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見た目は一寸《チート》!中身は神《チート》!  作者: 秋華(秋山華道)
血統編
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対九頭竜と速水の決断

『謎乃王国の謎乃ミケコってさ、謎乃汽車と関係あるよな?』

『そりゃあるだろ。同じ苗字だし』

『誰かが調べたらしいんだけどさ、世界に謎乃って苗字はこの二人しかいないんだとよ』

『つまり兄上様ってのは謎乃汽車の事だよな?』

『なんで記者の妹が町を乗っ取って国を作ってるんだ?』

『やっぱり秘密組織アルカディアと関係があるんじゃないのか?』

『アルカディアって神武国との関係を疑われてなかったか?』

『そもそも秘密組織が国とか持ったら秘密じゃないだろ?』

『一体どうなってるのかわんねぇけど、最近王国支配の世の中が少し変わって来てる気がするよな』

『だな。正直俺は今の流れ大歓迎だよ。誰でも王族になれそうじゃん?』

『そうだけどさ、俺貴族だからなんだか優位性が失われつつあって怖いよ』

『それな。その内誰もが貴族を名乗る世の中になるんじゃね?』

『どうなるか分からないけど、俺はとりあえず謎乃ミケコを応援するぜ。楽しい事やってくれそうだしな』

『ここであんまり変な事言わない方がいいぞ。友愛されるから』

『友愛は嫌だな。この辺りで話はやめておくよ』

『だな。友愛怖えし』

そりゃバレるよな。

謎乃って苗字は失敗だったか。

でもそもそもの話、謎乃汽車自体俺との繋がりはバレてないわけだし、そういう意味では問題はない。

しかしミケコって割と人気あるよな。

全ての映像にはこんな感じで、主に貴族がコメントできるようになっている。

最近では一般人も映像を見られるようにしているから、コメントの三割くらいは一般人って言われているけどね。

魔法通信ネットワーク上では貴族も一般人も変わらないのだ。

そこでミケコが支持されているのを見ると、俺はなんだか嬉しかった。

さて九頭竜の問題は一応方向が決まり、それに向けて皆準備を進めている。

領民ギルドは九頭竜ギルドとの取引に関して、百パーセントの手数料を取ると決めた。

九頭竜領内で売買している者は、輸出入に関しては全て九頭竜ギルドを通さなければならない。

京極商事は九頭竜領内においては輸出入業務を行わない。

後は概ね自由競争の世界となった。

しかし領土を取られた九頭竜がこのまま黙っているわけもなく、間もなく九頭竜は謎乃王国へと進攻を開始した。

『盗られたモノは取り戻す!それが九頭竜だ!』

まあ当然の対応だけれど、ミケコはアレで結構強いんだよな。

俺は最前線を見に行った。

九頭竜はようやく本土から主力を送り込んできたか。

人間の騎士団ではなく、ドラゴン紛いの戦士が数名確認できた。

こいつらが最初から出てきていたら、今の状態にはなっていなかったかもしれない。

「っておい!なんでこんな所に死志がいるんだ?」

そういや死志の奴、そろそろ戦いたいとか言ってたよな。

山女と似たような意味で敵にはしたくないと思われる奴だ。

ただ敵の主力と力は五分か。

「ヒャッハー!つええ奴がいるじゃん!面白れぇ!」

「雲長、明星、邪魔が入らないようにサポートしてやれ」

「了解しました!」

「承り‥‥」

なかなか連携は取れているな。

それにそれ以外の一般兵もなかなか強い。

何処であんなの手に入れたんだろう。

ん?あの兵みんなアンデットじゃね?

あそこにいるのはリッチーか。

リッチーといえばアンデットの王だ。

多くのアンデットを召喚し兵隊とするヤバい奴だが、ハイプリーストのターンアンデットという魔法で簡単に退ける事はできる。

ほらほら、敵もハイプリーストを出してきたよ。

ん?なんだか焦っているようだな。

ターンアンデットが効かないようだ。

どういう事だ?

