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見た目は一寸《チート》!中身は神《チート》!  作者: 秋華(秋山華道)
獣人編
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小鳥遊の能力と陰謀

島津家第二王国ができたのは泉黄歴二百二十五年の事。

当時の王に納得ができなかった弟が南の大陸へと渡り、小鳥遊に領主とされたのがきっかけだった。

その辺りの事情は公にはされていないが、元々その領地は島津へ貸し与えられたものだったらしい。

そこは伊集院が島津へと侵攻する二年前に正式に第二王国となった。

その後の結果はご存じの通り、一度第一王国はなくなり、王族は第二王国へと逃れる。

それが最近、伊集院と此花の領土返還によって第一王国が復活した。

それから一年。

今度は第二王国が襲撃を受けて壊滅する。


山の上で何者かに囲まれた俺たちは、一応警戒しつつも茜娘と話をしていた。

「茜娘はどうしてノーナルの町に来たんだ?」

「今夜は此処で交流パーティーの予定だったのにゃ。私たちは招待に応じてやってきたのにゃ」

「そうだったんだ。それにしちゃ来るのが早いな」

「本番は夜にゃんだけど、それまでも島津の民と交流会をする予定だったのにゃ。八時に来るようにいわれていたのにゃ」

時間通りに来たって事か。

つまり襲撃者は、茜娘たちがこの時間に町に来る事も分かっていた可能性が高い。

「あっ!仲間たちが小鳥遊の兵隊に取り囲まれてるにゃ。どういう事なんだにゃ?ちょっと聞いてくるにゃ!」

「あっ!おい!」

俺が確認する間もなく茜娘は飛び跳ねて山を下りて行った。

俺は望遠鏡で町を確認した。

いつの間にかやって来ていた兵隊に、フードの連中が取り囲まれている。

茜娘が言うには小鳥遊の兵隊のようだ。

「策也、いきなり動き出しました!」

「俺たちを取り囲んでいた者たちが、一斉にくるぞ!」

やっぱり茜娘がいたのが想定外だったか。

姿を現したのは、真っ先に町にきて確認していた連中だ。

しかし姿を現した所で隊長らしき者が皆を止めた。

「ちょっと待て!」

そいつを先頭に、他の者は後ろに控えるように集まった。

「殺気を持っていきなり襲い掛かってくると思いきや、どういう事なんだ?」

「お前に用はない。その後ろの青い髪の女性は、もしや兎束小麟じゃないのか?」

金魚が兎束だった頃の知り合いなのだろうか?

「ち、違うんだよ?私は金魚なんだよ!」

「やっぱり小麟か‥‥」

「なんでバレたんだよー!」

そりゃ知り合いならバレるだろ。

その萌えキャラとも言える独特の喋りはなかなか無いからな。

「どうしてあなたがこんな所に‥‥」

「特に意味はないんだよ。ちょっと冒険の旅をしているだけなんだよ」

「偶々ここに来たのか?」

「えっと‥‥洋裁さんの生まれ故郷を見に来たんだよ」

「ん?島津洋裁までいるのか!?」

こいつ金魚の知り合いっぽいが、洋裁の事も知っているようだな。

尤も二人とも元領主だし、知り合いでなくても知っていておかしくはないか。

「誰?自分はこんな人知らない‥‥」

「記憶喪失ってのは本当か。どっちにしても、これはますますこのまま逃がす訳にはいかないな。お前たちだろ?王の亡骸を持ち去ったのは」

「な、なんの事?知らないんだよ?」

金魚は嘘が下手だなぁ。

喋らせない方がいいけど、もう此処まで来たら今更だな。

「しらばっくれても遅い。探りに来たのは有栖川の命令か?何処で俺たちの計画が漏れた?島津第二王国を壊滅させ、その犯人を全て獣人たちに擦り付けるつもりだったが、お前たちでもいいかもな」

「金魚はそんな事しないんだよ」

割と金魚に喋らせておくのもアリか?

