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見た目は一寸《チート》!中身は神《チート》!  作者: 秋華(秋山華道)
中央大陸編
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初めてのパーティーメンバー募集!新しい仲間は草子!

俺とリンは、黒死鳥の元王様である環奈を連れ、再び冒険の旅へと出ていた。

それにしても環奈がオアシスを出る時は大変だったな。

普通なら代替わりした後、そのまま新しい王を支え成長を見守るのが元王の役目。

止める黒死鳥たちを殴り倒しながら、俺たちはオアシスを出てきたのだ。

アレで大丈夫だったのかね。

まあ環奈はなんとも思っていないようだったから、おそらく大丈夫なんだろう。

オアシスを出てからは、歩きながら住民カードの使い方を環奈に教えたり、自動排泄の常態魔法を登録したり、環奈の実力を見る為に魔物と戦ってもらったり、数日はそれなりに新たな冒険の旅を味わった。

しかし‥‥。

「あぁ。なんか歩くの飽きた。こんなチッコイ体で、しかも刺激が無さすぎる!仲間の一人は中身爺さん女だし、一応本物の女であるリンは性格が男前でしかも今の所俺の女じゃないし、つまんねぇ!」

そうなのだ。

異世界の冒険の旅と言えば、もうその時点でハーレムなのが当たり前のはずだ。

一応見た目可愛い女に囲まれてはいるが、どう考えても何かが違う。

子供だからラブロマンスもないし、当然エロイイベントすら起こらない。

くっそ、子供で無ければ‥‥。

「刺激が欲しいんなら、わしのチチを揉むか?わしはいくらでも揉ませてやるぞい?」

なかなか魅力的な申し出ではあるが、やはり中身が爺さんで作りものの姿となると、どうもテンションが上がらない。

視線をリンに向けると、無い胸を隠すように白い眼を向けてくる。

いやいや、最初からそんな胸に興味はないのだよ。

はぁ‥‥せめてでかい胸を揉みながら旅でもできたら、少しくらいはマシなのかなぁ。

「おっ?それだ!」

「お?揉みたいのじゃな?ほれ!」

「違う!環奈のじゃない!」

そうだ。

俺は今子供なんだ。

子供なら子供らしくエロイ事をすればいいじゃないか。

「よし!次の町でパーティーメンバーを募集するぞ!若くて可愛くて胸が大きくて、俺を胸に抱っこしながら歩いてくれる女を募集する!」

なんか言っててちょっとヤバい気もするが、異世界転生したならこれくらいいいだろ?