全てのアンデットに絶対魔法防御が施されているぞ。

雲長の魔法か。

伊達に最強シャインドラゴンじゃねぇな。

しかしターンアンデットを絶対魔法防御で防ぐ戦いなんて想像もできなかったぞ。

なんとなくミケコのアイデアな気がするよ。

そしてアンデットも強いのを召喚している。

数が多いのはキョンシーの中でも覚醒しているハイキョンシーか。

絶対魔法防御により魔法を封じられた中で、こいつの能力は活きている。

魔法ではない飛行能力に神通力は敵にしたくないだろう。

次にフランケンシュタインも割と多い。

とにかくパワーのあるゾンビと考えていい。

捕まったらかなりヤバい。

そしてドラゴンゾンビは、七龍と比べて身体能力は上だ。

その代わり魔法は使えないが、絶対魔法防御によって強さを発揮している。

最強はデュラハンか。

伝説の魔物としては弱い方だが、こいつも物理戦闘に特化した奴だ。

こんな死なない兵隊を相手にするのはかなり嫌だろう。

九頭竜が可哀想になってくるわ。

そして死志と戦っている奴、そろそろ気が付いたな。

死志はマンティコアだ。

敵を徐々に病に侵し、毒で弱らせ恐怖を与える。

敵はドラゴンキメラが擬人化しているのだと思うけれど、うちには鍛え抜かれたドラゴンキメラがいるからな。

敵を知っている分こちらが有利。

間もなく敵の大将クラス三人を捕らえていた。

ミケコが素早く魔力ドレインの手枷足枷を付けて完全に捕獲する。

うららは全く出番無しか。

ドラゴンキメラクラスがもしもトップレベルだとしたら、九頭竜はミケコには勝てないだろう。

少なくとも町を攻撃するのが四人までだとしたらね。

俺はこの辺りに見ている者がいない事を確認してから地上へと下りて行った。

「ミケコの戦い方、見てたぞ!」

「兄上様!ざっとこんなものです。強そうな奴は捕らえてありますが、どうしましょうか?こいつらはどうやらテイムされているようで寝返りそうもありません」

「貴様‥‥此花策也か‥‥まさか謎乃汽車だったとは‥‥」

こいつらには知られてしまった以上解放するわけにはいかないな。

「お前ら九頭竜に使役されてるんだろ?それ解いてやるから、俺たちの仲間にならないか?と言っても今は仲間になるなんて言えないか」

「策也さん。もしよろしければうららが殺しましょうか?」

「策也様!殺していいなら僕に殺させてください」

うららからそんな言葉、聞きたくなかったよ。

死志は想定内だけど。

「そこそこ戦力にはなりそうだからな。逃がす訳にもいかんし」

「でも殺すのは可哀想だと思います‥‥」

何故堕天使になったんだこいつ。

こんなに心優しいのに。

もしかして天界って相当厳しいのか、それとも逆にヤバい所だったりして。

「では我がゾンビ部隊に入ってもらうのはどうザマスか?」

うおっ!リッチーが喋った!

