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見た目は一寸《チート》!中身は神《チート》!  作者: 秋華(秋山華道)
お助け編
72/184

子供だらけの黒死鳥の里

憎しみは憎しみを生むだけだ。

だから憎しみの連鎖は何処かで止めなければならない。

しかし憎しみを消す事は難しく、我慢するのもそれはそれで不幸だ。

一度大きな憎しみが生まれてしまったら、きっと行きつく所まで行くしかないのだろう。

お互いにとってそれが不幸だったとしても。


始まりは些細なボタンの掛け違いだったかもしれない。

しかしそれは次第に大きくなって、もう戻れない所まできてしまっていたようだ。

イバカリの町を出て、俺たちは『フノワルカ』の町を目指していた。

特に何もなさそうな普通の町のようで、ゲバイタの町を出る時に確認したところ基本情報だけしか見つけられなかった。

「情報を確認したのは一ヶ月近く前だし、もう一度町の情報を確認しておくか」

俺たちは現在移動用の家で食事休憩をしていた。

明日にはフノワルカの町に到着するだろうと思われる所まできていたので、町の情報を再確認する事にした。

まさかイバカリで長く滞在するとは思っていなかったからね。

「何やら新しい情報がありそうじゃの」

俺の捨て垢住民カードによって映し出される映像には、フノワルカの情報がいくつか並んでいた。

「前に確認した時には全然なかったのに、この一ヶ月近くの間に色々と町であったようですね」

映し出された情報は全てニュースだった。

とりあえず最新のを確認する。

するとそこには、正直信じられない、いや信じたくない情報が書かれていた。

『フノワルカ領主、騎士団を要請し黒死鳥の里を完全に殲滅すると発表』

「どういう事だ?黒死鳥と何かあったのか?」

俺はその前のニュースを確認した。

『フノワルカの町が黒死鳥に襲われ三千人以上が死亡』

「これは昨日のニュースのようですね」

俺は更にニュースをさかのぼった。

『騎士隊が見事に仇をとった!黒死鳥三体を討ち倒す』

更に俺は前のを見た。

『町の外に黒死鳥が現れ、商人五人が殺害される』

このニュースが最初だった。

「何が始まりかは知らぬが、お互い報復し合っているようじゃの」

「こういうのは何処かで止めないとエスカレートするばかりですね」

「憎しみが憎しみを呼ぶ」

これは止めた方がいい。

でももう三千人以上が殺された後ではどうにもならないだろう。

何故こんなニュースに俺の分身や諜報機関が気づけなかった?

最新のニュース以外にはローカルの文字があった。

なるほど、昨日までのニュースは大きく取り上げられていなかったのか。

それにしても一体、何がどうなってこんな事になるんだ?

