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見た目は一寸《チート》!中身は神《チート》!  作者: 秋華(秋山華道)
お助け編
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九頭竜の陰謀!六龍の襲撃!

独裁国家を駄目とするのは、転生前の世界では当たり前だった。

でもその独裁者が君主として素晴らしい人だったらどうなるだろう。

その国は民主主義国家よりも圧倒的に良い国となる。

だったら、常に良い君主を生み出せる独裁国家が築けたら、それは民主主義よりも素晴らしいわけだ。

日本の江戸時代は、割とそれに近かったのだろう。

世界一の識字率を持ち、芸術文化が大きく花開いた。

平和ボケして残念ながら全てが良かったとは言えないが、国造りの参考になる時代だったと俺は思う。

徳川家が世襲で国を動かしてきた辺り、もう少し有能な人間を自由に選ぶ事ができていたら、それは理想の形だったかもしれない。

俺は神武国をそんな国にしようと思っている訳だが、俺の構想の前提条件はこの世界でないとあり得ないんだよね。

君主が永遠の命を持ち、有能で腐らない事。

それでもそれが可能かもしれないこの世界だから、俺は気張らずチャレンジしてみたいと思う。

でも結構くじけそうな事もあるよ。

色々な人が暮らせば当然問題も起こるし、実際神武国などで受け入れた住民の一部は問題を起こしている。

一応警備隊やら防衛隊やらは充実しているから鎮圧はできるんだけれど、問題を起こさないってのは無理なんだよな。

そして更に厄介なのは、理想の国家を築こうとしても他国が必ず邪魔をしてくる。

それを阻止する為に予算も人も必要になってくるし、理想の世界を築くのに最も必要な事は、まずは世界統一なのかもしれないな。


秘密組織から皇へ魔力蝙蝠の魔石を提供するようになって、九頭竜が色々と動き始めていた。

セバスチャンの諜報機関が得た情報によると、『空にある魔法通信ネットワークのアクセスポイント』の事や『秘密組織』について調べまわっているらしい。

今の所住民カードの発行に必要な魔石の事だけが問題だが、準備が整ってくれば皇は魔法通信ネットワークの構築にも携わっていく事になる。

今までは独占できていた市場に、老舗企業が復活してくるのだから、九頭竜にしたらたまったものではないだろう。

それに通信情報も既にメールでは盗めなくなってきており、盗んだ情報を売る商売もままならない。

個人の活動状況や金の動きなどはまだまだ盗まれるわけだから、利益が一気に無くなる訳ではないけれど、このまま行くと国力は皇に抜かれて四位に落ちる可能性が高かった。

そんな状況の中でセバスチャンから入ってきた情報は、聞き流せないものだった。

『近々九頭竜は本気で皇か神武に対して何かを仕掛けてくるようです。皇帝の暗殺、天王や大聖の暗殺、神武国へのテロ攻撃などが考えられます』

『そうか。引き続き九頭竜の動向には注意しておいてくれ』

『御意』

全く、これじゃのんびり旅も続けられやしない。

フノワルカの町を出てからここ一ヶ月近くは、町を転々としながらただひたすら魔物を狩る旅が続いていた。

魔物の多い地域もようやく終わり、やっとのんびりとした旅ができると思っていたのにな。

俺は一応弥栄にメールをしておいた。

「九頭竜が皇帝の暗殺を企んでいるという情報アリ。気を付けた方がいいよ!っと」

まあ皇国は大国だしおそらく問題はないだろう。

うちの東征もかなり強いし、大聖もほぼ無敵の体だし、一番警戒すべきは町へのテロ攻撃か。

町に入ってくる者たちへの監視は強化が必要だな。

「エルの所は大丈夫なのか?」

「そうですね。スバルはそもそも神武国設立までの流れを作った国ですから、かなり警戒していますよ。わたくしは一度スバルに戻ろうかと考えていますがよろしいですか?」

「別に構わないぞ。この旅は自由参加だし、それに今はのんびり旅を続けられる状況じゃないからな」

「ならばわたくしも戻りますわ。皆さんと旅をさせていただけてとても楽しかった。話してませんでしたけど、わたくし夫と喧嘩して家を出て来ておりましたの。でもこうして仲良くしてくださる方々ができて、わたくし気づきました。自分が本当に我がままだった事に」

