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花の歌声と精霊の祈り  作者: 衣緒
青年編
18/74

また秘密基地で

 セランは察しがいいから。さっきの私の言葉で、ママがあの火事で亡くなったとわかったみたいに、苦しそうな表情をしてくれた。ママに会ったことはなかったはずなのに、それでもその人を想ってくれるのは、あの頃の優しいセランのままだとなんだか胸の辺りが温かくなる。


 「ありがとう、セラン」

 「ううん、お礼を言われるようなことは、なにも…」


 さっきの私の言葉。気が合って、なんでも話して、なんでも聞いてくれた頃と同じ優しい幼馴染。


 「…くしゅんっ」


 まだまだ話し足りないのに、だんだんと空気が冷えてきたためにくしゃみが出てしまった。


 「冷えてきたね。今日は帰ろうか、カシア」


 あの頃のままに、セランが手を差し出してくる。優しい空色は変わらないけれど、あの頃よりずっと高くなった身長に、筋肉もついたようで広くなった肩幅、低くなった声。そのどれもがセランはもう小さな男の子ではないと示している。


 「…」


 意識した途端、ちょっと緊張してきた。あの頃から大切な幼馴染。秘密の友達。そして-…

 首を振って思考を払う。微笑みを浮かべて差し出された手を取ると、あの頃のように歩き出す。どうか、心臓の音がセランに聞こえてませんように…



♢♦︎♢♦︎♢



 夕飯の時に、セランに会ったことを話そうと思っていたけど、パパは研究が忙しくて帰りが遅くなると連絡があったので伝え損ねてしまった。最近パパは遅くなることが増えた。忙しいとは聞いているが、研究の詳細は聞かされていない。だが、パパの植物を使った攻撃魔法が一般の魔法体系から外れるものなのではないかということは魔法学園で授業を受けるうちになんとなく思い始めていた。

 基本属性の地水火風。これらをそれぞれ使うのが昔習った基礎魔法。そしてそれらの組み合わせから成る複合属性は、今魔法学園で習っている応用魔法にあたる。地×風で石礫を飛ばしたり火×風で爆裂魔法を作ったり。地×水で土壁と水の層を何層も重なるように作って防護壁を作る騎士もいるらしい。授業では誰とは教わらなかったが、アズロならできそうな気がする。なんてったって、あの小さい頃から火×風で温風を使いこなしていたくらいの才能があったから。

 属性の組み合わせには正解はなく、組み合わせを編み出すセンス、思った通りに属性を練り上げる魔法制御力、そして展開する魔力量、そういった能力が魔法使いとしての力量を決めると言う。これらの能力を満遍なく鍛えるのが騎士、どれか一つを突き詰めて鍛えるのが研究者と言えるのだろうか。

 属性魔法の他に精霊王の加護による回復魔法もあるが、これは神殿で働く神官は威力が高くなるものの、一般人も小さな怪我なら回復できるくらいの祈りの力を持つ。

 こう魔法を分類していくと、パパの使う魔法は植物に関わるから地属性のようでもあるが、どこにも属さないようにも思える。だが、そんなことあり得るのだろうか…?


 (ふぅ…まだまだ勉強が足りないなぁ。パパの研究のお手伝いするにも、もっともっといろんなことを知らなくちゃ)


 そういえば、昔アズロが地魔法を見せてくれた時にツタを操っていた気がする。じゃぁやっぱり地属性を突き詰めた形がパパの魔法なのだろうか。


 「アズロに会えたら、教えてくれるかなぁ…」


 窓辺で復習するカシアの部屋の明かりは、その後もしばらく消えることはなかった。

いつも読んでいただきありがとうございます!

下の⭐︎で応援してもらえるととっても励みになって嬉しいです♪


後半設定説明回になってしまいました汗 うまく伝わるように書けてるといいのですが…

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