シャインドラゴン
どうして山に登るのか。
そこに山があるからだ。
そんなわけないだろ。
進むべき道に山があって乗り越えるしかないから山に登るのだ。
回避できるのなら流石に登らないよ。
だってこの世界の山は、特に越えられない山は魔素が濃すぎて気分が悪くなるからね。
俺たちは予定していた通り『コツ』の町に行く為、越えられない山を越えようと山を登っていた。
魔素の濃い時に魔界に行ってなんとかなったのだから、越えられない山を越えるくらいはなんて事ないと考えていた。
魔素対策の指輪もあるからね。
しかしやっぱり高い山には高い山の難しさもあるし、炎龍の里がある山よりも遥かに高い山では魔素も更に濃かったりするわけで、思った以上に苦しい登山となっていた。
しかも今回は慣れていないベルもいる。
ベルにとってかなり過酷である事は、誰もが理解する所だった。
「頑張れ!あと少しだ。この場所と頂上ならもう魔素の濃さに差はない。此処まで来たなら後は精神力だけだ」
「でも無理はしないでくださいね。ゆっくりでいいのです。駄目ならいつでも手を貸しますから」
「はい。エルグランド様。でもこんな事で負けませんわ。私はもう冒険者になったのですわ」
ベルは高飛車で馬鹿でムカつく所も多い奴だが、根性は本物だ。
美人には美人の悩みがあって、ここまで色々苦労を乗り越えてきたのだろう。
今も尚高飛車で強くあるのは、それは評価するべき所なのかもしれない。
でも馬鹿は嫌いだしムカつくものはムカつくんだけどね。
それでも頑張る人は応援したくなるもので。
「頑張るんだよ。死んでも怪我しても策也さんが治してくれるから大丈夫なんだよ」
金魚よ。
確かに治せるけれど死なないように頑張ってほしいんだが。
でも綺麗な肌にこれだけ傷をつけてまで頑張るベルには、『いけ好かない芸能人が裏ではメッチャ努力していました』って話を聞いた時に覚える感情と同じものをわき立たせる所がある。
これはこの子の見方を変えざるを得ないな。
ベルが頂上に手をかけた。
そして這い上がるように頂上へと上がり、そして立ち上がった。
立ち上がった先には、雲の上の世界が広がっていた。
「ベネ、よく頑張りましたね」
「おほほほほ!わたくしにかかればこの程度の山‥‥うっ‥‥どうって事ありませんことよ」
こんな笑い方するヤツ本当にいたんだ。
でもここにきてもまだそれだけ言えるんだな。
ベルは高飛車だけど、それだけの努力はしてきているか。
ちょっとくらいは許してやらないとな。
「これからしばらくは山頂付近を行って、それから下りに入るわけだが、移動用の家で少し休むぞ。建物の中は魔素の量が調整されているからしっかり休め」
みんな自分の魔力を使って体を守って来てるわけで、しばらく休まないと続かないだろう。
酸素は水中でも呼吸ができる魔法を住民カードに付与してあって、こちらで対応できるから大丈夫だ。
俺たちはしばらくの間、金魚の料理を食べながらリラックスタイムを送るのだった。
思った以上に休息は必要だった。
エルですら数時間の休息では回復しきれていない。
ベルなら尚更無理があった。
結局この日は、この後山頂を移動し山の向こう側が見える辺りまで移動するだけで終わった。
そしてしっかりと一晩休養した後、山を下りて行った。
下りるのは登るよりも楽だった。
行けば行くほど心も体も楽になるわけで、自然と足が進んだ。
直ぐに俺たちは跳ぶように山を下り始めた。
「思ったほど大した事ありませんでしたわね。わたくしにかかれば楽勝なのですわ」
「登りは死ぬ寸前だっただろ?まあ最後まで一人で登り切れるとは思わなかったけどな。ベルは流石に言うだけはあるな」
「わたくしも見直しましたよ。スバルで話した時はただのわがままなお嬢さんにしか思えませんでしたからね」
「エルグランド様‥‥わがままやるにもそれなりに力が必要なのですわよ」
全くだな。
政治家は努力もせず偉そうにふんぞり返って好き放題しているように見えるけれど、そうなるにはそれなりの努力もしているのだろう。
努力の方向が間違っているだけなんだろうな。
「ところで先ほどから妙な気配に付けられておるが、どうするのじゃ?」
佐天の言う通り、頂上から少し下りた辺りから、結構な数の何かに後を付けられていた。
「おそらく魔獣だな。このまま連れて下りる訳にもいかないし、この辺りで退治しておくか」
俺はそう言ってその場で止まり、後ろを振り返った。
仲間のみんなも同じように続いた。
「付けられてるとは知らなかったんだよ」
「わたくしもハッキリとは分かりませんでした。何か違和感は覚えましたが」
「魔物ですのね。わたくしの力を見せる時がきたようですわね」
「力を見せるどころか、お主じゃ勝つのも難しいかもしれんぞ」
追ってきた気配は十‥‥いや十一か。
しかし魔獣にしてはおかしいな。
普通の魔獣なら人間を見ればすぐに襲い掛かってくるはずだ。
話せるか?