やっぱり別れたわけじゃなかったのね。

別れていたらエルと一緒に旅なんて難しいもんな。

多分夫はエルと親戚なんだし。

それに苗字もそのままっておかしいし。

「そうか。また何時でも戻って来ていいからな」

「夫と喧嘩したら御厄介になりにきますわ」

おそらくもう酷い喧嘩はないだろう。

ベルは俺たちと旅をして多少大人になったしな。

「では策也、わたくしたち二人を何処か転移ゲートのある所まで送ってもらっていいですか?」

「そうだな。ここから近い所だと神武国か」

「あれ?イバカリにも転移ゲートを作られましたよね?」

「あれは維持管理が難しいから取り壊したぞ」

転移ゲートは維持管理の為に結構な魔力を必要とし、大量に人を運ぶために作ったイバカリの転移ゲートでは維持するのが難しかった。

俺や妖精たちの力があってなんとか沢山の人を運ぶ事ができたけれど、俺がいなくなれば維持なんてできなかった。

普通一般的に公開された転移ゲートは、その維持管理の難しさもあって莫大な使用料金を徴収しなければ運用できない。

だからほとんど世界には存在しない。

そんなわけで王族や貴族が独占的に使うものしか概ね存在しないのが実情だ。

ちなみにオーガ王国に設置した難民オーガを集める為の転移ゲートも、一旦廃止した後小規模のものを再設置してある。

「だったら直接送ってもらえますか?」

「オッケー」

俺はエルとベルをスバルの町の近くへと瞬間移動魔法で送った。

「あのー‥‥金魚たちもちょっとの間、やりたい事があるというか、時間が欲しいんだよ」

「うん‥‥自分と二人で‥‥イチャイチャしたいというか‥‥」

「洋裁さんハッキリ言い過ぎなんだよ!」

大丈夫だよ金魚。

もうバレバレだから。

「そうか。結婚が決まったら何かプレゼントするからな。家でもマジックアイテムでも作ってやるぞ」

「じゃあ一生遊んで暮らせる金のなる木とか‥‥」

洋裁よ、流石にそれは男としてどうなんだ?