相手が全部勝手に喋ってくれているぞ。

つまりこんな感じか。

明るくなって一応町の状況を確認に来たら、あるはずの王の亡骸が無くなっていた。

しかし計画は変更できない。

だからこいつらはその亡骸を持ち去った犯人を捜していた。

そんな中獣人たちが町にやってくる。

町の悲惨な状況に獣人たちが戸惑っている所へ、村人がやってきてそれを目撃する。

当然犯人は獣人たちだと思う。

そこに偶々騎士団か騎士隊が居合わせて、獣人たちを捕らえるか抹殺する。

或いはもしかすると小鳥遊の者も今日の交流会に参加する予定だったのかもしれない。

それならある程度の騎士隊を連れてきても不思議じゃないからな。

「じゃあそろそろお別れの時間だ。兎束小麟、あんたの事は一目見た時から気に入っていたんだがな。残念だ」

「金魚はあなたの事なんて知らないだよ!」

知り合いじゃなくて完全な片思い、勝手に想っていたオッサンだったのかよ。

「じゃあな!」

隊長らしき男がそう言うと、俺たちは結界に包まれる。

これはなんだか知らないがヤバい!

俺は咄嗟にバクゥの目で時を止めた。

ギリギリ結界は完成していなかった。

俺は素早く結界の外に出てからバクゥの目を閉じた。

「この結界は魔力を封じる結界だ!もうお前たちはタダの人間。我らの攻撃から逃れる事はできない!」

「あっそ!」

俺は結界を外からぶち壊し、隊長らしき男も含め、皆を手刀で気絶させた。

「危なかったな。あの結界は俺でも対処が難しいぞ?完全に魔力を封じやがる」

「わらわの魔力が吸われたのじゃ。とんでもない能力じゃの」

「結界を張られる前に対処しないと駄目ですね。ただ分かっていれば対処も可能です」

「しかし対処しなければ同じだぞ?」

「誰だ?」

俺たちが振り返った時、既に俺たちは結界に包まれていた。

結界を張ったのはさっきの隊長じゃなかったのか?

「新手がいたようですね」

「してやられたわ。油断したのじゃ」

「だったら幽霊になって脱出するんだよ」

「金魚ナイス!」

「ほう。そんな風に結界から抜け出せるとはな。でも無駄だな。魂の結界!」

「出られないんだよ」

こいつ、こんな結界まで使えるのか。

これ魔法じゃないのか?

クッソ、能力の解析が間に合わない。

触って盗みたい所だな。

なんて思っている場合じゃないか。

この後どうするのか知らないけれど、今の俺たちじゃただの矢でも死ぬぞ。

仕方ない、アレを使うか。

これは魔法じゃないから使えるはず。

「深淵の闇」

俺は俺たちの真下に深淵の闇を作った。

何処に行くかは知らないが、多分俺の推測は当たっているはずだ。

そうして落ちた世界は、俺が見た事のある場所だった。

「はい正解!」

また来たよ精霊界!

「これは、精霊界じゃな」

「予想通りだったな。人間界に深淵の闇を作れば精霊界に通じる穴となる」

「此処から人間界には戻る方法があるんですか?」

「問題ない。通路はあるからな」

俺たちが最初に精霊界に来た時に通った蟻地獄。

あそこから戻れるのだよ。

「金魚がいない!」

「ありゃりゃ」

もしかして金魚、幽霊状態になってあそこに残ったのか。

まあでも幽霊状態なら殺される事はないだろう。

でも不安だな。

俺たちが戻るまで少し時間を要する。

直ぐになんとかするには‥‥。

「ああ、大聖を送ればいいじゃないか」

大聖の俺は瞬間移動で金魚を助けに行った。

状況は変わらず、結界内に金魚が捕らえられたままの状態だった。

しかしどうも金魚の様子がおかしい。

意識を失っているというか、完全に普通の幽霊だ。

とにかくこの男を倒してまずは結界から出そう。

俺は後ろから男に一撃を食らわせる。

男はアッサリと倒れ、結界は解かれた。

すると金魚は、フラフラと風船のように空へと上がって行った。

止まらない、どうなっているんだ?

追いかけるが幽霊じゃ止めようがない。

魂操作も試したが、大聖の魔力じゃ止めきれなかった。

蘇生を試してみるか?