「おい!出てこいよ。お前たち、どうして俺たちを追ってきたんだ?」
俺が声をかけると、一人、また一人と岩陰などから姿を現した。
「人間?」
「それとは違う気配も感じるんじゃがの」
「こんな所に人間がいるとしたら、かなり能力は高そうですね」
俺たちが話す中、一人の男がゆっくりと近づいてきた。
その姿には、三国志に出てくる関羽を思わせるような凛々しさがあった。
長い髭はないけどね。
「お前たち人間だな?この山を越えられる所を見ると、かなり能力の高い人間だ」
「まあ全員がただの人間じゃないがその通りだ。そういうあんたたちも人間なのか?少し違う気もするんだが」
普通の人間がこの山の上に来る事なんてできない。
この者たちの魔力は結構高そうだが、ただの人間がなんの準備もしていなければ、この程度の魔力では命の危険もある。
俺たちは魔素対策の指輪をしているから問題ないだけなのだ。
「我々は人間ではない。お前たちと話す為に今は人間の姿に変化しているだけだ」
「なるほどな。じゃあ一体何者なんだ?」
「我々は‥‥」
そういって追ってきた十一人は徐々に姿を変えていった。
まあ人間に変化するのだから、だいたいどんな魔獣かは想像できたけどな。
そこには、十一体の『光龍』の姿があった。
シャインドラゴンは、群れで生活するドラゴンの中では最上位だ。
ダークドラゴンよりも強いとされるが、最近まであまり確認例がなく、人間社会で悪く云われる事が少ないドラゴンでもある。
現在は九頭竜領内に王国も築かれ存在も認知されているが、まだまだ実体は知られていない。
「シャインドラゴンじゃの」
「へぇ~‥‥これがですか」
「わたくしビビッてませんわよ。とても大きくていらっしゃるのね」
話しかけてきた一体が一番大きく二十メートル弱といった所か。
他はだいたい十二メートルから十五メートルといった大きさだった。
「それでシャインドラゴンが俺たちに何か用か?」
「我らを見ても驚かない人間か。流石だな」
「人間の生活圏でドラゴンも一緒に暮らしていたりするからな。そういやシャインドラゴンの光龍王国もできたんだ。珍しくもないしな」
俺がそういうと、ボスらしきドラゴンの顔が少し険しくなった。
「やはりその話は本当だったのか。我らを代表する国が下界にできたと聞いて信じられなかったが」
「ほとんど人間が勝手に決めた事だけどな。それにおそらく光龍王国の王は人間に使役されているぞ。ドラゴンを使役する能力を持った奴らがいるようだから」
「なんだと!あり得ん!もしもそんな事があったら我らの恥さらしではないか」
「そうは言ってもな。人間の中にはやたらと強いヤツもいてな。ドラゴンなんて敵じゃなかったりもする。お前でも多分抗う事はできないと思うぞ」
俺も最初にこの世界に来た時は、ドラゴンなんて最強レベルかと思っていた。
しかし旅をして色々なヤツに出会う中で、人間にこそ強いヤツが多い事を知った。
伊集院、有栖川、九頭竜と、それらに使える奴らに出会ってきたが、既にドラゴンを凌駕する力を持った者たちがいる。
おそらく本家の者たちは、それ以上に強い力を持っているだろう。
王族の中堅クラスである御剣の大将ですら魔王クラスの力を持っていたのだ。
もしかしたら俺と同レベルのヤツが、この世に何人いてもおかしくはない。
「ではお前たちはどうだ?我らよりも強いと言えるのか?」