「結婚‥‥でも金魚、もう死んでるんだよ。幽霊なんだよ」

「あ‥‥言い忘れてたけどな、金魚は死んでないぞ?単純に幽霊になる能力を得ただけだ」

「ほら。やっぱり死んでないじゃん‥‥自分も多分そうだと思ってたんだよね」

「そうなんですか?」

「ああ。死んでたら蘇生魔法で生き返ってるはずだろ?それに握手して金魚の能力をコピーしたじゃん。おばけにしか幽霊になる能力があるわけないだろ?」

「金魚‥‥ずっと死んだと思ってたんだよ。生きてて良かったんだよー!わーん!」

金魚は洋裁に抱き着いて泣き出した。

死にたいと言っていた金魚。

死んで喜んでいた金魚。

でも今は生きていて良かったと言う。

それだけでなんか一緒に旅をしてきて良かったと思うよ。

全部洋裁のおかげだけど。

「それでお前たち、何処に行きたいんだ?送ってほしけりゃ送るが」

「ちょっとこのまま来た道を戻ろうと思うんだ‥‥ゲバイタの町の魚とか気になるし」

「そうか。じゃあまた何かあったら連絡をくれ」

「了解なんだよ!九頭竜の件が落ち着いて旅を再開する時は戻ってくるんだよ」

「おう」

こうして洋裁と金魚も一時パーティーから離れていった。

「佐天と二人になっちまったな」

「そうじゃの。じゃったらわらわもいい機会じゃ。ペンギンたちに会いに行ってもいいかの」

ペンギンたち。

それは佐天の部下である魔物悪魔たちの事だ。

現在は神武国で特別治安維持部隊として町のゆるキャラをやっている。

子供たちにも人気で以前のような問題はまるでない。

「それはみんな喜ぶだろう。だったらオトロシイの町の中で九頭竜が何かをしでかした時は対応頼むな。佐天がいてくれると安心だ」

「うむ。承ったぞ」

佐天がオトロシイにいれば、大聖は領地内の村も見て回れるな。

しかし広い領地を持っている王様たちは、どうやって領地全体を守るのかねぇ。

おそらくほとんどは軽く騎士隊を置く程度なんだろうな。

伊集院ですら魔王に町を二つも壊滅させられてるんだから。

「じゃあ一緒に行くか。俺もこの町にいたところで仕方がないからな。一旦ホームにでも戻るわ」

「そうじゃ。こんな時くらいは嫁の元に戻るべきじゃしの」

あれ?そういう事かな。

旅をせずにずっとこのヨコウの町にいるくらいなら、ホームに戻った方が良いとみんな気を利かせてくれたのかもしれない。

そんなわけで俺は、佐天を神武国に送ってからみゆきのいるホームへと戻るのだった。


ホームに戻った後も、九頭竜のきな臭い動きは続いていた。

俺は各国から集まる情報をまとめて状況を整理していた。

「策也?状況はどんな感じ?全くこんな時に九頭竜ったらいい迷惑だわ」

「リンか‥‥本当に。動きが多すぎて標的が絞れないな。或いは色々な所で一斉に何かをする可能性もある」

リンはかなりお腹が大きくなっていた。

あと一週間から二週間以内には子供が産まれるとのことだ。

そんな時期に九頭竜が嫌な動きを見せているわけで、このナンデスカの町でも何かが起こる可能性はゼロではなかった。

此花、特にリンは神武国との繋がりが疑われているだろうからね。

そういう意味ではこの時期俺がホームに戻ってきたのは正解だろう。

何かが有れば守ってやれる。

尤も、みゆきも資幣もいるから不要だとは思うけどね。

「ここ最近この町に新しく入ってきた人は全部で百八十七名だったわ。その中でまとまって入ってきたのが旅芸人の一座ね」

「それは一応監視だな。人手が足りないなら言ってくれ。セバスチャンの忍者部隊を使うから」

「助かるわ。九頭竜が本気になったら私じゃ対応できないわよ」

リンがもしも本当に狙われるような事があれば、それはきっと俺の責任だ。

あの時旅に連れて行かなければ、リンが九頭竜に目を付けられる可能性なんてゼロだからな。

今もまだ可能性の段階だし、おそらくは大丈夫だと思うけどね。

今は俺との接触も無いと見られているだろうし。

なんせあの時の俺は黒死鳥王国にいる事になっているからな。

それにリンは一応世界を救った英雄になっている。

そう簡単には手を出せないだろう。

「じゃあセバスチャンに要請しておこう」

「それにしても策也、あんた身長少し伸びたわよね」

「そうだな。呪いが解けて半年か。自分ではあまり分からないんだけどな」

そしてみゆきは俺よりも伸びている感じがする。

子供の頃は女の子の方が成長が早いからな。

「それじゃまた何かあったら報告にくるわ」

「おう。お大事にな。あまり無理するなよ」

「分かってるわ。ありがと」

さて、情報の確認だ。

随時情報ってのは更新されていくからな。

情報確認はもちろん捨て垢住民カードである。

どんなニュースを検索し調べたのかは全部九頭竜に盗まれているだろうからな。

そしてアクセスポイントは宇宙に浮かぶ人工衛星だ。

もしもこの町からアクセスがあると分かったら、この捨て垢を使う奴が此花にいるとバレるわけで。

そしたらこのカードを使う奴は此花の関係者ではないかと疑われかねない。

転生者として情報戦では負けられないのだよ。

おっと今出たばかりの新しい情報があるな。

伊集院が出している正式な情報か。