そして流石にミケコの仲間になるだけあって割と軽そうだ。

「兄上様、お決めください」

「三人は俺が神武国で預かるよ」

「お前たち助かったな。兄上様でなければ全員此処で殺されていたぞ」

なんかミケコが言うと妙な説得力というか、そうだったんだと思わされる所がある。

こうしてみんな納得させられて仲間になったのだろう。

こんな人材を奴隷工作員として使っていた有栖川は惜しい事をしたな。

不安だらけだけどさ。

「うらら、雲長、明星、死志、そして髑髏(シャレコウベ)、みんなよくやった。それではエゴンイーシに戻るぞ!」

リッチーの名前は髑髏なのね。

なんとなく印象もマッチしてるのが微妙にジワルな。

こんな感じで九頭竜の進攻をアッサリと退ける謎乃王国だった。

「つか死志、お前ミケコの下で働くのか?」

「時々お邪魔させていただこうかと」

「それでは兄上様!」

ミケコたちはうららの瞬間移動魔法で俺の前から消えた。

全く死志の奴は、もしかしてこっちのが合ってるのかな。

でも今日の敵なら倒せたけれど、これより上のクラスになってきたら死志じゃ辛いだろう。

まああの連中がいればなんとかなるか。

俺は捕らえた三人を神武国の牢へと送り、自分もマイホームへと戻るのだった。


さて俺は俺のやるべき事をやらなければならない。

一つは九頭竜の奴隷労働に対抗する為、科学技術ならぬ魔法技術による生産体制を構築する。

この世界の衣料は色々な方法で作られているが、基本的には一着一着が手作りだ。

俺みたいに魔法で作れる者もいるだろうが、そういう人はきっと他の能力も高くて、服屋をする事は考えられない。

だけどせっかくの魔法なのだから、材料があればその魔法が発動する魔導具を作れればと思うのだ。

魔導具は二種類用意する。

材料を投入すれば全自動で同じ物をいくつも作れる大量生産魔導具と、衣服製造の魔法が使えるようになる指輪(リング)だ。

どちらも運用には難しい所がある。

大量生産用魔導具は、同じ材料が大量に必要になる事だ。

だからそれが可能な物に限られてくる。

材料にも無駄ができるので、これだけでは価格を奴隷労働並みには下げられない。

そこで余った材料を使う為に衣服製造の魔法リングなわけだが、この魔法は人のイメージ力やアイデアが必要になる。

作り手の育成が必要になってくるわけだ。

しかも魔法だから、個人の魔力も必要になってくる。

俺はまず、秘密基地の魔法道具担当である賢太に、俺が作ったサンプルの指輪を渡して大量生産をさせた。

それを俺はオーガ王国旭に持ち込み、魔力を持ったオーガをトレーニングする事にした。

もちろん強制ではなく、風里にも許可をとってやりたい者だけにやらせる。

オーガの生活は基本的に質素で、人間の世界で生きる為には足りない所がある。

簡単に人間の感覚で言えば『遅れている』のだ。

オーガの仕事はほぼ一次産業しか存在しない。

せめて二次産業もやっていかないと、オーガはいずれまた取り残され排除されかねない。

この世界で皆が共に暮らす為には、皆が同じ文化レベルを持たなければならないのだ。

もちろん共存共生を望まない民族や種族があってもいいが、最低限普通に話が通じるレベルは必要だからね。

そういう所ちゃんとやらないと、転生前の世界のように幸せに暮らせない人が増える事になる。

さてオーガの衣服製造トレーニングの次は大量生産魔導具だ。

こちらは魔石に魔力を込めて動かすので、作業はそれと材料を投入するだけ。

出来上がるものはすべて同じだが、材料のロスをなんとかできれば価格で九頭竜に対抗できる。

品質は当然手作業よりも上だし、同じ物しか作れないのも場合によってはメリットとなる。

執事服、メイド服、学園の制服、騎士団衣装など同じものを必要とする場所は多いのだ。

この魔導具はドズルに製造を頼み、出来上がった物はオーガ王国旭に移動する。

同じ場所で製造した方が材料の輸送費を減らせるからね。

此処なら多少転移ゲートも使えるし、個別製造した価格の高い物はそれで輸送も可能だろう。

それにこの場所は大陸の中心近くにあるから、神武商人ギルドによって拡販しやすいのだ。

此処で上手く行けば、今度は妖精王国ジャミルや謎乃王国でも生産させていこうと思う。

流通コストも減らせれば、もう九頭竜の商品なんて怖くない。

こんな感じで衣服に関してはなんとかなりそうな目途が立った。

次にやるべきは、魔法通信ネットワーク構築業務と魔法通信機器のシェアを皇に取り戻す事だ。

これは冷泉博士の想いでもあるし、九頭竜がとち狂った今がチャンスだ。

今年の世界ランキングが一位となり、浮かれているのか調子に乗っているのか知らないけどさ。

既に神武国と関係国は自前だったり皇印の物に移行されている。

謎乃王国も現在移行を始めた。

