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見た目は一寸《チート》!中身は神《チート》!  作者: 秋華(秋山華道)
獣人編
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情報戦!またねエルグランド

悪人と云われている人でも、悪人ではない事がある。

善人と云われている人でも、善人ではない事がある。

あなたにとって正しい事であっても、別の誰かにとっては間違っている事もある。

いやむしろ半分は間違っていると言っていい。

世界では勢力を二分する争いがいつの時代でも起こっているのだから。

当然俺の考えや言動だって正しい事ばかりではない。

俺は伊集院や此花が島津に領地を返す事は良い事だと思っていた。

しかしその結果、島津第二王国のノーナルの町では、住民もろとも全ての人が虐殺されたのである。

もしもあの時領土返還が成されなかったら、世界ルールによって国は守られノーナルの人々は死なずに済んだはずだ。

俺のやった事は間違っていたのではないかと考えずにはいられない。


茜娘の話によると、獣人と小鳥遊との関係は概ね悪くはなかったと云う。

でもそれは表面的なものであり、内側ではかなり複雑だという事だ。

獣人は主に四つの種族に分けられていて、大型動物の特徴を持った熊獣人を中心とする種族。

小型動物の特徴を持った兎獣人を中心とする種族。

犬型動物の特徴を持った犬獣人を中心とする種族。

そして茜娘たち猫型動物の特徴を持った猫獣人を中心とする種族。

更にそれぞれ中でも種族が別れていて、獣人を一括りにしている小鳥遊以外の人間はおかしいと感じるそうだ。

小鳥遊と友好的なのは、主に熊獣人、犬獣人、兎獣人の三種だけで、他は敵対こそしてはいないが、どちらかというと小鳥遊の事は良く思っていない。

だからといって人間全体を嫌っているわけでもなく、概ね無関心であり、猫獣人はこれから仲良くなろうとしていた所だった。

ただ、今回の事で人間への不信感は強まったと言えるだろう。

俺たちと会った事で、『人間を一括りにして考えるのは間違いである』と認識してもらえたのは幸いだったな。

それにしてもこの複雑な獣人関係を聞くと、より多くの知識を得て、より多くの情報から物事を判断しないと駄目だと感じるよ。

日々の勉強と情報収集が大切である事を、改めて考えさせられた。


獣人王国牙に入ったこの日、俺が眠りにつく頃、神武王国では大聖の俺が捕らえた奴らと話をしていた。

思った通り結界の魔法を使ったのは小鳥遊の王族だった。

そいつの話によれば、今の小鳥遊王国は決して人間の国などではなく、獣人の一部の者に支配された傀儡国家だというのだ。

獣人たちはそれぞれの種族によってかなり特性や能力が違っていて、いくつかの種族が協力する事で手に負えない相手となるらしい。

パワーの熊獣人、知性の犬獣人、そして魔法が使えないと思っていた獣人の中に、魔法が使える種族も存在するとの事だった。

