ピンチ!
秘密基地からの帰り道、いつもより少し遅くなってしまったので早足で帰ることにした。いつもなら秘密基地を出たあたりで解散するのだが、今日は暗くなるからとセランとアズロがカシアの町が見えるところまで送ってくれるらしい。
「ふふ、2人ともいいお兄ちゃんみたいね、ありがと」
「どういたしまして」
「子供を守るのも騎士団の大事な仕事だからな」
ご機嫌に歩くカシアのポケットの中でお土産にともらった金平糖がシャラシャラ音を鳴らす。
シャラ シャラ ガサ シャラ ガサ …
「…アズロ」
「あぁ…」
突然、2人は言葉を交わしながらカシアを間に挟むように位置を変えた。
「カシア、こっち」
いつも町に帰るのとは違う道を示されて、そっちは違うと答えそうになったが、あまりにセランが真剣な顔をしていたので言う通りにする。
シャラ ガサガサ シャラ ガサ シャラ …
「カシア、走れるかい?」
セランに問われると同時に、カシアも気づいていた。なにかが後ろからついてきていることに。
「せ、セラン…」
「大丈夫だよ、カシア」
ガサガサ シャラ ガサガサ …
もう、気づかずにはいられなかった。
「走れっ!」
アズロが叫ぶと同時に後ろの茂みに風刃を打ち込んだ。叫び声をあげて茂みから飛び出す大きなクマ。しかも、ただのクマではない、赤い目に紫色の毛並み。自然界には存在しない色合い。
「ひっ…!」
思わず口から引き攣った声が出る。
「止まるなっ、走れ!」
氷で作った剣で振りかぶるクマの爪を弾きながらアズロが叫ぶ。
「…こっちだ」
何かに導かれるようにセランがカシアの手を引いて森の中を走り始める。2人が移動し始めたのを確認したアズロも、クマを魔法で牽制しつつ殿を務めるべく走り始めた。
普段来てないエリアのはずなのに、セランが選ぶ道は不思議とクマが通りにくいような狭い木の隙間や岩のトンネルがあって子供の足でもなんとか追いつかれずに逃げられている。
「はぁっ…はぁっ…!」
それでも、やっぱり子供なのだ。体力の限界が見えてきてしまう。
(ダメ…止まったら捕まっちゃう!動いて、動いて、私の足…!)
「あっ?!」
足が、もつれた。
「カシアっ!」
セランが引いていた手を引っ張ってカシアを支えようとし、アズロは石礫を風に乗せてクマに炸裂させる。
ぐぎゃがぁぁぁ!
一際大きな叫び声を上げて、クマが怯むと同時に2体目が茂みから飛び出して来た。
「っ?!」
アズロのすぐ横に現れた2体目は、すぐ目の前にいるアズロに向かってその爪を振り上げる。
「だ…ダメーっ!」
いくつかのことが、同時に起きた。
アズロが氷の剣で爪を弾こうと自身の前に剣を構え、
セランがカシアを立ち上がらせることに成功し、
クマが爪に炎を纏わせ、
そして茂みがクマを捕らえるように動いた。
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