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花の歌声と精霊の祈り  作者: 衣緒
青年編
31/74

夏休み 初日

 「…はい、それではみなさん、充実した夏休みをお過ごしください」


 ホームルームが終わり、生徒たちが動き出す。今日から夏休みだ。

 学園祭についても、数日前にあった出店管理委員会で我らがたべてくれープの位置取りも学園の真ん中くらいと決まり、これを踏まえて夏休み中にグループチャットの投票機能でメニューを決めたらあとは夏休み明けに実際に買い出しなどの動きが待っている。


 「ヨリー!会えないの寂しいよー!」

 「あらあら。お互い王都にいるのですし、それなら遊びにおいでなさいな歓迎しますわ」

 「行くっ!」


 そんなこんなで夏休みにはヨリのお家に遊びに行く計画もある。楽しみすぎる。


 (セランとも遊べたらいいな…、夢では会えたけどやっぱり実際会いたい…)


 ちらりと外に向いた視線の先に、なにやら人だかりが見えた。街中に通じる西門のようだが…何があったのだろう?



♢♦︎♢♦︎♢



 久々に学園に戻ってきたと思ったら、あっという間に人に囲まれた。どうやら今日から夏休みなせいでみんな午後から暇だったようだ。学園の予定を確認してから戻るべきだったかとこっそり舌打ちする。


 「先輩おかえりなさい!」

 「訓練でももう魔物を倒したと聞きました!流石ですね!」

 「今回はどんな魔物だったのですか?」

 「先輩、我が領地で取れた疲労回復効果のあるお茶があるので、よかったら飲みにきませんか?」

 「あ、抜け駆け!うちの農園でも身体にいい野菜が-」

 「私の家業のハチミツは傷薬にもなるし食べてもおいしくて栄養が-」


 俺は聖徳太子じゃないので全部聞けるわけがない。


 「ははっ、相変わらず大人気だな、アズロ」

 「笑い事じゃないですよ、先輩。勘弁してほしい…」


 もともと、現騎士団長の父親と懇意になりたいがために俺にもちょっかいを出してくる者は昔からいた。それが学園の騎士科に入る頃からはやたらと女子生徒にもまとわりつかれるようになってきていた。しかもどうやら騎士団長の家系と血縁になりたいという意図を持って。想像するだけでも鳥肌が立つ。そんなことで自分の人生をかけるのか。


 「あぁ、アズロ先輩、今日も険しいお顔が凛々しいわ…」

 「あの睨め付けるような目で見つめられたいですわ」


 アホかと。こちらの意思に関係なく囲まれて身動きを封じられたら顔が険しくもなると言ってやりたい。が、以前それをやっても、何故か「きゃー、照れ隠しも可愛らしい」とかなんとか騒がれて効果がないどころか逆効果すぎたので文句も言えない。


 「…はぁ…」


 次からは絶対授業の時間に重なる形で帰ってこようとこっそり心に誓って、アズロは時が過ぎるのを待つことにした。

いつも読んでいただきありがとうございます!

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