特化した能力を持つ獣人たちが種族の壁を越えて結託し、人間を支配し、そこから世界全体を我がものとする為に動いているという。

既に南の大陸では、小鳥遊が一部の獣人集落に対して金や食料を収めている。

利益を得ているのは熊獣人、犬獣人、そして兎獣人なのだそうだ。

そんな中で猫獣人は、自由で協調を知らない種族と認識されており、特に犬獣人は排除を画策していた。

いずれ敵になるかもしれない。

猫獣人の勢力は大きく、戦闘力も大型獣人族に次ぐもので、敵になれば厄介だ。

そんな時に獣人王国の話が人間界で出て来た。

ならば猫獣人の集落を王国にする事で、人間界のルールの上でリスクを取らずに排除ができると考えた。

戦争すればお互い甚大な被害が出るが、人間世界を味方に付けられたら被害も最小限で済むだろうと。

でもこれを考えた犬獣人は分かっているのかね。

人間は獣人を皆同じものと考えているのだよ。

獣人の代表国家が人間の町を壊滅させたとなれば、全ての獣人が人間に憎まれる事にもなりかねない。

何にしても現状は理解できた。

さてこの状況どうやって解決するか。

おそらく人間国家の半分は、獣人王国の仕業として対処しようとするだろう。

何故なら、獣人はまだまだ嫌われ差別される対象だからだ。

事実なんて関係ない。

どちらが自分たちにとって都合がいいかなんだ。

とりあえず証拠を出して事実を訴えるのは当然だけれど、何かが引っかかるな。

俺たちにできる事は、俺の目で記録されたすべてのシーンの映像の公開。

そして隠密行動部隊の隊長らしき奴が金魚に話したものの公開。

更に小鳥遊の王族が大聖に話した事。

最後の切り札は、俺のエアゴーレムで生きた島津第二の王様を演じ、全てを語る‥‥。

でもこれは事実関係を確認した訳ではないから、間違いを語ってしまう可能性がある。

嘘になる可能性はできるだけ避けた方がいいだろう。

後で辻褄が合わなくなれば、その時点で負ける可能性があるからな。

茜娘たち猫獣人と獣人王国を守る戦いは、朝にゆっくりと始まるのだった。


朝起きてから魔法通信ネットワークのニュースを確認すると、小鳥遊が島津領内へ入るのを禁止していた理由が公にされていた。

島津王国王都であるノーナルの町が何者かによって襲われ悲惨な状態となっている。

全ての人の出入りを制限したのは捜査の為だと説明した。

この時、この領地は三十七年前に島津に貸し与えたものであって、現在も小鳥遊の領地であると付け加えられた。

小鳥遊が捜査権を主張した形だな。

『つまり町を襲った犯人は、まだ島津領内、いえ、立ち入り禁止区域内にいるという事でしょうか?』

『分かりません。ただ、町の近くに海に通じる穴ができており、此処を通って逃げた可能性があります』

まずはあらゆる可能性を捨てず、小鳥遊も嘘は付かずにスタートしたか。

情報を出す順番やタイミングは間違ってはならない。

極端な事を言えば、仮に俺たちが持っている全ての情報を一気に出そうものなら『これだけの情報を持っているお前たちは何者だ?お前たちこそ犯人じゃないのか?』と責められる事にもなるだろう。