えっと、皇のニュース‥‥。

「まさかだよな‥‥皇はこうも脆いのか‥‥」

ニュース内容は、皇の皇帝が暗殺されたというものだった。

つまり亡くなったのは、みゆきの父親だ。

ニュースになるって事は、蘇生もできなかったのだろう。

分かっていたのに何故止められなかった弥栄よ。

俺はすぐに弥栄へとメールを出そうとした。

「おっと此処で浦野策也のカードは使えないな」

現在はなるべく浦野策也とリンの繋がりは隠していく方向だ。

此処で発信はできない。

ちなみにカードの所在地は、発信しなくても受信で見つけられる可能性もある。

それを防ぐ為には、カードを左手や異次元収納から出さないようにしないといけない。

収納されている間は、留守番電話サービスに保存されているような感じだからね。

俺は一度神武国へ移動してから弥栄へ連絡を入れておいた。

『皇帝が暗殺されたというのは本当なのか?他に被害はないのか?止められなかったのか?犯人は誰だか分かるのか?今後大丈夫なのか?』

質問ばかりになってしまったが、俺はとにかく心配だった。

皇も、みことも、そしてみゆきがこれを知って辛い思いをする事も。

返事は割と早くに返ってきた。

おそらく予想していたのだろう。

『暗殺されたのは事実です。犯人は分かりませんが、おそらく九頭竜の者でしょう。でも安心してください。みこと様は無事です。皇もこの程度で揺らぐ国ではありません。すぐに皇太子が皇帝となります。国家体制もこういう時の備えは万全ですから』

そうか、万全か。

皇の国家体制は他とは違う。

唯一の皇帝だからね。

皇国内には四つの王族が統治する国がある。

源氏王国、平家王国、豊臣王国、徳川王国だ。

そして皇家は、その四つの王国の王を任命する権利を有している。

王が亡くなったり引退した際、最もふさわしい者を皇の皇帝が指名するのだ。

こうして皇領内は最高の王たちによって統治されるわけで、国土が狭い割に国力が世界の四位となっているのも頷けるし、民から悪い噂も聞こえてこない。

だから確かに皇帝が亡くなった所で、国家が揺らぐような事はないのだろう。

いやむしろ、みゆきという不確定要素がある中では、皇帝の交代は安定をもたらすとも言える。

事実上皇家の継承は男系のみになっているが、女性が駄目だとわざわざ規定されてはいない。

規定する必要もなかったからだ。

もしもみゆきが生きているとなれば、継承順位が二位とされる可能性があった。

しかし今回皇太子が皇帝になる事で、みゆきに継承順位が与えられたとしても三位となる。

皇太子には既に男子が二人おり、その二人が一位と二位になるからだ。

まさかそれを狙ってわざと暗殺させた?

そんな事は流石にありえないか。

あり得なかったとしても、そういう考えがもしもあったら、守りが手薄になった可能性もある。

なんにしてもみゆきの父は亡くなったのだ。

俺はとにかくそれが残念で悔しかった。

みゆきが学園から戻って来てから、俺はその事を話した。

「大丈夫だよ。わたしお父さんの事全く覚えてないから」

そんな風にいって笑っていたけれど、心の中で泣いているのが俺には分かった。

本当になんとかできなかったのだろうか。

自分の守りたいものを誰かに託さなければならなかった状況が悔しかった。


皇帝が崩御し、継承の儀式が一週間後に行われる事が正式に決定していた。

その日は各国の代表が皇国を訪れる事になる。

皇国はこういう時の為に、決められた者だけが決められた日にだけ使える転移ゲートを多数持っていた。

流石に皇国といったところか。

此花からも王が自ら皇国へ行く事が決定していた。

三日前には、ほとんどの国の王や王子などが皇国へと入っていた。

これだけの面子が一堂に会することはこの時以外にはほぼあり得ないと思われる。

世界会議もリモートだし、誰が代表として出ているのかさえも分からない。

でも今回は実際に会って多くの代表と話すチャンスとなるわけで、早くから集まってくるのも当然といえた。

そしておそらく九頭竜は、こうなる事を分かっていて皇帝を暗殺したのだ。

九頭竜がやったという証拠はないが、そこまで分かっていたら、この状況を狙っていた可能性は十分にある。

例えばこのタイミングで皇国内でテロを起こし、皇国の力の無さを世界に訴えるとか。

或いは国王不在のどこかの国で事を起こすなんてのも考えられる。

今回エルフ王国のレガシィや、神武国の東征も呼ばれており、この辺りで何かしでかす可能性も十分あり得るだろう。

何かしてくる可能性は高いが、何をしてくるのか絞る事はできなかった。

だから俺は秘密基地へと移動し、あらゆる情報や連絡を最速で受けられるように準備していた。

こういう時の為に俺の管轄する場所は概ね転移ゲートで繋いである。

各地にいる仲間にも瞬時に連絡できる体制を整えていた。

そしてその日の夜、最初の連絡は海神からのテレパシーだった。

『黒死鳥の島に大量のドラゴンが向かって来ています。数は千体や二千体どころではないですね。それよりもはるかに多そうです。素通りして皇へ向かう感じには見えません。狙いはどうやら黒死鳥王国かと』

