庭園で見つけたのは
入学式、オリエンテーリングの合宿、先輩クラスである上クラの人たちに教わりながらなんとか授業の選択科目を選んだと思ったら、開始早々ハイペースに進み始める授業。
「ふぅ…」
やはり授業はこれまでのものよりも格段に難しい。正直ついていくのにも必死だ。でも--
「なんとかなるなる!がんばれがんばれ、おー!」
とはいえずっと座って復習しているのにも疲れてきたので、気分転換がてら学園内にある庭園を散歩することにした。
「んー♪」
自然に囲まれた空間を歩くだけで元気が出てくる気がするから不思議だ。軽く伸びをしながら深呼吸する。
少し歩いたところ、茂みの中に通れそうな隙間があった。
「…」
わかってる、もう私は小さな女の子じゃない。まさかまた、秘密基地を作りたいわけじゃない。
「…」
ダメよ、カシア。気分転換できたなら戻ってまた復習しておかないと。
風がさわさわとその隙間にかかる葉を揺らす。まるで、おいでと手招きするみたいに。
「…」
足はもう完全に止まってしまっていた。茂みの隙間から目が離せない。
ちょ、ちょっとだけ…ちょっとだけだから…
結局、隙間に引き寄せられるように動き出す足。一度動き出してしまえば、もうワクワクした気持ちを止められなかった。
ガサガサ音を立てて見つけた隙間を駆け抜ける。目の前に、少し開けた場所があるのが見えた。
♢♦︎♢♦︎♢
誰にも見つからない静かな場所。ここは彼のお気に入りだった。魔法学園は規模の大きな学園で、正直そこにいる人の数は少なくない。そして庭園で過ごす者もそれなりにいる。それでもここは入り口がわかりにくくなっているためか、彼は自分と兄以外がここにいるのを見たことがなかった。
まるで子供の秘密基地みたいだと思う。ここにいると幼い日の思い出が蘇ってくる気がする。だから、疲れた時はもちろん、そうでない時でもここにいると昔の自分から元気をもらえるような気がして彼は多くの時間をこの場所で過ごしていた。
突然、後ろからガサガサという音と共に声がしたので、飛び上がりそうなほど驚いた。
振り返ると、草をかき分け走ってきたのか少し上気した頬と綺麗な緑色の2つの瞳がきょとんとこちらを見つめていた。
「え、そんなはず…!君は…?」
自慢の秘密基地への突然の乱入者に対して、彼は問いかけた。するとダークブラウンに囲まれた2つの緑色がゆっくりと瞬くと
「私、カシアよ。びっくりさせて、ごめんね。でも、会いたかったわ、セラン…!」
駆け寄るその子を両腕で抱き止めながら、思わずふにゃっと微笑んだ。
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