状況を見極め、みんなで相談して対応を決めるのだ。

「ここでこの穴が最近外から開けられたモノだと証拠を出せば、犯人は外から入ってきた者となる可能性が高いな。そしたら獣人が犯人だと見る人は少なくなりそうだ」

「海からの侵入を防ぐ結界は、元々防衛の為に作られていたみたいですからね。その代わり我々が疑われる可能性があります」

「まあでも俺たちである証拠は何もないし、俺たちを見た者はすべて捕らえてある。そのまま迷宮入りといった所か」

「だったらまずはそうした方がいいんだよ」

俺たちにほぼリスクはないし、金魚の言う通りかな。

「よし!金魚の意見を採用しよう。この穴は外から掘られて間もない穴である証拠映像を上げるぞ」

俺は自分で見たシーンを思い出し、使えそうな映像を探した。

流石に穴を開けている時の映像は駄目だろう。

穴を貫通させた時に舞い上がった土が、陸地側に少しだけ積もっている映像があった。

周りに掘った土が見当たらない映像と合わせれば、誰が見ても海側から穴を開けたと分かるだろう。

俺はそれに文字説明を加えて、捨て垢住民カードで魔法通信ネットワークへとアップした。

このアカウント、完全に謎の凄腕記者(カメラマン)扱いされているよな。

そしたらその後すぐに、伊集院が取り仕切る正式なニュースでも洞窟内の映像が公開された。

『確かに最近海側から開けられた形跡がある』

これはラッキーだな。

この映像にはそれ以外に、どうやって開けたか分かる部分がある。

俺は捨て垢でコメントを付け加えておいた。

『この映像から、穴を開けた方法も分かるんじゃないか?熱光線のような魔法と打撃武器辺りを使って開けたようだ』

これで獣人王国がやった可能性は限りなくゼロに近づいた。

なんせこんな魔法を使える猫獣人はいない。

「しかし伊集院の報道記者は何処にでも現れるんだな。まさかこの穴まで撮影に来てたのか」

「伊集院の報道記者は世界中全ての町にいるんだよ」

「となるとノーナルにもいた事になるな。そいつが何らかの形で被害を免れ、今ノーナル近辺で活動していると考えられる」

「そいつなら全てを知っているのではないのか?」

確かにな。

報道記者がこんな大事件に出くわせば、必ず真実を知りたくなるはずだ。

「そういう奴がいるとして、伊集院なら何を狙う?」

「伊集院なら小鳥遊が熊獣人たちに支配されている事にも気づいているかもしれません。だったら、小鳥遊の陰謀を公開して全てを潰しに来る可能性はあるでしょう」

「気づいてなければそのまま獣人王国の排除へと動くかの」

「いや、既にあの海からの穴を公開した時点で、全て気が付いていると考えた方がいいだろう。この後は伊集院に任せてもいいかもな」

既に獣人王国の排除ではない方向に動いている事になるからな。

それからしばらくして次のニュースは、小鳥遊から村人の言葉としての情報だった。

『朝、村の者たちが畑の作物を町へ納品に行っている。時間は八時半ごろだ。この時町は既に襲われた後で、そこでグレーのフードをかぶった獣人らしき者たちを見たとの事だ。この日の八時に獣人王国の王女一行が町に訪れる予定もあった。獣人が犯人の可能性が高い』

小鳥遊は予定通り獣人が犯人とする方向でやるみたいだな。

さて世間、或いは各国の王族貴族はこれにどう反応する?

ここで獣人が犯人という声が出なければ、その線は確実に消えるだろう。

しかし期待通りとはいかなかった。

「獣人が犯人と見る人間が多いな。それを期待している奴らがかなりいるという事か」

「私たちは何もしていないんだにゃ‥‥」

「分かっているよ」

ただ、知らないと疑いたくなるのも人間だ。

世界中みんなが茜娘と会って話ができれば、絶対にこういう結果にはならない。

「次のニュースが上がりましたね。今度も伊集院の正式なニュースです」

『七時四十分ごろ町を訪れた民が、既に町が悲惨な状態になっているのを確認している。そして前日の夜二十時ころにも町の城壁の外から、民の悲鳴を多数聞いたそうだ』

「あの時荷車を引いていた人か。村人にしては違和感があったが、町の人間の生き残りか。これも嘘ではない。ただ一人の証言が何処まで信じられるか」

流石に信じる声は少なかった。

だけど俺は、山の上からこれらの流れは見てきた。

その映像を公開すれば、全てが事実として認められ、獣人が犯人の線はほぼ消滅するのではないだろうか。

「ここでこちらの映像を出しておきますか。これらが事実として認められる可能性が高いです。それに映像を出した人が犯人だとも、もう思わないでしょう」

「そうだな。ここまでの情報を確定させよう」

そう思った時だった。

先に次の情報が上がってきた。

それはその民が町中(マチナカ)を記録した映像だった。

『七時四十分ごろの映像です。既に町中が惨憺たる状態です。時間は影の角度や大きさから計算すればハッキリするでしょう』

「先にやられたか。でもこれで獣人がやった可能性はほぼ消えたはずだ。前日から獣人たちが町に入っていた可能性もあるが、次の日に再び来る意味はない。それに獣人を確認した村人は獣人たちに襲われる事もなかった。それが答えだ」

