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見た目は一寸《チート》!中身は神《チート》!  作者: 秋華(秋山華道)
お助け編
67/184

魔物がやってくる町

環境破壊が問題とされる昨今。

しかしただ自然を守れば良いだけでもない。

ダムだって時には必要だし、増えすぎれば減らさなければならないものもある。

なんでもバランスが大切なんだよね。


越えられない山を下りて行くと、岩山は徐々に草木の生える場所へと変わっていった。

するとやはりそこにはいる。

沢山の魔物が俺たちに襲い掛かって来た。

「この辺りは魔物がクッソ多いな!魔界の扉が開かれてた時に勝るとも劣らない数だ」

「本当に異常なくらいですね。生態系に組み込まれている魔物だとしたら、この辺りは食料となる獣や植物が豊富なのでしょう」

この辺りに魔界の扉がもしもあったとしたなら、愛洲が放置するとも思えない。

ダンジョンでもないから魔生の魔石でもないだろうし、まして暗黒界の影響はあり得ないだろう。

となるとやはり生態系に組み込まれている魔物となるわけで。

「数を減らした所でこれだけ増える場所なら、またすぐに増えるんだろうな」

「さほど強い魔物でもないからの。倒して行ってもいいが面倒じゃの」

「わたくし、先ほどドラゴンと戦ったばかりですわよ。かよわき女性なのですしもっと労わって欲しいですわ」

「金魚も沢山の相手は得意じゃないんだよ。早く山を下りたいんだよ」

「皆さん意見は一致しているみたいですね。では魔物はできるだけ無視して早く山を下りる方向でいきましょうか」

「賛成!」

そんなわけで俺たちは、邪魔をする魔物だけを倒して山を下りる事を優先した。

それでも結構な時間を要した。

そもそも高い山で森も広いからね。

少し景色が変わる所に来た時には、陽は少し傾き始めていた。

「この辺りまでくれば魔物もだいぶ減ってきたな」

「それでも結構いるんだよ。小さいけど既に町が見えているのにおかしいんだよ」

「そういえばそうだな。町の近くに魔物が出る所もあるにはあるが‥‥」

この辺りは奥の森とは少し違っていて、確かに魔物は少なくなってきている。

「なるほどな」

俺はすぐに理由が分かった。

この世界にも転生前の世界と同じような問題はあるんだな。

「どうしますか?このまま山を下りると町の近くに魔物を連れて行く事になりそうですが?」

「倒しても無駄だとは思うが、一応倒せるだけ倒していくか。魔物を連れて来たとか言われるのも敵わないからな」

「早く町に入って美味い物が食いたいんじゃがの。即行で片づけるぞ」

「やれやれですわ。美女を酷使しないでほしいですわ」

みんな不満を口にしながらも、魔物を引き連れて行かない程度に倒しつつ町へと向かうのだった。

しかしその行動は、町の防壁門の近くまで続いた。

「町の入り口近くまで魔物がいやがる」

「商人さんや貴族の馬車も襲われそうなんだよ」

俺たちは急いで魔物に襲われそうになっている人々を助けに行った。

ただ俺たちが駆け付けた時には、それほど強い魔物でもなかったようで、町から出て来た警備兵たちが魔物を先に倒していた。

荷物を積む商人の馬車も、貴族が乗っているであろう馬車も、何事もなかったかのように普通に町へと入っていく。

どうやらこれが日常なのだろう。

ただ警備兵は疲れた様子で、肩を落として町の中へと戻って行った。

魔物が町の傍にまでくる町か。

これだと田畑や牧場が魔物に襲われ、やっていけないのではないだろうか。

警備兵のあの様子を見るに、日中はずっと見回りをしているのだと思われる。

でも他国の町の事だ。

俺は考えないようにした。

「町に入ろう。とりあえず美味いもんを食うぞ」

「それが一番なのじゃ!昨日今日と疲れたのじゃ」

「そうですね。ゆっくりしましょう」

「人間の姿になると体重が重く感じられるんだよ」

「みんなだらしがないですわね。わたくしはまだ余裕ですわよ」

そういうベルも、足が思うように前にでていないみたいだ。

俺たちはとにかく町へと入った。

町に入れば大抵そこには冒険者ギルドがある。

中には飲み屋も当然あって食事もできた。

俺たちはとにかく食べまくった。

ただ、少し値段が他の町より高いのが気にはなっていた。

それでも俺たちは遠慮なく注文し、好きな物をお腹いっぱい食べた。

「ふぅ~‥‥とりあえず腹いっぱい食ったわけだが‥‥」

「そうですね。なんとなく嫌な視線が気になりますね」

「コソコソと話しておるの。わらわには聞こえておるのじゃがな」

「どうやら今、この町で食材は貴重なようだな」

周りの奴らが俺たちを見ていた理由。

それはどうやら俺たちが遠慮なく食事をしている事にあった。

想像するに、魔物が出るから思うように食材が調達できない状況にあるのだろう。

徐々に食事代は高くなり、俺たちがコレだけ食えば更に値段が上がるのは必至。

大丈夫だよ。

俺たち明日にはこの町を出ていくからな。

そう思ってテーブルを立とうとした時だった。

ギルド関係者と思われる人物が声を上げた。

「冒険者の皆さま!現在防壁門外に魔物が沢山現れています。もうすぐ今日一番の荷馬車が町に到着予定で、これを襲われると、明日の食材が十分確保できなくなります。予算の都合上討伐報酬はあまり出せませんが、是非魔物討伐にご協力をお願いします」

それを聞いた冒険者の一部は、文句を言いながらゆっくりと動き始めた。

「またかよ」

「もう別の町に行った方がいいかもな」

「飯も高いし報酬は安いし、旅の冒険者は遠慮なくガツガツ食べるし」

俺たちへの不満を口にする者もいた。

当然こういう事を言われれば即座に反応するヤツがうちにはいるわけで。

「それはわたくしたちの事ですの?ちゃんとお金は払っていますのよ!それにそういう事情があるのなら最初に言えば済む話じゃありませんの?」

「店としては旅の者にはこの町を満喫してもらいたいって思う所もあるからな。でも俺たち冒険者には関係ねぇんだよ。食材が減れば明日の食事の値段が上がって困るのは俺たちなんだ!」

「だからってわたくしたちに文句を言うのはお門違いじゃありませんか!」

喧嘩になりそうな所に、ギルド職員が間に割って入って来た。

「すみませんが喧嘩は止めてください。この町の冒険者は皆気が立っているんです。旅の冒険者の方々には申し訳ないですが、今はそれどころじゃありません。それにできれば協力していただけると助かります」

