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花の歌声と精霊の祈り  作者: 衣緒
青年編
22/74

魔界に住まうものたち

 「そうですね…。精霊王は、おそらくは人間界にも魔界にも区別なくそのお恵みをお与えになろうとしたのだと思います。ですが、精霊王の力の源を知っていますか?」


 質問を返された先ほどの生徒が口籠もる。そういえば精霊王の恵みは陽の光、水の流れ、豊かな大地と色々あるが、そのおおもとはなんなのだろう。


 「精霊王は、相手を大切に想う心、慈愛の心から生まれたという説があります。そして魔族は今でこそ生きるために略奪を行うとされていますが、もともとその力を誇示することを好むゆえに人間界の種族より戦闘を好み傷つけ合うことが多かったとその説ではされています。そのために、精霊王の恵みの力が弱まった結果魔界に生命の芽吹きが減っていき、それが更に生きていくための略奪に繋がっていった、と。魔界に行ったことがあるわけではないのであくまでも仮説の一つではありますが、私はこの説を支持しています」


 慈愛の心から生まれたからもちろん魔界にも恵みを与えたかったが、魔族の気質というべきか、本能とでもいうべきか、それが精霊王の力と相性が悪かったというのは、なんだか皮肉な話だ。


 「先生、先ほど魔界に行ったことがないとおっしゃってましたが、魔界に行ったことのある人はいるのでしょうか?」

 「…それについては、公式にはいない、というのが正解でしょうか」


 先生が含みのある言い方をした。まるで、魔界に行ったことのある人はいるがそれを隠してる、いや、隠さないといけないみたいな。


 「まず基本的に魔族は好戦的な性質なので魔界に辿り着いたとして生きて帰れる保証はありません。ですが、魔族にも種類があると言われていて、友好的な種族であれば対話が可能と考えられています」

 「魔族にも種類が…?」

 「研究者の間で知られている種族は4種あり、その中でも獣型の魔物を使役する獣の魔族(ビースト)、相手の血を啜ることで力を増す血の魔族(バンパイア)。この2種族は特に力を誇示したがる好戦的な種族と言われています。そして守りに特化していて攻撃しない限りは比較的被害をもたらさない石の魔族(ゴーレム)、最後に戦闘を嫌い最も友好的とされる植物を司る樹の魔族(ドライアド)。この2種族が相手ならば対話ができるかもしれません」


 確かに石や植物は獣とかに比べて攻撃してくるイメージは湧きにくいかもしれない。


 「ですが、いくら友好的に見えても魔族は人間界をも占領しようとしていると考えられているので、気を許してこちらへの道を作るべからず、と法に定められているため魔族と関わることは禁忌扱いとなっているのです」


 対話ができてもその魔族がスパイじゃない根拠がないから、リスクを取りたくない国としてはそもそも関わらないように、ということか。まぁ、命懸けで友達作りに魔界に行くことは確かにないかもしれない。最初に出会うのが好戦的な種族の可能性だってあるわけだし。

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