その直後に新しいニュースが魔法通信ネットワークに上がってきた。

『黒龍、氷龍、爆龍、翼竜、雷龍、光龍の六龍同盟は、黒死鳥王国へ宣戦布告する。理由はドラゴンとして、黒死鳥に負けたままでは許されないからだ』

理由はくだらない。

つまりどうでもいいのだ。

負けたというのはおそらく、テイムされた炎龍が環奈に負けたあの戦いの事だろう。

本当ならそのような事を、他種のドラゴンが気にするものでもないはずだ。

あくまで口実に過ぎない。

尤もこういう可能性を考えて、あの時正式な国を持たない黒死鳥の環奈を選んだんだけどな。

結局国を作ったらこうなるのか。

このタイミングで黒死鳥王国を襲うのには理由があるだろう。

九頭竜の脅しか、或いはこのままの勢いでやれる所までやるつもりかもしれない。

ただ言えるのは、六龍が揃ってでてきておりほぼ必勝態勢だという事だ。

負けるつもりはない。

九頭竜は本気だ。

ただし戦争をしかけているのはあくまでそれぞれのドラゴン王国。

負けても何とでも逃げられる。

しかしまさか黒死鳥王国が狙いだったとはな。

尤も九頭竜のそもそもの狙いを考えれば当たり前の標的かもしれない。

ずっと狙いは皇の三種の神器なのだから。

そしてその前に倒しやすそうな黒死鳥王国が有れば、さっさとそれをやってしまおうと考えても不思議じゃない。

それに黒死鳥王国は秘密組織による魔法通信ネットワークが構築されていて、秘密組織との繋がりがあると見られているだろう。

実際にこうなってみれば、当然の選択か。

でも黒死鳥王国は重要な場所だ。

おそらく海神たちに任せても大丈夫だとは思うが、忍者部隊と傭兵隊も連れていくかな。

「自分も行きましょうか?」

「セバスチャンは此処で新たな情報が出てこないか見ていてくれ。それに今回の戦いは多分誰かに撮影され報道されるだろう。セバスチャンの事はあまり表に出したくないからな」