「冒険者にはルールがあるだろ!『町の危機には冒険者はできるだけ冒険者ギルドの要請に従わなければならない』ってな。さっさと手伝いやがれ」

そうなんだよな。

このルールがあるから伊集院はこの世界最大の権力国家と見られているわけで。

しかも定職を持たない者は基本的に冒険者とされる事になっている。

無職は皆、冒険者ギルドに所属する日雇い労働者というわけだ。

尤も、俺たちは王族だったり貴族だったりするから、本当ならただの冒険者ではないので要請に従う義務はない。

でも俺、今は此花策也じゃなく浦野策也で町に入ってるから、ただの冒険者なんだよな。

「しゃーない。手伝ってやるか」

「わたくしも手伝いますよ。従う義務はないですが」

「わらわは従わないと駄目なんじゃよな」

「金魚も従わないと駄目なんだよ。冒険者なんだし仕方がないんだよ」

「わたくしは一応エルグランド様と同じ王族ですから~」

「ほらさっさと行くぞ」

「待ってくださいですわ~」

俺たちは冒険者ギルドを出て町の外へと向かった。


景色が赤く色づき、そろそろ陽が沈もうとしていた。

魔物はどちらかというと暗い所を好む傾向の種が多い。

これから更に増えたりするのだろうか。

だとするならば、町を守る警備兵は大変だろう。

幸いこの辺りに空を飛ぶ魔物はいないみたいだから、防壁がしっかりと役割を果たしてくれてはいる。

でも攻撃を何度も繰り返されれば、いずれ壊される可能性もあるわけで放置もできない。

「今日くらいは楽させてやるか」

俺は妖糸で一気に魔物を斬り刻んでいった。

「エルと佐天はとにかく魔物を殺ってくれ。金魚は他の冒険者が殺られないようサポート。ベルは怪我をしている冒険者がいたら回復してやってくれ」

「どうしてわたくしがそんな事をしないといけませんの?」

「そりゃ美人に回復してもらった方がみんな喜ぶだろ?」

「ま、まあそうですわね。美人に産まれてしまったのですから仕方ないですわ」

ベルもチョロいな。

でも本当の事だし嘘って訳じゃない。

「範囲が広いな」

この程度の魔物に殺られるようなヤツは俺のパーティーにはいない。

となれば分散して戦うか。

「町の北側、防壁門前はエルに任せる!東側は佐天頼む!俺は西の山側から南に向かう!」

「分かりました。任せてください」

「この程度の魔物で騒ぎおって。一気に倒してやるわ」

俺は西へと向かった。

「洋裁起きろ!お前は南側の魔物を頼む。あっちはそんなに多くはないだろう」

「やっぱり自分も‥‥町を守る為だし仕方ないか‥‥」

洋裁はナイフから人の姿へ変わると、町の南へと跳んで行った。

さて、俺の妖糸は最長二キロまで攻撃が可能だ。

千里眼を駆使して山から下りて来るヤツを全てここで倒してやるぜ。

俺は転生前にゲームセンターでやった事のある『飛んできたミサイルを迎撃するゲーム』が如く魔物を倒していった。

最初は押されている所からのスタートで苦労もしたが、一度押し返し始めると迎撃はドンドン楽になっていった。

落ちものパズルゲームで積み上がっている状態からゲームをスタートし、徐々に盛り返していくような感じだな。

十分ほどで自分の二キロ圏内は全て片付いた。

つまり町の周りはほぼ片付いたと言っていいだろう。

洋裁が俺の所にやって来た。

「もう大丈夫そうだね」

「そうだな。ご苦労さん」

洋裁はすぐにナイフへと形を変えて鞘へと戻った。

俺は一応千里眼で確認しつつ、町の防壁門の所へと戻った。

