるだろう。そう思ってヨリに連絡しようと携帯に手を伸ばしたちょうどその時、玄関のチャイムが鳴った。
「はーい、どちらさまですかー?」
開けてびっくり。玉手箱もびっくりだろうけどうちのドアだってびっくりだ。
「宿題、もし終わってなかったら一緒にやらない、カシア?」
玄関先で固まる私の前で、朝日を浴びた2つの空色がふにゃっと笑った。
♢♦︎♢♦︎♢
「…で、できた…!」
「うん、お疲れ様、カシア。よく頑張ったね」
「セランのおかげよ、本当にありがとう」
属性魔法の組み合わせ相性や増幅減衰要因などのまとめレポートの宿題をなんとか書き上げたのはお昼もいくらか過ぎた頃だった。朝からずっとお勉強とは、私頑張った。
「…安心したらお腹空いちゃったわ。セラン、良かったらお昼をご馳走させて。レポートのお礼に。ね?」
「ありがとう、それじゃぁお言葉に甘えてご馳走になろうかな。この前の夕飯も、とてもおいしかったからまたカシアのお料理食べられるなんて嬉しいな」
まっすぐな言葉に顔が熱くなる。赤くなってないといいな…。
「す、すぐ作るからちょっと待っててね」
パタパタとキッチンに向かうと引き出しにしまってあったエプロンを取り出す。新調しておいた、過去の自分を心の中で目一杯褒める。よく準備してた、自分!そしてフリルがついた可愛らしいエプロンを身につける。ドキドキがさっきから止まらない。おちつけおちつけ。とりあえず、すぐできるならパスタかな。冷蔵庫を開けながら頭の中でメニューを組み立てていく。うん、だいじょぶ、なんとかなるなる!
♢♦︎♢♦︎♢
先日のエプロン姿も家庭的で素敵だったけど、今日のエプロンはずいぶんと可愛らしい雰囲気でとても素敵だ。テキパキと料理するカシアを邪魔しないようこっそり見つめる。
今朝はなんとなくカシアのことが気になって、でもいきなり遊びに来た、というような関係性でもないから口実に宿題を使ったら、ちょうど困っていたようでとても感謝されてしまった。来てよかった。
そんなことを考えているうちに、カシアが手際良く昼食をテーブルに並べていく。夏野菜とベーコンのパスタに、スープに入ってるのはハスの実かな?いい香りがしてきて、空腹を実感する。
「お待たせしました、さぁ、召し上がれ」
「ありがとう。おいしそうだね、いただきます」
あっという間に作ったとは思えないくらいの美味しい昼食を楽しみながら、おしゃべりも楽しむ。夏休みの思い出として、満点な日だった。
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本編で登場しなかった夏休みエピソードもあったということで…カシアの回想に湖とか特別公開日とか出てきてます。いつか機会があれば書いてみたいとは思いつつ…