代替わりがあって黒死鳥が出てきていたのだろうか。

「なんにしてもこれは四十八願と黒死鳥の里の戦争ですわね。どっちが勝っても大きな被害が出ますわ」

「ああ。こうなる前になんとかできなかったのか。ここまで人が殺されたらどうにもならない」

人が三千人以上殺されたのは今日のニュース。

つまり昨日か、それ以前には殺されていたという事だ。

今から行って蘇生も間に合わない。

オーガとの戦争を止めた時のようにはいかないな。

「とりあえず現状を確認しにいくんだよ」

金魚のくせになかなか冷静な判断だな。

まずは何がどうなって此処まで酷くなったのか。

騎士団は何時出動するのか。

情報を全て確認してからだ。

「よし。準備ができたらすぐにフノワルカへ行く。食ってるもんはさっさと片づけるぞ」

止められるものなら止めなければ。

いや、もう止めるのは無理だろう。

だったら何か最低限の被害で決着のつく方法を考えなければ。

環奈や国士と友人で無ければ、黒死鳥を退治して終わりだったんだろうな。

俺はこの事を海神へとテレパシー通信で伝えた。

一応環奈にも伝えておいた方がいいだろう。

そして最悪、俺が黒死鳥の里を壊滅させる。

どれくらいの規模の里かは知らないけれど、大きな里なら逆に騎士団の全滅だってあり得るからな。

準備ができた俺たちは、空を飛んで全速力でフノワルカへと向かった。


十分もしないうちに、空からフノワルカの町が見えてきた。

思っていた以上に町には傷跡が残っていた。

「これは‥‥もう駄目だな」

「環奈には申し訳ないですが、ヒューマンとしては黒死鳥の里を壊滅させる以外に収める手立てはないでしょう」

「町の人たちの憎しみを感じるんだよ」

金魚に憎しみを感じる力があったのかどうかは置いといて、間違いなく町の人たちは黒死鳥に対して最大の憎しみを持ってしまった事だろう。

一旦地上に降りてから町に近づいていくと、騎士隊らしき武装集団が町の入り口を固めていた。

「お前たちは‥‥旅の冒険者か?」

「そうですね。ニュースでこの町の事を知って、助けられる事はないかと見に来ました」

「だったら分かっていると思うが、相手は黒死鳥だ。並みの冒険者では何もできないぞ?」

「わたくしたちは並みの冒険者ではありませんわ。素直にお話してくださって良くってよ」

ベルよ相変わらずだな。

お前がいうと逆効果になるんだよ。

「あの!一体何があったのか詳しく話してほしいのです。これ以上被害を大きくしたくないんだよ」

金魚は一生懸命に訴えていた。

流石にこうやって真剣に言われたら話そうという気になるかな。

「おい‥‥この人たちって‥‥」

「もしかしてアレか?」

「ウニ十字結社とか?」

金魚の言葉が届いたのかどうかは分からないが、どうやら武装集団の人たちは俺たちの事を聞いているようで、少し態度が変わった。

「あなた方はウニ十字結社の方々ですか?」

「まあそうですね」

「ゲバイタやイバカリの町での活躍は聞いています。ありがとうございました。えっとこの町の状況について詳しく知りたいという事でしたよね。お話しますのであちらの騎士隊テントの方までいらしてください」