既に佐天もそこにいた。

「向こうは片付いたのじゃ」

「こちらも順調に荷馬車は町へ入りましたよ」

「怪我人はほとんどいませんでしたわ。だからわたくしもこちらで魔物退治していましたわよ」

「守るのは難しいんだよ。魔物を倒してしまっていたんだよ」

どうやらみんなそれぞれの役割を完璧に果たしたようだ。

そして想像以上に楽勝だったみたいだな。

「お前たち、さっきは悪かったな。イライラして強くいっちまって」

謝ってきたのは冒険者ギルドで絡んできた冒険者だった。

「別にいいよ。あの程度の事を言われるのは慣れてるしな」

最近はそうでもないけど、昔は子ども扱いが多かったよなぁ。

「まさかお前たちがこれほど強いとはな。いつもなら日付が変わるまで戦いは続くし、死人が出る事も多いんだ。できればずっとこの町にいてもらいたいくらいだ」

「それは無理だけど‥‥一つアドバイスすると、魔物が町まで来ないようにした方がいいんじゃないか?魔物が町までやってくる理由は簡単だし」

俺がそう言うと、一気に周りの冒険者やギルド職員たちの視線を集めた。

「本当ですか?魔物が町までくる理由が分かるのですか?」

「対応策は分かるの?分かるなら教えて!」

「流石にそれは嘘だと思うんだが、これだけアッサリ魔物たちを退けた力は本物だ。もしかしたらと期待してしまうぞ」

なんだかんだと俺は皆に取り囲まれていた。

こんな子供の言う事でも信じるのかね。

だったらアドバイスしてやらなくもない。

「原因が分からないのか。一応聞いておくが、魔物がやってくるようになったのはここ五年から十年くらいの間じゃないか?」

「ああそうだ。十年位前からやってくるようになって、そこからドンドン増えてきている感じだ。最近は特に酷くなっている」

「だろうな。これは里山問題ってヤツだよ」

「里山問題?」

この世界の人間に言っても分からないな。

里山問題は、転生前の世界ではよく言われていたものだ。

人間が住む町や村と、動物が住む山との間に、昔は里山というものがあった。

里山が人間の生活圏と動物の生活圏を分けていて、だからお互い住み分けができていたんだよな。

しかし里山は、安い木材を海外から輸入するようになったりして放置されるようになり、やがて森と一体化していったんだ。

里山とは人間の手が入った山で、動物が住むのに適さない環境の山の事。

それがなくなった事で動物が町の近くまでくるようになり、更にそれを食料とする魔物までもが付いてきてしまっている。

だったら里山さえ復活させれば、動物が山を下りて来る事もなくなり、魔物も当然下りてはこないのだ。

尤も、偶には間違って下りて来るヤツもいるだろうけれどね。

それくらは余裕で対応できるだろう。

「簡単に説明するとだな‥‥」

俺は一から丁寧に説明していった。

その中でこの辺りの昔の事も確認したが、ほとんど俺の予想通りだった。

町を大きくしていく中で木材を必要とし、やはり里山は広く存在していたようだ。

しかし町の発展が止まり、木材利用も減って、里山は放置されるようになったらしい。

「だったらそこを何か別の事で利用するしかないな。人が定期的に行き、しかしずっとそこにいる訳ではないような使い方をね」

「では放牧地にでもしますか?」

「それじゃ駄目だ。それを目当てに魔物がやってくる。山の獣が寄り付かず、尚且つ魔物も興味を示さない何かじゃないとな。それと人が入るなら午前中から夕方前までがいいだろう。魔物がなるべく活動していない時間がいい」