「後は小鳥遊の陰謀へと持って行き、そして裏で操る獣人と獣人王国が別であると認識させられれば勝ちですね」

「裏で操る獣人たちだけが悪いとなれば、捕らえている奴らも解放できる。しばらくまた様子見だな」

俺たちは少し安心していた。

大切な事を見落として‥‥。

魔法通信ネットワーク上では、獣人王国が犯人という声はかなり減っていた。

それでも、また町に戻ってきた所など不自然な部分は全部怪しまれない為の工作だとして、獣人王国の仕業だと考える者は一定数残っていた。

「でもこれくらいなら、第一の目的はクリアかな」

「そうですね」

次は小鳥遊の陰謀であると分からせ、そして裏で操る獣人たちを公にし、獣人と獣人王国が別であると認識させる。

この三つがクリアされれば完全勝利。

最初の一つがクリアされるのは最低条件。

二つ目がクリアされた場合は、三つ目も確実にクリアしないと敗北。

どれもクリアできなければ、それも又敗北。

そして一番マズイのが‥‥。

「新しい情報があがってきたのじゃ。これはマズいのではないか?」

上がってきた情報、それは俺たちが山頂から町を見ている映像だった。

遠目で分かりにくいが、見栄えのするエルは割とハッキリと確認できるものだった。

『立ち入り禁止区域に冒険者か?早朝から町の様子を窺う理由は?』

「まさか、俺たちが撮影されていたのか」

「これはしてやられましたね」

「でもこれだけじゃわらわたちが犯人とは言えんじゃろ」

「確かにそうだがこっちも同じだ。俺たちを犯人にしたい者が多ければ犯人にされてしまう」

特に問題はエルだ。

俺は望遠鏡を覗いている所だから顔が分からない。

佐天は小さくてほぼ草の影だし、洋裁と金魚は後ろで休んでいた。

エルだけがハッキリと分かる。

この映像は伊集院の記者だな。

確実にエルを犯人にしようとしているのではないか。

「おそらくスバルに何らかの問題が出てくるでしょう。申し訳ないですが、わたくしを転移ゲートまで連れて行ってもらってもいいですか?」

「そうだな。大聖と一緒に行ってくれ。意思疎通が楽になる。それと俺たちは謎の凄腕記者チームで、エルの事はボディーガードに雇っていたという設定で行こう」

「わかりました。ではお願いします」

俺はスバルへの転移ゲートがある神武の屋敷の地下へとエルを瞬間移動させた。

さて少し長いが、山の上の俺たちが撮影されたのなら、こっちも撮影したものを公開するしかないだろう。

「この記者が疑われないなら、俺たちも記者という事で疑いを回避できる可能性がある。山頂から見た映像を全部出すぞ」

「何故もっと早く出さなかったのかと言われる可能性もありそうじゃの」

「大丈夫だ。記者は記事の出し時を考えるもんだからな」

俺は山頂から見た映像全てを公開した。

『俺たちは報道記者だ。山頂からの映像は全て公開しよう。此処までの話は全て事実だ。先ほどの映像を上げた記者は町の外から町中を確認して逃げた人かな?www』

ささやかな反撃だが、報道記者が自分の映像を公開されるのは嫌だろう。

お返しだ。

しかしあの時の違和感はこれだったんだろうな。

まさかあの距離で撮影されていたとは。

『それと、俺たちは誰が犯人なのか既に突き止めている。証言もある。状況からも証言通りだと確信している』

ただ確実な証拠だけがないんだよな。

現場を見たわけじゃないから。

「証言だけじゃ足りないんだよ。金魚に惚れていた奴の証言映像を出せば、普通に考えて俺たちの潔白は証明されるだろう。だけどそれで信じてもらえるかもう少し見極めないとな」

「あの伊集院の変な人。ちょっと気持ち悪かったんだよ」

そうだよな。

ああいう男をキモイっていうんだよな。

ん?伊集院?

「おい金魚!今伊集院って言ったか?あの男は伊集院の人間なのか?」

「た、多分そうなんだよ。伊集院のパーティーで見たんだよ。でも招待客かもしれないんだよ」

「そ、そうか‥‥」

もしそうなら何故伊集院?

今思えばかなりしらこい喋りだった。

裏で糸を引いていたのは伊集院か?

伊集院が小鳥遊を陥れる為?

その中でエルをターゲットにできそうだから変えようとした?