「分かりました」

俺たちは町の防壁門を入って直ぐの所にあるテントへと案内された。

防壁門は一部が完全に破壊されており、住民カードの確認はできないようだった。

テントに入ると、隊長と思われる人も含め何人かから話を聞かせてもらった。

内容は概ねニュースにあった通りだった。

ただ、商人が五人殺害されるまでにも少し問題が起こっていたという。

まず、ソロ活動している中級冒険者が、薬草採取から帰ってこないという事があった。

それから三日後、冒険者ギルドにその妻が捜索を依頼。

四人の冒険者パーティーが捜索に出たのだが、これもその日帰ってはこなかった。

そして次の日に、商人が五人黒死鳥によって殺害されたという事だった。

可能性として考えられるのは、捜索に出た冒険者パーティーが、黒死鳥と遭遇しトラブルを起こしたという事。

尤も相手は黒死鳥だから、遭遇自体が問題となる。

中級冒険者が薬草採取に行ったのは、普段はあまり人が立ち入らない場所だったという。

薬草採取は本来初級冒険者の仕事だ。

しかし薬草が不足していて、少し危険な場所まで足を運ばなければならなくなっていた。

「ここでうっかり黒死鳥と出会ってしまった可能性もあるな」

俺たちは町を出ていた。

やらなければならない事は既に決まっていた。

「探して見つかる魔獣でもないんですけれどね」

エルの言う通り、黒死鳥との遭遇率はドラゴンよりも圧倒的に低いと云われている。

その理由が、里や巣の在り方だ。

ドラゴンは山の上に普通に巣や里を築くが、黒死鳥は意識阻害と結界の魔法を駆使して見つからないように隠している。

環奈が住んでいた里なんて、普通はまず見つけられない。

空の上にしか入口が無いのだから、その時点で人間が探して見つけられるレベルではないのだ。

それに代替わりでもない限り、黒死鳥が里から出て人のいる所に来る事なんてまずありえない。

「とにかくどういう事か見に行くしかないな」

「確認するしかないですからね」

「黒死鳥側にも何か言い分があるかもしれんからの」

佐天の言う通りだが、だからといってもうこの状態だとやるべき事に大きな差はでないだろう。

黒死鳥を全員殺すか、実行犯だけ殺すかの違いだけだ。

そして実行犯だけを殺す間に、そうでない者もきっと襲い掛かってくる。

その場にいなくても後日襲い掛かってくるだろう。

結果は同じだ。

俺は状況を海神に伝え、環奈に一言謝っておいた。


俺たちは中級冒険者が薬草を採取しにいったという森へと入っていった。

するとアッサリと黒死鳥の里への入り口らしきものが見つかった。

いくら俺が邪眼と千里眼をもっているからといって、これほど簡単に見つかるのは問題がある。

入り口は普通に地上に存在し、この場所に来れば誰でも分かるようなものだった。

「簡単に見つかるからといって黒死鳥が悪いとは言えないが、これじゃ遅かれ早かれ問題になるな」

「どういう事でしょうね。黒死鳥の里は見つからないのが当たり前のはずですが」

「悪意があったのかもしれんの。人間が入ってくるのを誘っておるようにも感じる」

確かに佐天の言う通りにも感じるが、俺はそう思いたくなかった。

「これはきっとアレなんだよ。ここの里の子はみんな子供で上手く里が作れなかったんだよ」

「それは‥‥流石に‥‥いや。金魚が言うんだから可能性はあると思う‥‥」

洋裁ですら金魚の意見には否定的か。

でもどういう訳か、俺にはそれが正解に思えた。

「とにかく中に入って確かめよう」

俺たちは中へと入って行った。

中もここまでの森とあまり変わらないようだった。

里というよりは、森の一部を里と決めただけのような感じだ。

これじゃうっかり人が入ってしまったとしても、此処が黒死鳥の里だとは気が付かないだろう。

俺たちは更に奥へと入っていった。

するといきなり黒死鳥が三体、襲い掛かって来た。

俺は結界を張って黒死鳥の言葉で声を上げた。

「『待て!話がしたい!』」

しかし黒死鳥は攻撃を止めなかった。

「『話がしたいだって?何言ってるんだこいつ。人間の言葉なんて聞くわけないだろ?』」

俺の張った結界に、黒死鳥は何度も攻撃してきた。

「『待てと言ってるだろ!』」

俺は軽く電撃を放った。

すると一体の黒死鳥が動きを止める。

「『くそっ!何しやがった?!動けない』」

スタンガンで動きを一時的に止めさせてもらったんだよ。

「『話を聞けよ。俺は人間の言葉なんて喋ってないぞ?お前らに合わせて黒死鳥の言葉で話してるだろうが』」

「『あっ、本当だ。もしかしてお前、仲間なのか?』」

「『仲間ではないな。そして人間だ。でもとりあえず話をさせろよ』」

しかし黒死鳥たちは聞かなかった。

「『騙されるな!人間は敵だ!』」

こいつら駄目だ。

環奈のいた里とは根本的に何かが違う。

そうなんだ。

金魚の言った通りみんな子供なんだ。

そしておそらく、鯉を食べていない。

鯉を食べて五十歳をこえる歳であっても、人間に会えば襲い掛かる黒死鳥だ。

そうでなければ話すらできなくて当然か。

冷静に見れば、どの黒死鳥も可奈より魔力も図体も小さい。

確か可奈がギリギリ五十歳をこえる歳だったから、おそらくみんなはそれ以下なのだ。

「これじゃ駄目だな」

「話ができれば逃がして上げる事もできたかもしれないんですけれどね」

