セラン
どうやらセランは2つ年上の8歳で、彼も近くの町に住んでいるらしく、時折この森にも遊びに来ていたとのこと。広い森なのでこれまで出会わなかったのだろう。
そんな話をしているうちに、カシアに降参を告げる友達の声が聞こえてきた。
「あ、ごめんね、セラン。わたしもういかないと。くふ、きょうも、またかくれんぼはわたしのかちだったわ」
「そうなんだ、カシアはかくれんぼが上手なんだね」
「ふふん、そうよ。でも、ここをみつけられたのは、セランがはじめて。セランもきっと、かくれんぼがじょうずね。あしたから、いっしょにやる?」
そう問うと、セランは一瞬目を見開いてから
「ありがとう、とても素敵なお誘いだね。でも、ごめんね、俺とは遊ばない方がいいよ。ここにきたことも、実は内緒なんだ」
と悲しげに微笑んだ。
「ふーん?よく、わからないわ。でも、セランがないしょっていうなら、ないしょにしてあげる。でも、わたしはもうセランをしってるから、ないしょにはならないでしょう?だから、セランがあそびたいときはわたしとあそべばいいわ」
そう伝えると、2つの空色はまた瞬いたあと、ふにゃっと嬉しそうに笑った。
♢♦︎♢♦︎♢
それから何度か、セランと2人で遊ぶことがあった。
いつも会うのはあの秘密基地。どういうわけか、セランは他の人と会うのを避けているようだった。
だから遊ぶときは他愛無いおしゃべりや森で見つけた木の実や花を見せあったりしていた。セランは物知りで、大抵の木の実や花の名前は知っていて、カシアが見せるとその名前を教えてくれた。
「俺は、気味が悪いって、父さんと母さんが言うんだ」
ある日、なんの話の流れだったか、セランはそう告げた。でも、気味が悪いってなんだろうと首を傾げていると、
「俺、時々声が聞こえるんだ。他の人には聞こえない、何かの声が。ここを見つけた時も、その声が何か楽しいことがありそうって言ってて…。それで来てみたら、本当にそうだった。カシアに会えて、こうして遊べるようになって、俺嬉しいんだ」
2つの空色がカシアを映し出す。
聞けば、セランはその特異な性質のために周りから気味悪がられて避けられていたので、いつも1人で過ごしていたということだった。
「人は、自分と違うものは、やっぱり、気味が悪いと感じるからね」
悲しげに微笑んだ彼は、とても同じ年頃には見えないような、大人びた雰囲気だった。