恋キュン味
「…うーん…」
「どうですか、カシア?」
いちごやさくらんぼ、クリームなどで全体的にピンク色のクレープを口に咥えながらふむふむ言う。お行儀が悪い?確かにそうかもそれない。
自身はりんごとクリームにサクサクしたパイ生地を散らした"白雪姫も恋したアップルパイクレープ"なるものを可愛らしく両手で持ち口に運びながらヨリがカシアを見やる。そっちも美味しそうだから後で一口欲しい。
「美味しい。うん、美味しいんだけど…」
「こちらのアップルパイ味も美味しいですわ。ほら」
物欲しそうな目をしていたのだろうか、ヨリが自分のクレープをこちらに食べやすいようむけてくれる。ではありがたく。
「あ、ホントだ。サクサクとしっとりんごの夢のコラボレーションだね!」
「しっとりんごってなんですの。もう、クリームついてますわ」
苦笑しながらヨリがティッシュでカシアの口元を拭いてくれる。
「それで?恋はわかりましたか?」
「…」
"あの人に会いたくなる恋キュンクレープ"を最後の一口まで食べてしまってから腕を組む。全力で甘酸っぱい感じを出そうとしてることは伝わったが、困った、さっぱりピンとこない。正直授業についていくので精一杯で、クラスメイトの男の子たちと遊んだりはしたことがなかった。
「…美味しかった、よ?」
途端ほっぺをふにふにされる。いひゃい。
「そ、そういうヨリはどうなの??」
ほっぺを守らんと少し距離を取りつつ問う。
「わたくしは許嫁がいますので、そういう感情の経験はありませんわ」
「え、そ、そうなの?」
許嫁とか、物語のお嬢様とかのものかと思ってた。でもよく考えたらヨリのフォールデックス家も昔から王都に居を構えているというからお嬢様なのかもしれない。
「わたくしの話はいいのですわ。さあ、カシア、このクレープを食べてどなたを思い浮かべましたか?」
そうか、自分が恋愛をしてない分人の恋バナが気になるんだな、とふと気づく。なんてこった、ロックオンされてしまっている。
待って待って、誰…も思い浮かばなかったんだけど、そう答えるとまたほっぺの危機だ。ええと、とりあえずクラスのヒートくん?うさぎが好きなかわいい男の子でたまに授業の班が一緒になる。シュウくんは頭いいよね、よく先生となんか話してる、全くわかんないけど。リョウくんはスポーツ万能でよく助っ人に入ってると聞いたことがある。でもみんなちょっと話したことのあるクラスメイト、って感じだ。会いたくなるってことは特にない。
ぶつぶつとあーでもないこーでもないと呟く私をしばらく見つめていたヨリが助け舟のつもりか話題を振る。
「校内で人気なのは、騎士科のアズロ先輩という噂ですわ。なんでも現王国騎士団の騎士団長でいらっしゃるヴァーダイト様のご子息だとか」
「あ…」
脳裏に、ふにゃっと笑う空色が浮かんだ。
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