かくれんぼで見つけたのは
気づいた時には、もう天気は読めていた。
わかるのだ、なんとなく、風の香りか水の気配か。もうすぐ、恵みの雨が降る、と。
ママも多分読めている。だから、普通だと思っていた。パパがどうしてか読めないだけだ、と。
「ただいま、カシア」
パパに抱き上げられ、そのまま高い高いされると考えごとなんてどこかに吹き飛んで、カシアは「きゃっきゃっ」と笑い声を上げた。
王都から少し離れた町で、特にすごく便利でも不便でもない。
カシア=パルヴィフォリスはここで生まれた。
♢♦︎♢♦︎♢
「もーいーかーい?」
「もーいーよー」
町の周りに広がる森に子供たちの声が響く。
夜は野生の獣も出るので立ち入らないよう言われる森だが、昼間なら子供たちにとってのいい遊び場だ。「みーっけ!」「ちぇー」などと賑やかな声が聞こえてくる。
「またカシアが最後かー。」
「おーい、カシアー!」
「カシア、ちびだから隠れるのうまいんだよなー」
しばらくすると、どうやらカシア以外の子供は見つかってしまったようで、みんなでカシアを探し始めた。
そんなみんなの声を隠れ場で聞きながら、カシアはくふふ、と笑い声を抑える。確かにカシアは6歳にしては小柄だ。一緒に遊んでいる中でも小さい方の4歳の子と同じくらいに見える。
カシアが今隠れているのは低木のトンネルを抜けた先にぽっかり広がる空間。外から見たら低木にしか見えないが、ここが通れる、とカシアにはなんとなく見えていたので通ってみたところ見つけた、とっておきの隠れ場所だ。今まで何度もかくれんぼをしているが、まだ誰にも見つかったことがない。
今日はどれくらいで降参して出てくるよう頼まれるかな、と考えて思わずにまにま顔がにやけてしまったとき、
「うわわっ」
「…っ?!?!」
突然、後ろからなにかが倒れる音と共に声がしたので、飛び上がりそうなほど驚いた。
振り返ると、草に足を取られたのか地面に倒れ込んだ綺麗な空色の2つの瞳がきょとんとこちらを見つめていた。
「あなた、だれ?だいじょうぶ?」
自慢の秘密基地への突然の乱入者に対して、カシアは問いかけた。すると2つの空色は、ゆっくりと瞬くと
「俺は、セラン。びっくりさせて、ごめんね。なにか楽しいことがありそうって言うからここに来たら、君がいたんだ」
ふにゃっと微笑んだ。