いや、それは最後の手段だ。

本体の俺がようやく戻ってきたからな。

そんなわけでお待たせしました本人登場です。

精霊界の修復が進んでいて、穴がもう少しでふさがる所でビビったけれど、なんとか戻ってこられましたわ。

「魂の結界!」

そして戻って来てすぐに盗ませてもらったよ。

あらゆる結界を操る能力。

ただし十メートル四方の結界しか作れないけどな。

とりあえずこれで金魚が何処かへ飛んでいくのは阻止できた。

でも、さてこの金魚の状態、どうやったら元に戻るのか。

「蘇生しかないか?」

「幽霊能力を失くすかもしれんの」

「それは勿体ないな」

「ドレインの結界でこうなったのなら、逆をすればどうでしょう?」

「それだ!」

俺は盗んだバイク‥‥じゃなくて盗んだ能力を解析し、逆の効果が発動する結界を作って金魚を閉じ込めてみた。

すると金魚の目に光が戻ってきた。

「アレ?金魚どうしたんだよ?」

金魚は人間の姿へと戻った。

「金魚、良かった!」

洋裁が結界をぶち破り金魚を抱きしめると、金魚は『何がなんだか分からないけど嬉しい』みたいな顔をしていた。

とりあえず一件落着だな。

おそらく金魚は魔力を奪われ仮死化していたのだろう。

だから蘇生、或いは魔力供給で復活はできた。

魔力ドレインの結界は、魔力をゼロにできるわけではない。

いくら魔力を吸っても、みんな生きている間は少しずつ常に回復するわけで、でないと左手に収めた住民カードが外に出てくるはずだから。

回復力がチートの俺ならば、魔力消費の少ない魔法なら使えただろう。

しかし回復量の少ない金魚の場合は、幽霊状態になった事で仮死化したと考えられる。

そしてそれは、普通の幽霊と同様『死んでいる』という事だ。

そうすると金魚は、普通の幽霊と同じ行動をする。

完全に俺の憶測だが、幽霊ってのは死神みたいなものではないだろうか。

魂を成仏させる存在。

人間界で亡くなったら天界か魔界に行くと早乙女の本には書かれていた。

概ね魔界で魔物として生まれ変わる。

金魚は生まれ変わる場所へと連れて行かれそうになっていたのかもしれない。

「それにしても魔力ドレイン結界、厄介な能力じゃな。悪魔王サタンでも対処が難しいの」

「対処方法は確立しています。相手が結界を張るより先に、それよりも大きな結界で穴をあけておくのです」

「ん~‥‥よく分からないんだよ」

「そうですね。この結界は十メートル四方くらいの大きさですよね。だったら自分を別の一辺が二十メートルある結界に入れておけば、結界ごと結界で包む事はできなくなります」

「なるほどのぉ」

先に結界が有れば、その部分だけは結界が張れない。

とはいえいつも結界を張って警戒するのも難しいよな。

まあ今回の戦いで対処方法は見つかったし、少しの間なら対応が可能だ。

能力は盗ませてもらったし、解析もできたからね。

「さてこいつらどうするかな」

「それよりもあの茜娘という獣人はどうしたのじゃ?」

そういえば‥‥。

俺は町の方を望遠鏡で見てみた。

既に誰の姿もなかった。

捕まったのか?