「そうだな。俺だったらお前ら全員十秒以内に殺せるぞ?他の奴らでもお前と互角か、それ以上の強さを持っている」
「俄かには信じられないな。人間は非力なはずだ」
「お前らドラゴンは基礎能力が高い事に胡坐をかいて何もしないのだろうが、人間は日々向上する為に努力を続けてきているからな。それも何千年もだ。それを今の世界が証明してるだろ?この世界のほとんどは人間が支配している」
人口が多いのも理由だし、アリが多いからと一々殺して回るヤツもいない。
でも実際、今全てのドラゴンがアリだと思っていた人間に対して攻撃を仕掛けてきても、多分人間側が勝つだろう。
アリの一部は気が付いた時にはスズメバチに、そして神にも匹敵する怪物になっているのだから。
「そっちの女も強いのか?信じられないので少し手合わせしてみたいのだが」
よりによってベルを選ぶか。
こいつの強さはまだよく分かっていないんだよな。
魔力的にはこのボスドラゴンには負けている。
ただあれだけのマジックアイテムを渡してあるから、負ける事は無いと思ってさっきは互角とか言っちゃったけど、正直自信はない。
此処は違うヤツに戦ってもらうか。
「わたくしと手合わせがしたいですって?おほほほほ!恐れ知らずでいらっしゃるようですわね。死んでも文句は言わないでくださいませ。尤も死んだら文句も言えませんわね」
おい、煽ってどうする。
こいつはブレないヤツだな。
さっきはビビッていたくせに。
まあでもやるというのならやらせてみよう。
死んだら蘇生してやるよ。
「じ、自信があるようだな。では一つお手合わせ願おう。手加減はできそうにないか。こちらも殺した後の文句は聞けんぞ」
「の、望む所ですわ」
「ベル!多分大丈夫だ。お前の力なら負ける事はない。それに死んでもちゃんと蘇生してやるから安心しろ!」
「そうなんだよ。策也は蘇生ができるんだよ」
「わらわもできるんじゃがの」
いや佐天の蘇生は闇の魔法だからあまりできるという認識は持ってほしくないな。
なんか嫌だから。
でも俺たちの言葉で、ベルは少しリラックスできたようだ。
攻撃を受ければ痛みも感じるし辛い所もあるんだけれど、死んでも大丈夫という安心感は割と大きい。
これで良い勝負が見られるだろう。
「お前たち!手出しは無用だぞ!」
ボスドラゴンが仲間に声をかけていた。
さて、どんな戦いが見られるか。
「それでは行きますわよ」
「何時でもかかってこい!」
ボスドラゴンの返事を受けて、ベルはドラゴンへと向かって行った。
それをボスドラゴンが手で薙ぎ払う。
ベルはアッサリとボスドラゴンの攻撃を受けた。
「バカ!ちゃんと間合いを考えろ!体格差があり過ぎるんだから、不用意に近づいてどうするんだ!」
「いきなり決着がついちゃったんだよ」
「いやまだじゃの。ちゃんと風の守りで直撃は回避しておるし、ミスリルの守りも働いておる」
フッ飛ばされたベルは岩山に激突したが、その際もミスリル化してダメージを回避していた。
「まあ、これくらいの攻撃じゃ無傷だよな」
ちょっと焦って声を上げてしまったが、俺の与えたマジックアイテムで守りは堅いんだよ。
「少し手ごたえが無かったな。風の魔法で回避したか。翼龍の気配を感じたぞ?」
「わたくしには十二人の翼龍さんがついていますの。そう簡単にはやられませんわ」
一々手の内を明かす必要ないんだぞ?