まずは有栖川商人ギルドと九頭竜ギルドが進出していない所へ大攻勢をかけて行く。

思った以上にこの十年シェアを奪えなかったけれど、魔石のストックは十分にあるし、商人ギルドが解散したので個別対応が可能になった。

領民ギルドは既に自前の物を使っているが、まずは神武商人ギルドから入れ替えを行っていく事にした。

これで何処までやれるかは今の所分からないが、結果が出るのは先の話で、話し合いと方向性が決まれば後は皆に任せてやるだけとなった。


そんなこんなでいよいよ九頭竜ギルドが立ち上がり、領民ギルドの対応もスタートした。

謎乃王国の魔法通信ネットワークの入れ替えなど、色々と間に合っていない所も多い。

でも九頭竜も京極の商人ギルドを奪う予定だっただろうから、こちらもかなり混乱していた。

一時九頭竜の輸出入に関しては対応が間に合っていない事態に陥ったが、各町の役所に九頭竜ギルド業務室を設けてギリギリの対応で乗り切っていた。

「この状況はチャンスなんだけど、準備が間に合っていないのはお互い様なんだよな」

「そうですね。今すぐ大量の衣服が提供できる状態なら、一気にシェアを奪えたんですが」

また総司が俺たちの庭に来ているが、実はこの対九頭竜の準備の中でこちらに引っ越してきていた。

直ぐに相談できた方が良いし転移ゲートもあるから、少数であれば別にナンデスカの町に住む必要もないのだ。

こうしてまた中心にある庭を囲むようにリンたちの屋敷が建つ事になった。

「問題は京極だな。あそこは今の業務でカツカツなんだろ?今後九頭竜ギルドが揃ってくれば、九頭竜領内で仕事を続けるメリットを失くす」

「かといって全ての利益を九頭竜ギルドに奪われるのも(シャク)ですね」

「九頭竜を潰すまでの間、スバルの特産を独占させてやるか」

今エルフ王国スバルでは、シャンプーとリンス以外にトリートメントの生産も開始していた。

そしてこれらは国内だけの販売だったが、世界展開する事に決めていた。

その販売を独占させてやれば、世界でこれらを買えないのはほぼ九頭竜領内だけとなる。

「みなさんお揃いですね」

そう言って庭にやってきたのは千えるだった。

そういえば千えるの屋敷からもこの場所に来られるように転移ゲートを設置していたんだったな。

「どうしたんだ突然」

「ああ、僕が呼んでおいたんですよ。これから此処で相談する事も増えるかと思いまして」

「そうなんです。それにしても凄く良い所ですね!一体此処は何処なんですか?気になります!」

気になると言われたらしゃーなしだな。

「此処はフレイムドラゴンの隠れ里だ。昔見つけた時俺とみゆきで此処で暮らそうと思ってたんだけど、なんだかんだで今は四世帯になっている。なんだったら千えるも来るか?」

ここまで増えたらなら仲間で集まって暮らすのも悪くないだろう。

それに俺は千えるの記憶を持っていて、こいつに邪心なんかが無い事は分かっているのだ。

「本当ですか?!此処ならもしかして命を狙われても安全なんじゃないですかね」

「色々な意味で安全ですね。まず見つけられませんし、見つけられたとしても策也さんやみゆきちゃんもいますから、おそらく世界一安全な場所でしょう。家の二階が空いてますから、もしよろしければ」

「いいんですか?!」

「策也さんが作ってくれた屋敷ですし、おそらく家にいる時間はまるっきり逆になるんじゃないでしょうか」

此花のナンデスカの町と、愛洲のカガラシの町では時差が十二時間ある。

現在この場所の時刻は午後三時だが、此花ナンデスカでは午後八時で、愛洲のカガラシでは午前八時となっているのだ。

「なんだか時間の感覚が狂いそうですね」

「そうですね。ただ建物は高性能で音も光も遮断できますから、慣れると問題はありませんよ」

「とりあえず好きにすればいいさ。所でオーガ王国の衣服はどれくらい出荷できそうだ?」

千えるならおそらく把握しているだろう。

「正直うちのエリアだけでもまだまだ九頭竜からの輸入を断ち切る事は難しいです。共通衣装はカバーできてますが、一般向けが圧倒的に足りません」

九頭竜は一体どれだけの奴隷労働者を抱えているのだろうか。

おそらく何十万人の奴隷が働かされていると考えられるんだよな。

ドズルたちだけじゃ大量生産魔道具の製造が追いつかないし、ドワーフの町三葉の連中にも手伝ってもらうか。

結局の所、急に世界が変わる事はなかった。

ただ、これからはゆっくりと変わってゆくのだろう。

だから慌てる事はない。

俺の時間は無限にあるのだから。


その頃、霧島の俺は西園寺国王の命を受け、速水領のボチボチデンナの町に来ていた。

西園寺が常に警戒している有栖川に何かしらの動きがあったというのだ。

というかなんで俺がこんな密偵みたいな真似しなくちゃならんのだ?

