狙われる力
「…ふーん?」
暗くなった森、クマの魔物の死骸は魔力となって世界に還元されたが、それをしとめた粒子は地面に残っていた。何者かが、その粒子をつまみ上げて興味深そうに観察している。その姿は、暗くてよく見えない。
「ここら一帯のホウセンカが全てタネを飛ばしてる…偶然ではないな。人族にそんな芸当ができたとは聞いていないが…」
考え込むように沈黙した後、にぃっと口角をあげた。
♢♦︎♢♦︎♢
「…そんなことが…」
「あぁ、まさか子供が遊ぶようなところに魔物が…」
カシアが寝た後のリビングに、エルムとその妻、リラの声が聞こえる。
「大変だったとは思うけど、みんなが無事でよかったわ」
微笑むリラとは反対に、エルムの表情は硬い。
「…魔物がいたと言うことは…。ホウセンカに力を借り…」
沈む表情同様沈んだ声で呟くエルムに、しばらく目を閉じたあとリラが優しく触れた。
「大丈夫、なんとかなるわ」
リラの穏やかな声音と、その耳元でゆったりと揺れる葉を模したイヤリングの動きを見ているうちにエルムも落ち着きを取り戻したように、深く息を吐いた。
「そうだな…。まずはカシアも、その友達も無事だったことに感謝を」
2人はうなづきあって共にカシアの眠る寝室へと目を向けた。
♢♦︎♢♦︎♢
じゃり、じゃり、と足を踏み締める足音。草木のない乾いた地面。辛うじて蔦性の植物が存在を許されているような、豊かとは程遠い土地。そこにある城を見上げる何者かは、少し屈んだかと思うと、2階ほどの高さのテラスに跳び上がった。
「…また人間界に行っていたのか?」
テラスに跳び込むと同時に奥の暗闇から声が問いかける。
「あら、待ってたの?ワタシがいなくて寂しかったのかしら?」
「フン」
声はめんどくさそうに暗闇の中の金色の眼を瞬くと、「それで?」と言わんばかりに目で促した。
「何者かはわからないけど、ホウセンカを操る存在がいた。微かに残る魔力は人族のものだったが…」
「ほぅ…人族でありながら、まるで樹の魔族ようだな」
「魔法と見せかけて物理攻撃になるなんて、うまくしたら防御無視で攻撃できる力…欲しいわね」
「そうだな、ドライアドは戦闘を好まず気づくと逃げ帰っていて戦の役に立たんからな」
「あの力…味方になるなら良し、ならぬなら…邪魔になるわね」
「我らが悲願のために…」
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幼年編、ぼちぼちラストスパートです。
幼年のカシア7歳が幼いのか、セラアズ兄弟9歳が大人び過ぎてるのか…2歳差に見えません汗