いくら茜娘が強くても、あの結界に捕まればヤバいだろう。

身体能力の強さはあるけど、結局それ以上の強さは魔力に頼る所がある。

獣人は魔法に使用できる魔力がほとんど無いと聞く。

しかしそれは、身体強化する為に体内で魔力が使われているからだ。

だから魔力が封じられれば、その辺の獣と同レベル。

やはり矢でも殺られてしまうのだ。

それに先ほど盗んだ能力には、もう一つ『魔力ドレインの拘束』ってのがあって、それを付けられれば完全に手錠を付けられたただの獣人になる。

俺もドレインの手枷足枷なんかは使えるが、このドレインの拘束は、魔力ドレインの結界内でも効果があるのが特徴だ。

というか結界内にいる人に使う為の能力だね。

これで敵を無傷で捕らえるのに有効なコンボが完成する。

この能力を使うこいつら、おそらく小鳥遊の王族だろう。

ならば茜娘は‥‥。

「こいつらに捕まってしまったと考えられるな。助けてやるか」

「なかなかいい奴そうじゃったからの」

あのモフモフは尊いからな。

俺は異次元収納から魔力制御の首輪を必要な数取り出して付けていった。

「全部で十三人か。また神武国の抑留者が増えるな」

大聖の俺は十三人を連れて神武国へと瞬間移動した。

「じゃあみんな、茜娘を探すぞ」

「ちょっと待ってください。魔力が一度枯渇して回復が間に合っていません」

「そうだったな。ならば金魚以外にも魔力供給の結界だ!」

と言っても俺の魔力もまだ全快ではないんだけどな。

いくら俺がチート回復でも、流石に魔力量の多い奴を全快にはできない。

「佐天の魔力は全快にはできないわ」

「大丈夫じゃ。これだけ回復すれば問題ない」

「悪いな」

「探す方角は北から東に限定できるかと思います」

「そうだな。では俺たちは北へ向かおう。東側は霧島に探させる」

俺はそう言いながら妖精霧島を召喚した。

「では急ぐのじゃ」

「おう!」

俺たちは山頂から飛び立ち、空から連れ去られたであろう茜娘を探すのだった。


空からの捜索で、檻を積んだ馬車が五分ほどで見つかった。

どうやら誰かを待っているようだった。

「あの王族の帰りを待っていたみたいだな。助けるぞ!」

俺はすぐに霧島を戻して、みんなで馬車を強襲した。

そしてアッサリと制圧した。

「大した能力者はいなかったな。茜娘、今出してやるぞ」

「策也!ありがとうだにゃ」

俺は檻を壊そうと檻に触れた。

「ん?これは‥‥」

魔法で作られた永続の檻で、魔力ドレインの効果を持っている。

この魔法は捕らえた王族の奴は持っていなかった。

となるとこの中に使える奴がいるのか?

俺は檻を破壊してから、倒れた奴らを一人ずつ触っていった。

すると思った通り、一番身なりのいい貴族らしき奴が魔力ドレインの檻を作る魔法を持っていた。

この魔法はいいただきます。

これは魔力ドレインの結界よりも構築に時間を要するが、永続するのが強力だ。

俺は魔法をコピーして自分のものとした。

そして早速使って新たな檻を作り、倒れている奴らをぶち込んでいった。

「この檻、割と魔力を食うな。流石に疲れたぞ」

ちょっと魔力を使い過ぎだ。

でもこれくらいした方が成長期には魔力量が増える。

トレーニングだと思えばどうって事はないね。

「また多く捕らえましたね。今度は全部で百人はいますよ」

「神武国で飼うのも限界があるよな」

犯罪者が多い国って一体どうしているのだろうか。

全く頭が痛いよ。

「とはいえ一旦は身柄を預かるしかないか。神武王国にも地下魔法実験場は作っていたな。檻はあるしこれをこのまま送ろう」

俺は瞬間移動魔法で檻を送っていった。

魔力使い過ぎだって。

ほとんど魔力がゼロに近くなった。

一日二回も魔力枯渇を味わうとは思っていなかったな。

おそらく初めてだ。

でも大丈夫。

俺の回復力はちぃと常識外れなのよ。

もう既にそこそこは回復しているのだ。

「それで茜娘はこれからどうするんだ?おそらくこれから小鳥遊の奴らに『ノーナルの町を襲ったのは獣人王国の奴らだ』って喧伝されるぞ。何か反論を考えないと」

「どうしたらいいのかにゃ。戦うのは得意だけど頭を使うのは苦手なんだにゃ」

獣人がみんなこんなんじゃないよね?

だとしたら、こいつが女王って完全に間違ってるだろ。

なんか作為的なものを感じるなぁ。

おそらく小鳥遊は、島津第二王国を襲撃する所まで考えて獣人王国を作った気がする。

そしてそこには多分色々な事情もあるのだろう。

最初この領地は島津へ貸した借地だったという話もあるし、伊集院の戦争に合わせて正式に島津領になった辺りも怪しい。

去年伊集院から島津へ領土返還があったわけで、その直後だというのも当然引っかかる。

小鳥遊からすれば、貸したものは返せよって事なのかもな。

でも、だからと言って町の住民も含めて皆殺しにするのを正当化はできない。

「お仕置きが必要だな」

「にゃんですとぉー!」

「いや、茜娘の事じゃないよ」

「よ、良かったにゃ」

「とりあえず、今日は疲れたし移動用の家で休もう。茜娘の従者たちは悪いがその馬車の荷台とかでな。つか茜娘、お前らメシはどうしてたんだ?」

「住民カードのアイテム保存で二十日分は持ってきてたにゃ」

つまり住民カードのアイテム保存は、全ての枠をメシに使っているのね。

まあメシが有れば生きて行けるからそうなるか。

「少し場所を移動するぞ。ここじゃ目立ちすぎるから、林の方まで移動しよう」

こうして俺たちは、とりあえずこの日は休むのだった。

2024年10月7日 言葉を一部修正

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