クッソ、いくら思考があっても別に頭が良くなる訳じゃないから分からんぞ。

大聖を神武に戻して話を聞きたい所だが、まあ話さないよな。

魔法通信ネットワーク上では、俺の上げた映像を見て、最初にやってくる隠密集団が怪しいという声が大きくなっていた。

それに合わせて小鳥遊が、その集団は自分たちとは関係がなく全く知らないとの声明をだした。

町を調べに来たのが小鳥遊なら、調査に来たと考えられる。

しかし違うとなれば最も怪しいのはこの集団となる。

ただ、犯人が何をしに戻ってきたのかという疑問は残るわけだが。

「こいつらが伊集院の隠密集団だと公表したらどうなるだろうな」

「そうと決まったわけじゃないからの。外すと説得力を失くすぞ?」

「それに情報戦ではかなわないんじゃない?悪い情報はすぐに削除されるだろうし、最悪本気でエルグランドを犯人にする為に動くかも‥‥」

転生前の世界でも、都合の悪い情報は即行BANするサイトがあったよな。

結局BANされた情報は広がらず潰されていた。

この世界唯一の情報サイトを伊集院が持っている以上、ここで伊集院を敵にできない。

もう既に検閲モードに入っている可能性もある。

「キモ男の話、アップしてみるか。アレの扱いで伊集院が関係するかどうかが分かるかもしれない」

仮に隠密集団が伊集院だとしても、伊集院に繋がる証拠は何もない。

でもこの映像を見て捕まっているかもしれないと考えれば、なるべく表には出したくないはずだ。

逆に隠密集団が小鳥遊であれば、そのままアップさせるだろう。

捕まっている奴からいずれ情報が出て、エルの潔白は証明される。

どちらにしても上げるしかないか。

伊集院だったら今後この捨て垢でニュースのアップは無理になるかもな。

俺はキモ男の話をそのまま魔法通信ネットワークへと上げた。

『何処で俺たちの計画が漏れた?島津第二王国を壊滅させ、その犯人を全て獣人たちに擦り付けるつもりだったが、お前たちでもいいかもな』

『このように、早朝町に入った奴らは我々記者に言っていた』

捕らえてある事は言わなくても分かるだろう。

どう出る伊集院。

俺が上げた映像は、そのまま魔法通信ネットワークへと上げられていた。

伊集院は止めなかった。

伊集院では無かったか‥‥。

となるとやはりこいつらは小鳥遊となる。

小鳥遊は嘘を言った事で疑われる事になるな。

これで犯人エル説は遠のいたが、さてどうする。

ここで終わらせて小鳥遊の陰謀で解決か?

それでは本当に悪い熊獣人たちは逃げおおせてしまう。

大聖が聞いた証言を上げるか?

俺が悩んでいる間に、小鳥遊自らメッセージを発信した。

『島津をやったのは我々だ。しかし我々は獣人たちに脅されてやったに過ぎない。熊獣人、犬獣人、兎獣人。こいつらは猫獣人の獣人王国を潰す為に我々にこのような事をさせたのだ。町の死体の映像を見よ。武器による殺害もあるが、多くは獣人たちの攻撃によるもの。それが証拠だ』

完全に暴露したな。

流石にこれ以上は隠せないと思ったか。

いや、これは小鳥遊王族のSOSだ。

とにかくこれで一応首謀者は小鳥遊であり熊獣人たちとなる。

さて此処まで来て人間たちは獣人に対してどのような裁決を下すのか。

全ての獣人を同罪とするのか。

それとも猫獣人や他の獣人は別と考えるのか。

それにこれを暴露した小鳥遊はどうなる?

傀儡となったのは小鳥遊上層部、つまり王やその周辺が支配されていたからだろう。

これを聞いて各地の騎士団は立ち上がるに違いない。

しばらく答えを出せずにいると、伊集院と有栖川、そして九頭竜も含めて共同声明が発せられた。

『後始末は当事者である小鳥遊に期待する。獣人王国牙は別と考えてこれからも王国を維持してもらいたい。人間は獣人と敵対する意思はない。最後に我々は平穏を期待している』

「なんだか分からないが、とりあえず期待通りの結果にはなったか」

一体どういう事だろうか。

これを機に一気に獣人全てを叩く可能性もあったと思うが、何故そうしなかった?