やり用はいくつか考えられるが、これ以上はこの町を知らない俺が言う所でもないだろう。

それに俺は功績のようなものを残して目立ちたくないんだよな。

「具体的には?」

自分たちで考えろよ。

「極端な事を言えば、俺なら町を中心とした十キロ四方を結界で覆う事だってできる。でもそれはお前たちには無理だろ?現実的な対応を考えるにも俺はこの町の事は分からない。後は自分たちで考えるか、領主と相談するか、それでも無理なら本国に相談すればどうだ?」

流石に本国なら対処するだろう。

「領主か‥‥昔はいい領主だったんですがね。本国に相談も無理でしょうな」

全くどうなってるんだ愛洲王国は。

自由の国で良い所だと思っていたけれど、もしかして統治能力がなくて自由にさせているだけってオチだったら驚くぞ。

いや、折太郎は本物だから、全部が全部悪い訳ではないだろう。

逆に全てがいい訳でもないって事か。

でも俺は絶対何もしないぞ。

「ならば俺の友人を通じて愛洲の上層部に話しておいてやる。流石に自国の町が魔物に襲われてピンチと知ればなんとかするだろ」

「おお!ありがとうございます!」

「本国が動いてくれればなんとかなるよな」

「いやぁ助かった」

「誰も助けてくれなきゃ俺たちみんな死んじまう所だぜ」

おいおいおい。

自分たちでなんとかしようってのは誰もいないのかよ。

こうなるともう終わりだよな。

国だったら滅亡まっしぐらだ。

平和ボケというか、依存体質というのか、あのアニメ的に『生殺与奪の権を他人に握らせるな!』って言いたくなるね。

まだ一応自分たちで魔物退治をしている辺りは、完全に腐っているとは言えないが。

そんなわけで俺は、大聖を通じて愛洲大使館の折太郎へと話をした。

折太郎はただ礼を言い、後は自分たちで対処するとのことだった。

安心した俺だったが、しかしその対処の方法が資幣への連絡と傭兵隊への依頼だった事には愕然とした。

金は貰えるけれど、結局分身とはいえ俺が対応する事になりましたとさ。


次の日の朝、俺たちはコツの町を後にする。

今日の午後には大聖が仙人たちを連れてこの町へとやってくるはずだ。

大聖は神武国の関白だとバレないように身をかくしサポートするだけで、仙人が仕事を請け負った代表として話をする。

仕事内容は町近くの里山があった辺りの木を全て切り倒し、その後焼き払いはげ山にする。

木材は当然無駄にしないでいただくよ。

大聖が一緒に来たのは、瞬間移動と木材を異次元収納へと回収する為だからね。

森の出口にはミノタウロスの魔石を使った威嚇用魔法装置を設置していく予定だ。

殺気を放ち、時々破裂音で脅す程度のものだけど、森の獣を追い返すくらいの事はできるだろう。

魔石から微妙に魔素も出ている気がするから、不快にも感じるはずだ。

しかしこれくらいの事、自分たちでやって欲しいよね。

まあ傭兵隊がやれば数時間で可能だから、理にかなっていると言えばそうなんだけどさ。

どう考えても傭兵のやる仕事じゃないだろ。

折太郎は何故傭兵にやらせようと思ったのだろうか。

何でも屋的なものと理解しているのだろうか。

仮に適材適所だったとしても、此処まで自分たちでやらないのって、転生前の世界でも疑問に思っていた事はあったよな。

DIYって言葉が少し流行ったけれど、それって俺にしてみたら当たり前なんだけどね。

ちょっとした事ですぐ専門家に頼るの、経済全体的には良いかもしれないけれど、いざって時に困る気がするんだよな。

今回のようにね。

おそらく領主には相談していたのだろう。

でも何もしなかった。

それってもしかしたら、それくらい自分たちで対処しろって事だったのかもしれない。

いや考えすぎか。

町の危機を救うのは領主の仕事だもんな。

何か事情があったと信じたいよ。

「結局策也がなんとかする事になってしまいましたね」

「自分たちで対処させようと頑張っておったのにの」

「領主が誰だか知らないですが、ちゃんと仕事してほしいんだよ」

「今回の件で、なんとなくこのパーティーが分かったような気がしますわ。厄介事を呼び寄せてしまうようですわね」

ベル、お前分かっているのか?

その中に自分も入っている事にさ。

そんなわけで厄介事にまたも巻き込まれてしまった俺たちは、愛洲王国の王都『カガラシ』を目指して歩き出した。

2024年10月6日 言葉を一部修正

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