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花の歌声と精霊の祈り  作者: 衣緒
青年編
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再会

 「カシア…あの、森で遊んでたカシアだよね?あの後、おうちが火事でなくなったと聞いて…あぁ、よかった、無事だったんだね」

「うん…!そうよ、セラン、あの森で遊んだカシアよ。実は、火事の後ちょっと色々あって…。王都に引っ越す時にも誰にも何も言えずに来てしまったから、セランとアズロにくらいはご挨拶したかったのにとずっと気になっていたの。だから、会えて嬉しい、セラン!アズロは一緒じゃないのね、彼も元気かしら?」

 「…!」


アズロの名が出て、途端脳裏に蘇った言葉。

『あの娘は何者だ?』


 「…うん、元気だよ。ただ、騎士科に進学したんで、野外訓練が増えてあまりこの学園には来てないんだ」

「ふぅん。そうか、2人はもう3年生なんだものね。セランは何科に進んだの?」


 騎士科のアズロがほぼ学園内にいないことは幸いだったかもしれない。まだ2人を合わせていいものか判断がつかない。

 あの火事を知った後、実はアズロは火事が事故ではないのではと色々調べていた。あまりにカシアの家だけが焼けていたのが気になったと言って。そのときにこぼした『頼む、無事でいろよ…!』の言葉も嘘ではないだろう。だが、次期騎士団長というアズロのその立場上、得体の知れない相手、すなわち王国に害となる可能性のある相手を受け入れることはできないだろう。

 カシアは確かに謎めいたところがある。でも、正直王国に仇なす存在には思えないが…。そう思い目の前の少女を見つめる。あの頃よりずっと大人びて美しくなった幼馴染の女の子。でもそのくりくりとした緑の瞳はあの頃と変わらず、活発そうに輝いていた。


 「…セラン?」

 「あ、あぁ、ごめん。俺は神学科だよ。神官を目指す学科だ」

 「へぇ!セランは神殿に入るのね。確かにセランなら、たくさんの人の悩みを聞いてくれそう」


 にこにこと微笑みながらカシアが言う。

 そんなことないよ。俺はたった1人の双子の兄の葛藤さえ解消してあげられてないんだ…。そんな思いが微苦笑を作る。


 「…そうだといいな、ありがとう、カシア」

 「?お礼を言われることはなにもしてないわ?」


 それでも、その真っ直ぐ信じてくれる瞳がありがたかった。


 「カシアは、何科に進みたいとかはもうあるの?」

 「うん、私は研究科に進学して、研究でパパの力になりたいの。引っ越してからずっとずっと、1人で一生懸命私を育ててくれたから、少しでも楽をさせてあげたくて」

 「…!」


 引っ越してからエルムさんが1人で、ということは、お母さんはあの火事で…。

 そう俺が察したことを察したようで、伏せ気味のままカシアが頷いた。

いつも読んでいただきありがとうございます!

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