最後に『平穏を期待している』と言っていた。

こいつらそんな国だったか?

「とりあえず良かったんだよ」

「助かったのかにゃ?」

「うん‥‥でもこれからの所もある」

「そうだな。小鳥遊と悪い獣人たちとの戦いが始まる。そして小鳥遊は勝たないと駄目だし、その後島津第二王国の件も何かしら責任を取る必要があるだろう」

「それにわたくしは謎の記者仲間として晒されましたからね。今後身動きができなくなりました」

エルは大聖の瞬間移動魔法で送られてきていた。

「確かにな。今後も共に行動すれば仲間だと思われるだろう」

記者が悪い訳じゃないけれど、立入禁止区域に入っているのは弁解できない。

「そんなわけで、しばらくになるかずっとになるかは分かりませんが、わたくしはパーティーを抜けるしかなくなりました」

「変化できるアイテムを作る手もあるが?」

「とりあえず今は止めておきます。今回スバルに少し迷惑をかけてしまいましたからね」

「そっか‥‥」

これは仕方がないな。

それに今回はエルだけだったが、他のメンバーも一緒に行動している所は見られている。

町の出入り記録に関しては、確か博士に消すように頼んであったから調べられないと思うが、町の人たちは見ているからな。

「他は大丈夫か?エルと一緒にいる所は町々で見られているからな。おそらく一定数『謎の記者集団』として認識されている可能性もあるが」

「金魚は平気なんだよ。謎の記者集団パーティーも面白そうなんだよ」

「自分も島津を勘当されてるし‥‥誰にも迷惑かけない」

「わらわも問題なかろう。これからは積極的に記者をするのもありではないか」

「俺も姿を偽っているから問題ない」

「それでは抜けるのはわたくしだけですね。今まで皆さんありがとうございました」

立場がある身ってのは辛いな。

人間は他人としがらみができるほど自由ではなくなる。

人間社会で生きていく以上、本当の自由は存在しないのだ。

「じゃあ送るよ。どうせ頻繁に会う事にはなるとは思うけどな」

「そうですね。ではよろしくお願いします」

「またなんだよ!」

「じゃ‥‥」

「達者での」

「ありがとにゃ」

俺は瞬間移動魔法で転移ゲートまで送った。

「さて、俺たちは謎の記者集団だし、小鳥遊の様子を見に行くか。熊獣人にも会ってみたいからな」

「そうじゃの。小鳥遊に手を貸さねばならない可能もあるじゃろ」

「金魚は兎獣人に会いたいんだよ」

「私も一緒に行きたいんだにゃ」

「えっ?」

皆一斉に茜娘を見た。

こんな状況で流石に女王が俺たちと一緒に来ちゃまずいだろ?

「茜娘はこの国の女王だろ?流石に俺たちといたら国に迷惑にならないか?」

「大丈夫だにゃ。私の顔を知ってる人間はほとんどいないにゃ。私はお飾り女王なのにゃ。それに策也たちと一緒の方が楽しそうなのにゃ。行きたいのにゃー!」

駄々をこねる獣人王国の女王様か。

ちょっと可愛いじゃねぇかよ!

「じゃあいいか」

「そうなると思っておったわ」

「金魚は嬉しいんだよ」

さてしかし、エルが抜けて茜娘か。

パーティーは賑やかになるが、こりゃ子守りが大変そうだ。

そう思いつつも、俺は何故か顔がにやけるのだった。


今回の情報戦、もしも最初から全てを公開していたら、結果は同じだっただろうか。

情報を出している者が怪しまれ、結果はエルが犯人とされていた可能性もあっただろう。

情報には出し時もあれば、出す順番も大切なのだ。

謎の記者として認められなければ、俺たちの情報は単なる犯人の虚偽情報となっていた可能性が高い。

情報って本当に大切だね。

2024年10月7日 言葉を一部修正と追加

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