王立魔法学園
青年編です。
幼年の9年後、カシアもうすぐ16歳になります。
この世界では高校受験生なお年頃。カシアは無事に女子高生になれるのでしょうか…
引き続き読んでもらえると嬉しいです、よろしくお願いします!
ざぁっと、風が花びらを舞い上がらせていく。校庭の周りに植えられている花が揺れる。その光景に、カシアは緊張がほぐれていく気がした。花は、ママが好きで小さい頃はたくさん家に咲いていた。だからだろうか、花が揺れながら「がんばって、カシア。あなたなら、できるわ」そう言った気がした。
「よしっ!なんとか、なるなる!」
ぐっ、と拳を握り自分を鼓舞して、カシアは試験会場となる教室へ向かった。
♢♦︎♢♦︎♢
「ただいまー」
無人とわかっていてもつい声をかけながら帰宅する。小さい頃、ママがいた頃のクセの一つ。思い出のようで、敢えて直そうとは思っていなかった。
「おかえり、カシア」
「あれ、パパ?研究所のお仕事は?」
「今日は早めに上がらせてもらうようにしていたんだよ、大事な娘が試験を頑張ってくる日だからね」
無人かと思ったらパパがいたので驚く。
パパは今は王立研究所で働いている。あの火事の後、私たちは王都に引っ越した。パパはもともと研究者だったから、王都でも研究所に転職できたみたい。植物の研究をしていると言っていた。
「…」
パパが、入学試験の出来を聞いていいのか躊躇うように私を見つけながら口を開いては閉じて、を繰り返す。
「多分、できたと思うよ」
そんなパパを見て苦笑しながら答えた。
自慢じゃないが、実は勉強は得意だったのだ。幼い頃によく遊んでいた物知りな男の子のおかげで。穏やかな空色の瞳を持つ、少し年上の男の子。火事の後会うこともないまま引っ越してしまったから、今はどうしているのか…。
「そうか、よく頑張ったな、カシア」
空想を遮るように、やっと笑顔を浮かべて言葉を紡ぐ父に褒められ照れ臭くもあるが、やっぱり嬉しくなる。あとは無事に、合格してますように。
今日は王立魔法学園の入学試験の日だったのだ。16になる子たちは、それぞれの道を歩むことになる。親や師匠に弟子入りして仕事を始める子、結婚して夫婦としての生活を始める子、各街にある高校に進む子、そして王立の魔法学園に進む子。王立魔法学園は、王立というだけあって王国のどこからでも受験できる。実家が遠方など、合格したとしても実際の通学が難しい場合は寮も用意されているから、高度な魔法技術を学びたい子たちは王国中から集まってくる。
私は、せっかくならもっとたくさんのことを知りたい。魔法技術を身につけたら、パパの研究のお手伝いもできるかもしれないし。ママがいなくなってから、一生懸命働いて私を育ててくれているパパに、少しでも楽をさせてあげたい、そんな気持ちがだんだん大きくなって、受験の年になる頃には、自然と王立魔法学園を受けたいと思うようになっていた。