しかもどうやら俺は人間になってしまったらしい。

つまり望海が妊娠したんだろうな。

人間に変化して子供を作る事はできるのだが、できると人間の姿がデフォルトになる現象がこの世界にはあるのだ。

人間になりたきゃ子供を作れってね。

逆に言えば子供を作る事が人間なんだろう。

それがこの世界の摂理なのだ。

そんなわけで俺はわざわざ無敵の状態に変化し、尚且つ姿を消して仕事をしていた。

最近の有栖川はなめたらあかんで。

霧島の俺よりも強いのは必ずいるから。

しかしムジナの俺も落ちたものよ。

ミケコよりも魔力小さいんだからな。

まあこの体に変化しておけばまず殺られないだろうけれどね。

影に潜んで俺は速水の屋敷へと入っていった。

俺よりも強い奴の気配はない。

とりあえずこのまま行っても問題ないだろう。

俺はそもそも気が小さいのだ。

チートだからある程度なんでもできたけど、この体だと不安もある。

いざとなれば本体が飛んできて魂を回収してくれるとは思うが、死ぬのは嫌だよね。

速水の国王はこの部屋かな。

俺は影を渡って部屋へと入った。

中には速水の国王と、もう一人兎束豊来がいた。

豊来と言えば金魚の叔父だ。

そして昔はヌッカの商人ギルドマスターをしていた。

今は商人ギルド連盟が解散したのでその職を離れたようだが、こんな所で何をやっているのやら。

「いい加減決めたらどうだ?有栖川の属国になればもう伊集院に遠慮する必要もなくなるんだぞ。バックに有栖川がついているのだから速水王国の力は格段に上がるのだ」

こりゃまたこんな所で火種がくすぶっていましたか。

今までは王族と国の維持がルールにあったから、速水王国は守られてきた。

でもこれからは簡単に消滅すらあり得る。

速水王国ならうらら抜きのミケコたち四人でも滅ぼす事ができるだろう。

そうやって脅して属国化するか。

たとえ実力行使が可能ではないと考えられても、脅されたら不安になるはずだ。

有栖川としては伊集院と敵対したくないから、決して攻め取ったりはしない。

だから速水から従属させる。

でもこのままだと速水は二分割される可能性もあるんだよな。

大国の間にある小国は辛いよね。

「悪いが、属国になるつもりはない。お帰り願おう」

おおっ!やるじゃん速水の国王。

やっぱり毅然とした態度でやらないとね。

脅しに屈しないのは流石ですわ。

俺が速水程度の力しかなければ完全に屈してるよ。

「又来る。早く有栖川についた方が良いと思うがな」

豊来も最初に会った時のような迫力がなくなったかな。

こんなおっさんでも親戚の金魚がいなくなった事、少しは心配したりしているのかね。

豊来はトボトボと部屋から出て行った。

後ろ姿が少し小さく見えた。

さて、なんとか有栖川の企みは回避されるかな。

そう思って帰ろうとしたら、別のドアから人が一人入ってきた。

執事かメイドか秘書か、そういった者かと思ったのだが、その人物の顔を見て俺は驚いた。

大仏凱旋だと?!

どういう事だ?

「帰られましたか。全く有栖川は油断も隙もありませんねぇ。この国は元々伊集院が支えてきた国なのですよ。そうですよね?」

「ああそうだな。それで俺を幹部として迎え入れてくれるって話は本当だろうな?」

「もちろんです。今よりも多くの町を治める大領主として迎え入れるつもりです」

属国ではなく完全に伊集院に吸収される道を選んだか。

いくら王族でもずっと負け組じゃ嫌にもなる。

だったら大国の幹部をやっている方がいいか。

俺がどうこう言える話じゃないな。

ただ緩衝地帯であった国が無くなった事で有栖川がどう動くか、心配はそこだけだった。

俺は屋敷を出て西園寺の王都オゴワへ帰還した。

それから数時間後には速水から発表があった。

速水王国は伊集院王国に吸収される事となった。

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