「うわぁ。ホント引くわぁ」

「わしのじゃ駄目なのがショックじゃわぃ。でも可愛いオナゴをパーテーに入れるのは大賛成じゃ。わしも子供に変化して抱っこしてもらいたいのぉ」

「環奈は駄目だぞ!俺の女を募集するんだ。そして俺は胸を揉みながら旅をする。これこそ今求められれる最高レベルの冒険ではないだろうか!」

リンには不評のようだが、まあ白い目を向けてくるだけで特に反対はしていないようだ。

「そんなわけで次の‥‥」

「次は『ショーシイ』の町よ」

「ショーシイの町でパーティーメンバーを募集する!」

「異議なしじゃ」

俺は少し軽くなった足で軽快に歩き続けた。

しかし環奈の喋り、どうにかならんのかね。

声は環奈ちゃんの声なのに喋り方が全然違って違和感ありまくり。


幾日か歩いて、ショーシイに着いた俺たちは早速町へと入った。

環奈も問題なく入る事ができた。

黒死鳥が人間に変化して共に暮らしているという話も、あながち嘘ではない気がした。

ギルドは少し離れた場所にあった。

そんなに時間のかかる距離ではなかったものの、歩いて行ったらかなり時間がかかった。

環奈が完全にお上りさん状態だったからだ。

まあ初めての町だし、多少は許してやるか。

でもすれ違う美女のお尻を触っていたのは、ちょっと許せないかな。

俺も見た目子供だから多少は許されそうだが、何故だかできないんだよね。

リンが見ている事もあるんだけど、多分見ていなくてもできなかっただろう。

それを環奈が堂々とやっているのが、うらやましくも腹立たしかった。

リンに何度も殴られながら、それでも続ける姿はいっそ清々しく残念にも感じたわけだが。

というか、鳥獣が人間の尻を触って嬉しいものなのだろうか。

環奈のいやらしい笑顔を見ていたら、答えは明白なんだけどね。

リンに何度も殴られて、ようやく環奈がセクハラ行為を止めた頃、俺たちはギルドへと到着した。

中に入ると、何処にでもある普通のギルドといった感じだった。

左側にギルドカウンター、右側には飲み屋、その間辺りに掲示板がある。

時間的に今は最も空いた時間のようで、人は少なく掲示板を確認している者はいなかった。

俺は早速カウンターへと向かった。

リンと環奈は先に飲み屋の席についていた。

「‥‥カウンター高すぎるんだよ!」

全く、本当に子供の体というのは不便である。

霧島で代わりに募集しても良いが、募集者の所にはなるべく俺かリンの名前を書きたかった。

何故なら、此花の家名にはやはりそれなりの力があるだろうからね。

無理ある注文であっても人が集まりやすいだろうという魂胆だ。

俺は浮遊の魔法で身長をカバーし、カウンターの向こうにいる受付のお嬢さんと話す事になった。

「ん?子供?‥‥」

「あぁ‥‥とりあえず住民カードを確認してくれ」

俺は少し戸惑う受付嬢にプラチナカードを差し出した。

すると少し驚いた表情でそれを受け取った。

「あ、はい‥‥」

それを少し慣れない手つきでマジックボックスにセットした。

その動作から、この受付嬢は新人さんだと悟った。

少し確認作業をした後、どうやら受付嬢は納得してくれたようだった。

不老不死の呪いの事も書いてあるし、実際は十八歳なのだ。

しかも貴族、変な対応はされないだろう。

「確認しました。それで‥‥どういったご用件でしょうか?」

よく考えたら、まだ何も伝えてはいなかったな。

「パーティーの仲間を募集したいんだけど?」

「えっ?子供が冒険者パーティー?」

この受付嬢、全く確認してないやんけ!

「いやだから、住民カードの情報確認したでしょ?俺こう見えても十八歳で、不老不死の呪いで見た目六歳で止まってんの!」

「あ、そうなんですか。カードが本物かどうか確認してほしいのかと」

「自分のカードなのにそんなわけあるかい!」

くっそ!