「分かりました」

尤も、本当なら海神や青い三連星も表には出したくないんだけどな。

さて俺もそのままの格好で行くのはマズいよな。

俺が二人で戦う事になってしまう。

もう一度は変化してしまったわけだし、浦野策也も姿を変えるべきか。

かといってすぐにはイメージできないよな。

できるとしたら、既にエアゴーレムで行動した事のある姿。

俺は一度オリハルコンボールへと変化した。

そしてオリハルコンのまま人の姿へと変わった。

「今存在しないのはセーラー服の環奈くらいなんだよな」

女の姿ってのはちょっとしっくりこないが、これがこいつの最後の戦いにして華々しく引退してやるか。

「じゃあセバスチャン、後は頼んだ」

俺はそう言ってから黒死鳥王国上空まで瞬間移動した。

この場所は大聖で一度来ているから瞬間移動できちゃうんだよね。

「主、どうしますか?」

「海神か。よく俺だと分かったな」

「当然です。私を倒した人を間違える事などあり得ません」

「そうか。襲い掛かってくるなら全部倒す。島には結界を張っておくが、島を攻撃する者も全部倒す。皇へ向かおうとする者も全部倒す。つまり全部倒すしかないな」

「分かりました。海梨、海菜、海穂、全部倒していいと許可が出た。好きに暴れていいぞ」

好きに暴れられても困るが、まあ青い三連星なら大丈夫だよね。

「主の前です。優雅に倒しますよ」

「やりますよー!ドラゴンなんて敵になりません!」

「うん。戦うよ!」

青い三連星の三人はそう言うと、クラーケンの姿へと変化し海へと飛び込んだ。

「私は右側の敵をやります」

「ああ。今回の敵と数だと手を抜くのも難しいが、できるだけ目立たないように戦ってくれ」

「分かりました」

「ではわしは左側じゃのぉ」

「おっ!環奈か。久しぶりだな。爺さん姿だけど」

「ふむ。策也殿はどうしてその姿になっとるんじゃ?」

「流石にこの場に俺が二人もいたらおかしいだろ?それで変化を考えたんだが、すぐにできそうなのがこの姿しかなかったんだ」

「環奈が二人じゃのぉ」

「女の環奈は今日で華々しく散らせるつもりだ。どうせもう女にはならないんだろ?」

「そうじゃのぉ。子供もできてしもうたし、女ではハーレムも楽しめんからのぉ」

相変わらずの環奈だな。

「じゃあとりあえず環奈と、俺の連れて来た戦闘員は左側だ。みんなが討ち漏らしたのを俺が此処で処理する事にする。そろそろ来るぞ!」

海神や環奈たちは左右へと散っていった。

ドラゴンは確かに強い。

テイムされているだろうから更に強いだろう。

でもこのメンツならいくら数が多かろうと負ける気がしないな。

さあかかってこい。

俺は景気づけに一発、オウムビームを放ってやった。

魔物の能力をコピーする能力で、黒死鳥を相手にした時にコピーしておいたんだよね。

「こりゃ爽快だ」

俺の魔力でオウムビームを放てば、本当に敵を薙ぎ払えてしまうよ。

あまり使うとなんか虐待しているみたいだし、とりあえず俺は討ち漏らしを狩るのと魂集めに専念だな。

こうして俺たちの黒死鳥王国防衛戦が始まった。

海神は流石に俺に匹敵する魔力を持った神と云われる存在。

ドラゴンが少々集まった所で敵ではなさそうだ。

でもあまり目立つなよ。

クラーケンたちも楽勝ではあるが、敵の数が多い分討ち漏らしも多少あった。

環奈たちは割と苦戦していた。

環奈は大丈夫なんだけど、戦闘員はレベル的にほぼ互角の相手だからね。

ただ体は丈夫なアダマンタイト製だったりするから、そうそう負ける事はない。

戦闘員が時間を稼ぐ間に環奈が斬っていく、そんな戦いでなんとか敵を減らしていた。

戦闘員は何人かやられる可能性があるな。

魂はしっかり回収してやらんとな。

体はいくらでも替えが効くから安心して死んでこい。

俺たちはやってくるドラゴンたちをただ倒し続けた。

戦いは一時間ほど続いた。

此処まで回収した魂は既に二千を超えてる。

かなり回収漏れもあるから、実際は五千近く狩っただろうか。

味方の戦闘員も、忍者部隊員を二名、傭兵隊員を三名回収していた。

流石にドラゴン相手では被害ゼロとはいかなかった。

それでも勝負はそろそろつくだろう。

ドラゴンが種族ごとに順次撤退を開始した。

「さて最後の仕上げだ」

俺はシャインドラゴンに向かって行った。

何体かのドラゴンがブレスで攻撃してきた。

セーラー服の環奈、今までありがとう。

華々しく散らせてやるぜ。

俺はシャインドラゴンにわざとやられた。

正確には体をブレスによって消失させられたように見せただけだが、これで誰もが環奈は此処で殺られたと思うだろう。

環奈、お疲れ様。

