夏休み 1 〜ヨリのお家訪問〜
夏休み三大イベントの一つ目は、ヨリのお家訪問です!
「…相変わらず、よくこんな抜け道を見つけましたわね…」
西門から帰るのが難しそうだったので、南側にある業者通用門から学園外に出たあとヨリが呆れたように言った。西門前に人だかりができていたのは、アズロたち騎士科の遠征組が学園に帰ってきたからのようだとヨリから聞いたが、むしろ私からしたら、よく教室にいながらあの人だかりの原因を把握できたなとヨリの方がすごいと思う。
「寮への物資運搬に車を使う場合、確かに西門からでは歩行者が多すぎて危ないですものね。よく考えれば他に通用門があっても不思議ではないのですが…寮生でもないカシアがそれをまた例の勘で見つけるのは流石と言ったらいいのか、呆れた方がいいのか迷いますわ」
え、呆れるの?ひどくない?褒めてくれるとかじゃないの?と、びっくりしていたら、それも読まれたらしく
「いつも『なんとかなるなるー』って言いながら働くその勘はいったいどんな野生の勘なのかしら、まったくー」
結局ヨリは私のほっぺをふにふにしたいだけなんじゃないだろうか。いひゃいし。
結局そのあと、ヨリの家に遊びに行く日取りを決めて解散するまで私のほっぺは蹂躙されていた、くすん。
♢♦︎♢♦︎♢
「ほぁー…。お、お邪魔します」
どもりながらヨリの家の玄関をくぐり挨拶する。
「お待ちしてましたわ、カシア。…なにをそんなに緊張してらっしゃるの?らしくないですわ」
いやちょっと最後の一言ひどくない?ってその前に緊張くらいする。なんだこの王都にあるのに豪邸って。ヨリ思ったよりお嬢様だった。
「あぁ、お父様が伯爵位をいただいておりますの」
伯爵って、あれだ、上から3番目とかの地位って聞いたことがある。
「すごいのはお父様やご先祖様であって、わたくしはわたくしですわ。いつも通りにしてくださいな」
いつも通りって、まず場所が!いつも通りじゃない豪邸なんです!
「ささ、カシア、わたくしの部屋にお菓子を用意してますの。お茶でも飲みながらおしゃべりしましょ」
ヨリの部屋でおしゃべりし始めたら、いつもの調子が出てきた。メイドさんたちがたまに来てくれたりするとちょっと緊張するけど。
「それでですね、カシア、わたくしあの後セラン先輩についてちょっと調べてみましたの」
「ほぇ?」
もごもごとパイを口元で動かしながら返事をする。
「もう、食べるか話すかどちらかになさいな」
呆れながらお手拭きを取ってくれる。
あの後、とは、会いたいと思い浮かべた人がいるだろうと質問攻めにあって思わずセランの名前を告げた日のことだろう。あの時くらいしかセランの名前出してないし。あの質問攻めでは満足してくれなかったようだ。恐るべし、ヨリ…。
「セラン=ヴァーダイト先輩。あの、騎士科のアズロ先輩の双子の弟さんなのですね。ヴァーダイト家の出身ではあるものの、後継者であるアズロ先輩と違って騎士科ではなく神学科所属。将来の希望進路は神官さんのようですね。見た目はアズロ先輩とそっくりのようですが、言動が穏やかなのと、何故か休み時間など見かけることが少ないそうでアズロ先輩ほど目立ってらっしゃらないみたいでした」
うんうん、合ってる合ってる。流石ヨリ。セランはよく庭園の秘密基地にいるし目立つの苦手だからね。
「わからなかったのは、そんなセラン先輩とあなたがどういう接点を持っていたのかということですわ」
あー、そうきたか。まぁ、そうだよね。ヨリは私が王都に来てから会った友達だし。
「少し長い話になるけど…」
そう前置きして、私は幼少期の森の話や、引っ越してきた話をした。
♢♦︎♢♦︎♢
「…そう、だったのですね。カシアはいつも明るいから、まさかそんな過去があったなんて…。知らなかったとはいえ、話しにくいことを聞いてしまって申し訳ありませんでした」
ううん、と首を振りながら大丈夫の意を伝える。もちろん、ママがいない事実は悲しいが、それを受け入れられるだけの時間は経っていた。
それに、なんとなくだけど、ママは今も近くで見ていてくれてる気がするんだよね。ぎゅっと胸元にあるペンダントを握る。火事の後見つかった、葉を模したママのイヤリングの片方だ。
しんみりしてしまったが、そのあとはまたいつものように他愛無い話をして、夕食の豪華さにびっくりして、なんならパパにお土産として美味しいステーキ包んでもらってうちに帰った。なんかすごい夏休みって感じがして楽しかった。
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ヨリが説明役してくれるのでありがたく動いてもらってます。なんだか、某名作マンガに出てくる情報通なおさげの新聞部部長を思い出しながら書いていました。「企業秘密です」が口癖のあの人ほどの情報収集力はないですが。