なんで俺がこんなツッコミ役をやらされなければならないんだ。

まあそれなりに関西人の血も交じっている俺だから多少心得はあるし、それはそれでやってやった感を味わえるから悪い気はしないんだけどね。

「すみません。それで、仲間の募集ですか。それでしたらこちらの用紙に記入して適当に掲示板に貼ってくれちゃっていいですよ」

「おっ、おう、そうか」

俺は用紙を受け取ると、その場で書き込んでいった。

要望の所には当然、俺を胸に抱いて歩いてくれる、若くて巨乳の可愛い子と書いておいた。

乳を揉む事も当然注意書きとして忘れちゃいない。

「そんな要求だと‥‥ほぼ応募はないんじゃないでしょうか‥‥」

受付嬢がそんな事を言っているように聞こえたが、俺は聞こえないフリをした。

集まらなければそれまでだし、これ以外で募集するつもりはないのだ。

「よしバッチリだ!パーティーメンバーには此花家第三王女がいるんだ。きっと応募はある!」

俺は受付嬢にサムズアップをくれてやってから用紙を渡した。

ウインクもしたが、アイマスクをしているので意味はなかった。

この所千里眼も邪眼も必要な時にしか使っていないから、正直仮面もあまり意味はないのだが、相手に気づかれず色々と探るのには必要で、一応ずっと付けていた。

受付嬢は用紙の内容を確認しながら、それをマジックボックスへと登録していった。

そこから住民カードへもデータが送られ登録された。

「では、期間は三日。応募があり次第メールで連絡しますね」

「うむ。よろしく」

俺は渡される住民カードと募集用紙を受け取ると、一旦浮遊魔法を解除して床へと下りた。

そして右側へ七歩行った所で再び浮遊魔法で浮かび上がり、掲示板へ用紙を貼った。

見つけやすいようにど真ん中に貼っておいた。

するといきなりそれに右手を伸ばして剥がす者がいた。

「おっ?何すんだ?!」

俺はその手が現れた方向、左側を見た。

するとそこには、若くて巨乳の可愛い子が立っていた。

何処か髪の長かった頃のリンに似ていると思った。

身長も同じくらいで百五十五センチと言った所か。

服装はこの世界のクレリックといった感じだが、どこかの教会に所属しているような見知ったものではなかった。

「ご、ごめんなさい!パーティー募集しているみたいだったので、是非仲間に入れてほしいと思ったんです」

ほうこの子が。

俺は改めて顔から足元までじっくりたっぷり(ねぶ)るように確認した。

「あ、あのう‥‥」

「うむ。採用じゃ!」

いつの間にか横まで来ていた環奈が、勝手に採用を言い渡した。

「あ、ありがとうございます!」

いいんだけどね。

どうせ採用しようと思っていたわけだし。

「で、条件はちゃんと守ってもらえるのか?」

一応確認した。

「大丈夫です。抱っこする子供は、あなたでよろしいんでしょうか?」

「ああ」

俺が返事をすると、いきなり抱っこしようと手を伸ばしてきた。

「いや、今はいいから。その辺はおいおいね。とりあえずパーティー募集を取り下げてこないとな」

手を伸ばして募集用紙を渡すよう促すと、巨乳っ子は笑顔で答えた。

「分かりました。私が行って話してきます」

「そっか。ならよろしく」

俺の言葉に巨乳っ子は、笑顔で答えてカウンターへと歩いていった。

こうして俺のパーティーメンバー募集は、僅かな時間で終了したのだった。

少しして新たな仲間が戻ってきた。

「終わりました。よろしくお願いしますね」

「ああ。で、名前はなんていうんだ?」

いつの間にかリンもこちらへと来ていた。

ゆっくり飲み屋のテーブルで待っていればいいものを。

「私は草子(ソウコ)と申します」

少し挙動不審な所を感じた。

緊張しているのかな。

「この世界じゃあまり聞かない名前だな。俺は此花策也だ。募集用紙にも書いてあったからもう知ってるだろうが」

「わしは環奈じゃ。女の子同士スキンシップを楽しみたいもんじゃのぅ」

環奈はそう言って俺よりも先に草子の胸を揉んでいた。

草子は特に気にする様子もなかったが、環奈の顔はちょっと表現したくないいやらしい顔をしていた。

「環奈止めなさいよ。また殴るわよ?」

もう殴っていた。

「私は麟堂。此花麟堂よ。お・ん・な・の・子同士よろしくね。ちなみにさっき殴ったあいつは中身オスだから、変な事してきたら殴っていいからね」

「お、オス?わ、分かりました」

「その辺りの事も含めて、話したい事は飯でも食いながらにしようぜ」

既に飲み屋のテーブルには食事が運ばれてきていた。

リンと環奈は先に注文していたわけで、席へと戻っていった。

リンは少し草子が気になるのか、何度かこちらを振り返っていた。

俺は右手を差し出して草子に握手を求めた。

すると何を思ったか、草子は左手でそれを掴み、俺を引くようにリンたちの後をついていった。

手を繋いで欲しかったわけじゃねぇよ!