溶けたオリハルコンは海に落ち、海の底で再び集まって俺は元の姿へと戻った。

そして海神にテレパシー通信を送る。

『後は海神任せた』

『はい。お任せを』

俺は瞬間移動魔法で秘密基地へと戻った。


ドラゴンによる黒死鳥王国襲撃があってから三日後、皇国では予定通り継承の儀式が行われた。

九頭竜の者も何食わぬ顔で参加していたようで、おそらく一旦は落ち着くだろう。

だけど六龍の宣戦布告は、色々な問題を残した。

魔物の王国を認めて良かったのか。

認めるにしても条件が必要だったのではないか。

何処かの王国によって管理が必要なのではないか。

何かあった時の対処はどうするのか。

ただ今回は皇帝の継承の儀式があったという事で、六龍の襲撃は不問に付された。

襲撃を受けた黒死鳥王国に全く被害が出なかったしね。

逆に黒死鳥王国は、その防衛力を評価される事になった。

魔法通信ネットワークのニュースでも、環奈爺さんの評価は高かった。

『摂政自ら最前線に立ち大活躍』とか、『黒死鳥の環奈も強かった』とかね。

俺が演じたセーラー服の環奈についても記事が一つだけあった。

『英雄此花麟堂と共に戦った環奈は、黒死鳥王国を守る為に散って行った』

これでセーラー服の環奈とはお別れた。

少し名残惜しいが、環奈は環奈だけだからな。

他に海神やクラーケン三姉妹の記事もあった。

『勇者パーティーの荷物持ちが実は最強だった?』って、もういいんだけどね。

更に『どうして此花を離れて黒死鳥王国へ行ったのか?』みたいな記事もあったけど、その中に『此花策也の住民カードが別に存在する事から、木花咲耶は名前を借りていた偽物だったのではないか?』と書かれていたりもした。

それはそれでそう思われるのもいいだろう。

海神は元々此花の人間ではなく、此花麟堂と一緒に旅をするにあたって、此花策也の名前を借りていたわけだ。

王族の方が何かと便利だからね。

魔王退治の助っ人冒険者だったとでもしておけばいい。

そう思われた方が、何時か俺が此花策也としてみゆきと一緒に暮らす時に問題が生じない。

今後はこの線でプロパガンダ情報を発信していくかな。

さて、そろそろ旅に戻る予定だし、今後の浦野策也の容姿をどうするか決めないとな。

とうとう海神が大々的な活躍をしてしまった事だし、もう俺は自分の姿で町を歩くのも避けた方がいいだろう。

成長するまで本当の自分とはお別れだ。

そんなわけでこれからの自分の姿を考えるに、とりあえず大聖の姿から少しずつ変えていくか。

俺は一旦大聖の姿へと変化する。

この身長だと今までとのギャップが大きすぎるな。

子供に見られない程度に、身長はなるべく低くするか。

体を小さくして、身長を百六十センチにまで縮めた。

「これ以上オリハルコンの体を圧縮するのは無理か」

次に髪だが、大聖との違いを付ける為にやや長めにし、色は青光りする黒にした。

競走馬的に言えば青毛だ。

黒すぎる黒と考えてもらえればいい。

これでもまだ大聖っぽさが残るので、少し女の子っぽくしてみよう。

「ちょっと環奈に似てきたか?」

でもこれなら大聖には見えないし、セーラー服の環奈とも違う。

邪眼と千里眼を使っても目の色が変わらないように、色は濃いピンクに固定しよう。

「こんなもんか」

なんだかあの【推してる子】にちょっと似てしまったな。

それを少し男に近づけたような感じか。

まあいいだろう。

「セバスチャン!今後はこの姿で行動するぞ!名前も改めた方がいいな。そうだな‥‥『天照策也』にしよう。住民カードは妖精王国で発行するから、番号が決まってから俺を知る仲間たちにこの姿とカード番号を一斉に伝えておいてくれ」

「分かりましたが‥‥なかなか可愛い男の娘ですね」

「やっぱりそうか?でも一応男に見えるならいいだろ。割としっくりきてるしな」

「しっくりきているならそれが一番です」

「じゃあ俺は‥‥」

旅に戻る前にもう一度みゆきに会わないとな。

いや、今は『みゆきが』寂しいだろうし、もうしばらくは一緒にいてやった方がいいだろう。

「もう少しの間ホームにいるわ」

こうして俺は、もうしばらくみゆきのいるホームで過ごす事にした。

そんな中、二月一日にリンの子供が無事産まれた。

産まれたのはなかなか将来が有望そうな男子だった。

みゆきも自分に弟ができたように喜んでいた。

これで父親が亡くなった事を少しは忘れられるかな。

リンが子供を産んでくれた事に感謝だな。

そして出産おめでとう。

2024年10月6日 言葉を一部修正と追加

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