「可能性はほぼゼロじゃったがの」

俺は妖糸で黒死鳥を攻撃した。

一瞬にして三体の黒死鳥の首が体から離れ、切り口から血が噴き出した。

「残りも同じようなら全部狩っていくぞ」

俺は魂を回収しつつ、里の奥へと進んだ。


結局、どの黒死鳥も話にならず、全てを殺してしまう事になった。

「死体はこのままにしておこう。後は夏芽に報告を入れておけば、この一件は解決だ」

魔物なんて此処まで嫌というほど狩ってきたが、やっぱり何か後味の悪い狩りとなった。

さてしかし、このまま嫌な気分を引きずる俺ではないのだ。

パーティーメンバーもきっと予想していただろう。

俺は殺した黒死鳥二百八体全てを蘇生してやるのだ。

といっても黒死鳥としてではない。

何時もの通り俺がコントロールできる蘇生ゴーレムとしてだ。

俺は早速魂を一人ずつ確認していった。

するとどういう訳だろうか。

なんとなくだが、二百八体中二百七体は普通に蘇生しても全く問題がないように感じたのだ。

そこで俺は弱い奴から順に、この人間界、炎龍王国の地下にある魔法実験場にて普通に蘇生していく事にした。

「まずはこいつからだな」

蘇生すると、その姿はやはり思った通り人間の子供となった。

俺は次から次へと蘇生していった。

どれもこれもみんな子供だ。

蘇生した子供たちの相手は、家族の家で仕事を任せている『家郷(イエサト)』家の者たちにさせた。

家郷家は、家郷に苗字を変更した、依瑠、安藤、愛神、杏奈の四人の蘇生ゴーレムたちの事ね。

俺は家郷ファミリーとも呼んでいる。

蘇生した者たちは多少年齢差はありそうだけれど、見た目がだいたい三歳から十歳くらいまでの子供で、大人に見えるのも十数人いたが二十歳そこそこに見える女性ばかりだった。

「やっぱり金魚の言った通りだったな」

そんな気はしていたが、今また少しやるせない気持ちになった。

まあでもこうやって蘇生するのだからいいだろう。

俺は自分を納得させた。

こいつらは環奈に預けるべきだな。

そうすりゃ環奈は一気に沢山の子持ちだ。

実の子も来年生まれてくるのだろうが、その前に予行演習もいいだろう。

ちょっと数が多すぎるけどな。

ただ、最後に一つだけ蘇生をしていない魂が残った。

かなりの魔力を持っていて、環奈ほどではないにしても強い魂だ。

おそらくこの里のボスだろう。

俺たちにとってこの程度の力なら問題にならないから気にせず狩ったけれど、こうして冷静に見るとこの魂だけは特別だと感じる。

確認の為にスマホに憑依させた時の喋りから、子供だとは思うんだよな。

他もそうだけどこれから成長する可能性があって、特にこの魂は期待できるって事だろうか。

こいつは大物になるに違いない。

そして普通に蘇生したら、いずれ人間に歯向かってくるだろう。

でも蘇生ゴーレムとしてなら、扱いにくいかもしれないけれどいい戦力になる。

俺は異次元収納から霧島のゴーレムを取り出した。

俺が最も長く、最も多く、俺の魂を憑依させて使ってきたものだ。

今は妖精霧島をそのまま使う事も多くなったし、変化だってできるようになったから使う必要性も減ってきていた。

だったら顔を少しだけ変えて、この体で蘇生させてみよう。

髪は少しだけ整えて、色はあのアニメキャラと同じ青紫っぽくしてみるか。

結構似て来たしグラサンもかけさせたりして。

「よし!我ながら素晴らしい出来だ」

俺は意気揚々と残る最後の魂を元霧島ゴーレムに蘇生した。

目が開いた。

起き上がった。

自分が人間の姿である事に驚いた。

「なんじゃこりゃー!」

声を上げた。

「一度死んで生まれ変わった気分はどうだ?」

「なんだよこの体。人間じゃねぇかよ!」

「そうだな。でもダイヤモンドミスリルで作ってあるから人間とは違うぞ」

「うおおお!!マジか!?つかなんで人間で大人なんだよ!?」

一々元気で五月蠅い奴だな。

「そりゃその体は成長しないからな。お前が何時か成長した時に合わせてあるんだ」

適当だけどね。

「クッソ!敵にまさか蘇生されるとは。でも復讐ができるぜ!死ねー!」

いきなり俺に襲い掛かってきた。

でもその体には細工がしてあるんだよね。

俺に手が届く前にそいつは笑いもがき苦しんだ。

「うーひゃひゃひゃひゃーぐるぢぃー!死ぬ!こそばゆい!止めろ!なんだよこれ!」

「俺に逆らおうとしたらくすぐり攻撃がお前を襲うようになっている。割と辛いだろ?」

「クッソ!子供扱いしやがって。うひゃひゃひゃひゃー!」

これだけやられてもまだまだ余裕そうだな。

「せっかく生き返らせてやったんだ。他の黒死鳥の仲間と一緒に人間のように生きてみるのはどうだ?」

「なんだと!?黒死鳥が人間と一緒に生きるだと?」

「そうだ。元黒死鳥の王とか、王として生まれた黒死鳥とかいるんだが、みんな俺の友達だ。お前の仲間だったヤツもみんな人間として蘇生してやったぞ。騙されたと思って人間やってみなって」

「それは騙されろという事か?」

なかなか騙されない奴だな。

「お前何歳なんだ?」

「俺か?俺は七歳になったばかりだ。だからこの体はおかしいだろうが!」

割とそこにこだわるのね。

「それで名前は?」

「名前だと?俺は新王だ!」

「新王だと?駄目だ却下!お前の名前は俺が決めるからな」

「なんでだ!新王だぞ?黒死鳥の中で特別とされる新王だ!」

特別とされる?

