エルム=パルヴィフォリス
「弾けろ、ホウセンカ!」
茂みに囚われたクマに、様々な方向から何かが叩きつけられたと思ったらクマが倒れた。ふと見れば、アズロが傷を負わせていた1体目も同時に倒れている。
「はぁ…はぁ…」
子供たちが息を切らしながら、倒れたクマの魔物を見つめていると、反対側の茂みから男性が姿を現した。
「パパ…っ!」
カシアが男性に駆け寄ると抱きついた。
「怪我してないか、カシア?」
男性は優しくカシアを抱きとめると、その無事を確認した。
「2人も、どうもありがとう、カシアを守ってくれて。間に合ったようでよかった」
「あなたは…?」
「私はエルム=パルヴィフォリス。カシアの父親で、しがない研究者だ」
男性は白衣を正して、そう自己紹介した。
♢♦︎♢♦︎♢
念のため、とエルムさんが俺たちの街まで送ってくれた。カシアを送るつもりだったが、エルムさんが一緒なら安心だろう。
流石に夕飯の時間を過ぎていたため、俺はまだしもアズロは厳重注意を受けていた。アズロは既に複数属性を使いこなせる上に剣術も日々上達していて期待されるのもわかるが、後継者も大変だ。帰って来て早々に本宅の父様の部屋に呼び出されて行った。もうだいぶ経つし、兄も夕飯にはありつけたろうか。
「……」
1人になると考えてしまう、今日エルムさんが見せた技、あれは-
「魔法じゃ、なかったな」
「アズロ?!」
「おぅ」
いつの間に来ていたのか、窓の外の木に腰掛けるアズロが軽く手をあげた。
「厳重注意受けた当日にこっちに来てて…大丈夫?」
「逆に厳重注意受けた直後だからこそ、まさかその足で禁じられてる離れに来てるなんて思われないだろ?」
悪い笑顔だ。だが確かにそれも一理あるかもしれない。
「そんなことより、あの男の技…魔法じゃなかった。かといって単に物を投げた物理攻撃でもなかった。あれは…なんだ?」
「土属性の応用とかじゃないんだ?」
「違う。魔力は確かに動いていたが、土の魔力は感じなかった」
魔力適正の高いアズロが言うならそうなのだろう。あの時自分も感じた、一般的な魔法とは違うなにかの流れ。それが何かはわからなかったが、アズロもわからないとなるとそれは人族の魔力ではなく、それとは原理が異なると言われる精霊や魔族の魔力か…研究者と言っていたからなにか魔法具を使ってそれらの魔力を使えるような技を編み出しているか。考えてみても、絶対的に情報が足りない、答えが出る気がしない。
「…あの男の技もだが、その直前、クマを捕らえたのはなんだ?」
そう、エルムさんの技も謎が多いが、その直前にクマを草が捕らえていた。あの時、その結果を望んでいたのは-
「なぁ、セラン、あの娘…カシアは…何者だ?」
空色の瞳に映る自分の姿が揺れるのは、どちらの瞳が揺らいだせいなのだろう。
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パパ、なんか強キャラ感が出てませんが…強いです。