でもまあ、なんというか、体が子供だからだろうか、嫌な気分ではなかった。


俺たちは色々と話した。

俺の旅の目的、リンの旅の目的、そして環奈の正体と旅の目的も話した。

最初は環奈の事、信じられないといった感じだったが、話していくうちに容姿通りの少女ではないという事は理解された。

ちなみに環奈の身長は百五十センチくらいで、リンや草子よりも少し小さいが、学年ではリンと同じ年の設定だ。

誕生日を聞いた所によると、リンと草子は早生まれでまだ十六歳、環奈だけは十七歳という事になっている。

本当は百歳だけどな。

そんな感じで色々話した後、俺たちは再び冒険の旅へと出る事にした。

少しリンの様子がおかしい気もしたが、多分いつもこんなもんだろうと納得する事にした。

数日滞在する予定だったが、もうこの町には用はなかった。

「早速冒険の旅に出ようと思うが、草子は大丈夫なのか?」

「あ、はい。でもちょっと‥‥お花を摘みに‥‥」

「あ、それなら私もやっておこうかしら。一日一回くらいは行っておかないとね」

「じゃあわしもやっておくかのぅ」

環奈は自然な流れでリンたちについて行こうとしたが、俺は首根っこを掴んで止めた。

「環奈は別の時にしとけ。また殴られるぞ」

「そうじゃのぅ。可愛い顔に傷でもついたら大変じゃ」

なんだか環奈のキャラが面白くて、少し笑みがこぼれた。

草子たちが戻ってくると、いきなりリンに命令されて、草子のカードにも自動排泄の常態魔法を登録させられた。

登録するつもりだったから別に構わないんだけど、命令されるとなんだかむかついた。

俺たちは町を出た。

いよいよである。

俺は草子に抱っこしてもらうのだ。

六歳から体が成長していないからだろうか。

抱っこしてもらえるのがやたらと嬉しい。

なんだかテンションが上がるぜ。

「では草子よ。頼むぞ」

「は、はい」

俺は手を上げて待ち構えた。

草子が腰の辺りを掴んだ。

持ち上げようとした。

全然持ち上がらなかった。

「んんん‥‥持ち上がりません」

多分こんな事になると思っていたよ。

いくら六歳の体とはいえ、身長百十五センチ、体重は二十キロくらいはある。

どう見ても魔法職の細い腕を持つ草子が俺を持ちあげられるとは思えなかった。

「分かっていたよ」

俺は異次元収納から一つの指輪を取りだした。

それを草子に渡す。

「やるよ。それはスーナシリングと言ってだな、力が六千六百倍になるマジックアイテムだ」

「えっ!そんな凄そうなアイテム、いただけるんですか?さっきは信じられない常態魔法まで登録してもらいましたし、私そんなに大した事できませんよ」

草子はそう言っているが、既に邪眼によって能力はある程度把握させてもらっている。

リンなんかよりもレベルは高く、かなりの魔法使いのようだ。

魔力も高く、服装から想像すればクレリック、それも神官(マスター)クラスだろう。

正直謙遜するレベルではないのにこの態度は、逆に違和感を覚えた。

「草子はクレリックなのか?結構なレベルに感じるんだけど」

「いえ。そういう服装はしていますが、クレリックというわけじゃありません」

そこまで話すと、草子はチラッとリンの方を見た。

ん?どうしたんだろうか?

また違和感を覚えたが、何事もなかったかのように草子は更に話した。

「ちょっとだけ役に立たない魔法が使えるくらいで、おそらく戦闘其の他なんの役にも立たないと思います。だからほら、こういう役割を与えてくださったパーティーに入ろうと思ったんです」