もうバレてるから問題ないけど。
ベルは立ち上がると今度は慎重に間合いを詰めていった。
しかしさっきのドラゴンの攻撃は速かった。
あの速度で攻撃されると、ベルの間合いに入る前に排除されるだろう。
移動速度を上げられないと一撃を入れる事もできないぞ。
となると魔法って事になるわけだが‥‥。
ベルもそう考えたのか魔法で攻撃を始めた。
炎、氷、雷、爆裂、色々と放つも相手にダメージを与えられない。
流石にシャインドラゴンだ。
概ね属性攻撃に対しては耐性があるからな。
それだけじゃない。
ベルは魔力こそ高いものの基礎技術はマスタークラスで、魔法じゃその差は埋められない。
けしにぐの剣改で攻撃を入れる事以外に、ダメージを与える術はないだろう。
「今度はこちらからいくぞ」
ボスドラゴンは口からエネルギー弾を発射した。
攻撃はベルをかすめる。
風の守りで回避するのは難しい攻撃だ。
ただベルは集中しているようで、なんとかなりそうな気もしてくる。
ボスドラゴンは光背彗星なんかも放つが、ベルはギリギリの所で全てをかわす。
そして風の守りを移動に利用して一気にボスドラゴンとの距離を詰めた。
「上手い!」
「タイミングはバッチリですね」
「じゃが攻撃は通用するかの?」
剣による攻撃は相手の胸の辺りに届いた。
傷がついてそこから血が流れだすと同時に、体を蹴ってベルは相手との距離を再び取った。
攻撃を畳み掛けても良かったが安全策を取ったか。
「大した事ありませんわね。この程度なら本気でやれば簡単に倒せますわ」
よく言う。
それにしてもこの場面でハッタリが言えるのだから恐れ入るよ。
「ははは。なかなかやるな人間。戦いはこの辺りでいいだろう。力量はだいたい把握した。確かに人間の能力は侮れないわ」
ここで終わらせてくれたか。
正直この戦い、続けていたとしても長く決着はつかないだろう。
いずれは終わるだろうが、どちらが勝ってもおかしくないくらい力が拮抗していた。
いや、お互い決め手の無い戦いといった所か。
「もう終わりですの?残念ですわ」
そう言いながらベルがホッとしているのが分かった。
此処はそういう事にしておいてやろう。
「元々本気の戦いじゃないんだ。この辺でいいだろう」
「そうですね。別に敵ではなさそうですし」
「ベルトーネさんはホッとしてるんだよ」
「そうじゃな。これ以上やると痛い目みそうじゃしな」
おいおい、男性陣がそういう事にしておいてやったのに、女性陣は女性に厳しいよな。
転生前の世界でも、女性の敵は案外女性だったりしたか。
女性の地位向上といいながら、女性が生きづらいルールにしていくのは見ていて恐ろしかったものだ。
成功している女性を蹴落とそうとしているようにしか見えなかったもんな。
ちゃんと女性の事を考えている人もいたけれどね。
悪い方がより目立つからそういう印象が残るんだよ。
「正直に言いますと、これがわたくしの限界でしたわ。でもまさか此処までドラゴンと戦えるとは思っていませんでした。今回はそれで満足ですわ」
やけに素直に認めたな。
もしかしたら本当の意味で自分に自信が持てるようになったのかもしれない。
自信が有れば自分を良く見せる事なんて不要なのだ。
気が付くとドラゴンたちが人間の姿へと変化していた。
「我々は人間を侮りすぎていた。おそらく我々の同族が人間に使役されているという話も本当なのだろう。しかしドラゴン族ナンバーワンのプライドにかけて、人間に使役されているヤツが我々の代表でいるというのも放ってはおけん。そこで相談なんだが、なんとかする方法はないだろうか。せめて我々の代表なら使役されていない者を王としたい」
俺たちに近づいたのはそういう事か。
何処かでそのような情報は得ていたのだろう。
そこで俺たちを使って確認した。
といってもなんとかするのは難しいなぁ。
九頭竜のフレイムドラゴンが炎龍王国を乗っ取ろうとした手口を逆に使う方法もあるが、おそらくテイムされた現国王を今すぐこいつが倒すのは難しいだろう。
だとしたら‥‥。
「おそらく現在の光龍王国国王は九頭竜という人間一族に使役されている。その証拠がつかめればそれをネタにお前らが正式な王国を主張する事は可能かもしれない。或いはお前が使役されているシャインドラゴンを圧倒できるくらいに強くなるか」