確かに特別感はあったからな。

「なんだその新王ってのは?」

「聞いて驚け!群れの王がやられた後、みんなから力を分けてもらって王に選ばれた存在。それが新王だ!」

それは聞いた事がないな。

「それの何処に驚けと?」

「新王は普通の王よりも強くなる事が多いんだ。みんなから力を分けてもらえるからな」

「つまり他力本願ってやつか。格好悪いな」

つまり二百七体の黒死鳥からパワーを貰っているのだろうか。

だったら結構強くなりそうだ。

「恰好悪くねぇよ!訂正しろ!」

「はいはい、格好いい格好いい(棒)」

「くぅー!なんか納得いかねぇ!」

「納得しようとしまいとお前の名前は俺が今決めた。これからはお前の名前を『黒鳥飛島(クロトリトビシマ)』とする」

「なんだその名前?黒い鳥が飛んで何処の島に行くんだ?」

こいつそこまで理解しているのかよ。

バカな子供でも黒死鳥、侮れないな。

「人間界には黒死鳥の王国があるんだ。その国は島国でな。その島まで飛んで行ってもらうぞ」

俺がそういうと、今までが嘘のように飛島は落ち着いた。

「えっ?‥‥黒死鳥の王国があるのか?」

「あああるぞ。人間と黒死鳥、いずれ共存できるようにと作られた人間が認めた国だ。今はまだまだ共存は無理だけどな。そこの王や摂政はさっき話した俺の友達だ。一度黒死鳥同士話をしてみたらどうだ?」

今までツッパッて来たヤンキーが、いきなり人の優しさに触れて感動しているようだな。

割と可愛い所もあるじゃないか。

「なんだと!何故俺が王じゃない!俺を王にしろ!」

可愛い所はなかったようだ。

「まあ戦って勝てたら王になれるんじゃないか?」

「本当か!?だったら今すぐ行って俺の国にしてやる。そしてゆくゆくは世界制覇だ!うひゃひゃひゃひゃー!なんでいきなりあははははー!くすぐるんだよ!」

「世界制覇とか言うからだろ?できっこないけど」

「はぁー‥‥はぁー‥‥はぁー‥‥。分かった。とりあえずその国の王に会わせてくれ」

とりあえずなんとかなるか。

しばらくはいうこと聞かなそうだけどな。

あれ?意識の共有ができる?

飛島は監視が必要だからテレパシー通信と監視の魔法は付与しておいたが、セバスチャンと同じように視覚や聴覚なんかも共有できてしまうようだ。

おそらく俺の分身として使い続けてきた体だからだろうが、こいつとも実は俺、割と波長が合うのかもしれないな。

「依瑠!こいつも連れて黒死鳥王国の環奈の所に行ってくれ」

「分かりました。では飛島さん。行きましょう」

「えっ?お、おう‥‥」

やけに素直だな。

七歳のガキでも、やっぱり黒死鳥。

綺麗なお姉さんには弱いようですな。

さてこれで全てが片付いた、よな?

つか、正直飛島のにぎやかさには少し救われたかもな。

なんとなくスッキリしなかった気持ちも、今は割と晴れやかだった。

更にこの一時間後、俺は海神からある報告を受けて更にいい気分になった。

飛島たちのやられた王というのが国士の親であり、国士がいなくなった事で飛島が新王となったという話だった。

魔界の扉から国士がこちらに来てしまい、追いかけて来た黒死鳥の若い群れが飛島たちだったんだね。

つまり国士が見つかれば飛島は新王にはなれないわけで、国士を王と認める事になった。

なんだかんだ全てが丸く収まってしまったわけだ。

いやぁめでたしめでたし。

2024年10月6日 言葉を一部修正

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