草子はそう言ってスーナシリングを右手中指にはめると、軽く俺を持ちあげて胸に抱いた。

「おっ!」

「本当だ。凄く簡単に持ち上げられました。綿を持っているくらい軽く感じます!」

喜んで俺を抱く草子はテンションが上がっているようで、少しその場で小躍りする勢いだった。

俺は特に何を思うともなく、自然と胸を掴んでいた。

「うほっ!」

「ええのぉ。わしも誰か揉ませてくれんかのぉ」

「ふふふ」

草子も何気ににこやかで、特に嫌がっているようにも感じない。

俺はなんとなくホッとしていた。

こんな時何か言いそうなリンも、何かを考えているようで特に何も言ってこなかった。

俺たちは何となく次の町へ向けて歩き出した。

草子にはリンと並んで歩いてもらった。

「次の町は何処だっけ?」

「えっと‥‥次は『バッテンダガヤ』の町、東雲の王都ね」

「ほう。さっきのショーシイの町も東雲家の領地か?」

「ええそうよ」

いつの間にか此花家の領地は出ているようだった。

まあ別に敵対関係にあるわけでもないし、国境はおそらくあの鯉を捕まえた川辺りだったのだろう。

もしかしたらあの橋に出入国管理者が常駐していたのかもしれないが、黒死鳥騒ぎでいられなかったんだろうな。

そもそも国境にそんな人がいるのかどうかも知らないけど。

何気ない話をしていたら、前を歩いていた環奈が俺たちを振り返って言った。

「リン殿と草子殿は姉妹のように似ておるのぉ」

それは俺も最初見た時に思った。

髪の長さも違うし、持ってる雰囲気も違うし、胸の大きさも違うからそれ以上意識はしなかったが、言われて見て比べるとやはり似ていた。

「リンには双子の姉妹がいたが、王家の問題から一人は捨てられたのであった。なんて話はないよな?」

「ええ。そんな話は聞いた事ないわよ‥‥」

そういうリンは、やはりいつもと少し反応が違う気がした。

何か隠しているのだろうか。

実はクローン人間だとか。

それはないな。

やはり胸の大きさが違うからな。

まあ何かを隠していたとしても、俺は別に気にしないのだ。

人間言いたくない事の一つや二つあるものだ。

俺だって転生者だって事は話してないし、そんなもんである。

話す必要が出てきたら話してくれるだろう。

これ以上は考えるのを止めた。

しばらく魔物も出ない整備されている道を進んでいくと、別のパーティーが向こうから歩いてきた。

男三人のパーティーで、嫌な予感がしたのか、リンは歩くペースを上げて前に出ていった。

するとやはりその嫌な予感は当たっていた。

「ねぇ君たち。女の子三人でどうしたの?俺たち男三人で丁度暇してた所なんだよね。これから一緒に森の中で狩りでもしないぃ?」

かなりナンパな喋りで軽そうな男だ。

こういう事はリンと旅に出た頃からちょくちょくあった。

全く嫌になるぜ。

「こっちは子連れなの。残念だけど遠慮しておくわ」

リンは慣れたもんで、笑顔で男の誘いを断った。

でも、此処までこれだけで引き下がった男はいない。

当然しつこく誘ってくるのだ。

「子供?ああそのガキか。いいじゃんそんな子供放っておいて。いてもいなくても一緒っしょ。マスクして眠ってるんじゃないの?そのまま永久に眠らせてあげてもいいよぉ」

正直、三人ともちょっと気持ち悪い男たちだ。

リンはもうウンザリだという顔をしてお手上げポーズをしてきた。

「のう策也殿。あいつら殺してもええかのぉ?」

環奈は町でも何度か声をかけられていたが、そのたびに同じ質問をしてきた。

流石に本気で殺すつもりはないと思いたいが、人間に出会えば即抹殺する黒死鳥の元親分だ。

もしかしたら本気かもしれない。

「あ、止めておけ。あんなカス男どもを殺したら無駄に俺たちの魂が穢れるよ」

「残念じゃのぅ‥‥」

本気で残念がっていた。

「おいおい聞こえてるぞぉ?ちょっと痛い目みたいようだなガキ!とそこの変な喋りする女!」

子供に対してマジで怒るとか、全く心も貧しい奴らだな。

三人の男の内、前で話をしていた男が腰に差してあった剣を抜いた。

俺は一応邪眼で男たちの能力を確認した。

全く笑わせてくれる。

レベル二十程度のせいぜいシルバークラスか。

マジで戦闘なんてしたら確実に殺してしまうレベル。

「環奈。適当に遊んでやってくれ」

リンはやる気なさそうだし、俺もこんな雑魚を相手にはしたくない。

こういう時は戦いたそうな環奈にやらせるのが良いだろう。

「殺さんようにじゃな」

環奈は男の前に出ていった。

「てめぇ舐めてんのか?武器も無しで何涼しい顔で出てきてるんだよ!少し痛い目見せてやるよ!」

そう言って男は剣を振り下ろしてきた。

肩辺りを狙って、多少は手を抜いているようだった。

「本気でかかってきても一緒じゃがのぅ」

環奈はその剣を指先二本で挟んで止めた。

「なんだと?!」

男は驚いて剣を引こうとしたが、全く動かなかった。

「ひ弱な人間じゃのぅ」

環奈はそう言うと、そのまま二本の指で剣を真っ二つに折った。

「あ、壊さずもろうた方が良かったかのぅ。一度剣とやらで戦ってみたかったんじゃ」

環奈は折れた剣を持つ男の手首に手刀(シュトウ)を入れた。

そして男が落とした剣を足で軽く蹴り上げてそれを手に取った。

男は恐怖の交じった表情で唖然としていた。

「後ろの二人。剣を抜いてかかってこんのか?ちょっとこれで斬ったらどんな感じなのか試してみたいんじゃがのぅ?」

既に男たちには恐怖しかなかった。

気が付いたのだろう。

自分たちが相手にできる者ではない事を。

姿は可愛い女の子でも、中身は最強魔獣黒死鳥の元親分だからな。

男たちは走って逃げて行った。

「残念じゃのぅ。剣を使って戦ってみたかったんじゃが‥‥」

環奈は不完全燃焼といった感じで折れた剣を振っていた。

剣か。

「そうか?なら一旦家に戻るか」

此処までは冒険を楽しみたいので、瞬間移動魔法が使えるのに使ってこなかった。

野宿なんかもやってみたかったからね。

でも流石に何度も経験してもう良いかと思った。

「どういう事?」

「いや俺、一度行った所ならどこでも瞬間移動できるゲートを作る事ができるんだよね」

「それって、私たちも一緒に何処にでも行けるって事?」

「そういう事だな」

リンは少し驚いていたが、怒っているとかそういう感じは伝わってこなかった。

リンももしかしたら、野宿とかそういうのやってみたかったのかもしれない。

「そんなわけで、一度みんなでホームに戻ろうと思う。環奈が剣で戦ってみたいって言ったのを聞いて、ならば良い剣をプレゼントしてやろうと思ってな」

「マジかの?それは嬉しいのぉ」

「オッケー!」

「私も一緒でよろしいのですか?」

草子は少し恐縮しているような事を言ったが、態度はそうでもなかった。

「もちろんだ。じゃあ行くぞ!みんなその場から動くなよ!」

俺はそう言うと、半径五メートルくらいのゲートを地面に作った。

次の瞬間全員俺の屋敷の一階にある広間へと移動していた。

2024年10月1日 一部おかしな言葉を調整

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