「強くなればなんとかなるのか?」
「おそらくな。お前らの仲間はまだ他にいるんだろ?全員で光龍王国に行って、王は強い者がなるべきだと話しに行くんだ。決闘で王を決める事になれば国をお前たちで乗っ取る事ができる」
「なるほどな。使役されている証拠を見つけたとしても、王を代える事ができるかどうかは可能性でしかないとするなら、俺が強くなる方が確実か」
「そうだな。それに少なくとも今すぐ五分程度にはなれると思うぞ。俺が武器やら防具やらを提供してやるし。ただし相手も同じように武装する可能性はあるけどな」
プライドとか言うくらいだから、武装も素直に受け入れられないかもしれないけれどね。
「いや、勝負は真っ向勝負で挑みたい。自らを鍛えてみよう。所でできるだけ早く強くなるにはどうすれば良いと思う?」
「そうだな。死と隣り合わせのギリギリの戦いを繰り返す事か。仲間に黒死鳥がいたんだが、そいつはそうやって使役されたフレイムドラゴンにも楽勝できるくらいに強くなったぞ」
「なに?黒死鳥如きが使役されているフレイムドラゴンに勝っただと?」
「それも半年くらいでだったかな。元々強い黒死鳥ではあったが、戦いが好きだった事も強くなれた理由かもしれん」
「分かった。とりあえず精進してみる事にしよう。強くなったら協力してくれるか?」
「勝てるくらいに強くなればな。あんた名前は?俺は策也だ」
「名前か。ボスとか長とか云われているが‥‥」
やっぱりまた名前がないのか。
トップの者ってのはなんだか寂しいもんだな。
「じゃあお前にコレをやるよ。人間の住民カードだ。強くなるために色々な所へ行くんだろ?だったら人間の町にも入れた方がいいだろ。お金も少しは入れておいてやる。名前は『愛光雲長』でどうだ?愛洲領内の光龍で、お前の人間姿は文武両道の神である関羽雲長に似ているからな。髭はないけど」
「神の名前をいただけるのなら悪くないしそれでいいが、カードは貰ってもいいのか?」
「構わんよ。じゃあ名前を設定させる」
俺は博士に頭の中で命令を伝えた
「ただ貰うのは悪いから、我々が集めた光物の一部をやる。人間にとっては金になるかもしれない」
「そっか。じゃあ遠慮なく貰うよ」
断るのもどうかと思うからな。
雲長はそう言うと、仲間の一人に持ってくるよう指示をしていた。
仲間が頼まれたものを持ってくる間に、みんなでカードの使い方や人間界のルールを教えていった。
当然頭のいいドラゴンだから、一度言えば全て覚えてくれる。
十分もしない間に、シャインドラゴンが手に色々と抱えて持って帰ってきた。
「これらをやる。受け取ってくれ」
「ほう。面白そうなのもあるな」
かなり魔力を感じるマジックアイテムも交じっていそうだ。
どういうものかは追々調べるとしよう。
俺は全て異次元へと収納した。
「便利な魔法だな」
「さっきも説明したが、住民カードにも二十個までなら収納できるから、持って行きたいものは持って行けるぞ」
「そうだったな」
さて、とりあえず話は終わりかな。
「じゃあ俺たちは旅の続きに戻る。強くなったらさっき説明した神武国か妖精王国、或いは私設民間傭兵隊の本部辺りを訪ねてくれ」
「その時は頼む。それでは策也、またいつか」
こうして俺たちはシャインドラゴンの雲長と別れた。
「策也ならパーティーに誘うのかと思っていましたよ」
「金魚もそう思っていたんだよ」
「いや、今の俺たちは戦いが続くような旅をしていないからな。強くなるならもっと別の旅をする事になるだろ?」
本来俺も強くなる為に旅をしているんだけれど、どういう訳か今はこれでいい気がしているしな。
一応魔力を高める為の修行は一日の終わりに欠かさずやっているしいいだろう。
今はこのメンバーでマッタリ旅をするのだ。
「そうじゃの。このパーティーの旅は美味い飯を食べる為じゃからの」
「わたくしは今回のような冒険がしたいですわ」
「金魚はみんなと一緒に楽しめればなんでもいいんだよ」
「わたくしは色々な町を見て回りたいですね。時には戦闘も大歓迎です」
みんな目的は違う。
でも一緒に旅に出る。
異世界の冒険の旅は本当に不思議なものだな。
俺は勢いよく山を飛び降りて行くのだった。
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