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見た目は一寸《チート》!中身は神《チート》!  作者: 秋華(秋山華道)
お助け編
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友達が欲しい!?嫌われ者のベッピンさん

ファッションってのは不思議だ。

誰かが『良い』と言えばなんだか良く見えてくるし、時代によっても変わってくる。

転生前の世界では、時代時代で色々なファッションが流行ったが、ずっと残っているものはそう多くはない。

それってつまり、冷静に考えたらほとんどがダサいって事なのかもしれない。

それに長く続いているものの中にも、俺が納得いかないファッションがある。

破れたジーンズだ。

正直見ていてドキドキしちゃうんだよね。

この子、みんなに可哀想な子だって思われたりしてないかなって心配しちゃったり。

それってやっぱりオッサンなのかなぁ。


ヴリトラが神武東征となり神武国の天王についた事で大聖の仕事に余裕が出て来たわけだが、仙人たちの再教育という新たな仕事ができてしまった事で、西園寺の望海姫に付いていられる人がいなくなってしまった。

そこで望海と弥生は、俺の管轄する場所の中で最高レベルに安全な場所、空中都市バルスへと移動してもらう事になった。

「この妖精大帝も霧島と中身は同じだから、俺や霧島と喋るのと同じようにして良いからね」

「分かった!」

何故か望海は霧島になついていたので、コレを言っておけば全てが上手く行く。

大聖の俺は望海バトンをこうして大帝へと受け渡した。

大帝も俺のコピーであるムジナの魂だから、俺としては別に何も変わらないんだけどね。

この頃そんな妖精王国に、いくつかの問題が浮上していた。

一つはメール暗号化サービスの受付を始めた途端に、町が何者かに攻撃されるという事件が起こった。

妖精王国がそういった輩と戦ったとして負けるとは考えられなかったが、騒ぎ自体好ましいものではないので、受付業務はすぐに辞める事となった。

でも黙って引き下がる俺ではない。

こうなったら全て魔法通信ネットワークを使ったオンライン登録でサービスを提供してやる。

秘密基地が完成し、住民カードを直接細工する必要が無くなったので、サービスへの参加意思だけ確認できれば登録できるのだ。

受付用メールアドレスを用意し、そこに参加意思を送るだけでサービスを受ける事ができるようにした。

使用料金はその住民カードから引き落としさせてもらう。

マスターボックスがあるから何でもできてしまうのだ。

しかも人工衛星を経由して三日月島へと通信されるので、何処からアクセスされているのか九頭竜が調べようにも調べる事ができない。

空からアクセスされているように見えるわけで、流石の九頭竜でももう何もする事ができなくなるだろう。

これは神がやっていると理解する者も少なからずいるんじゃないかな。

ただこういう何でもできてしまう力は、排除の対象になりかねない。

だから皇は今まで、自分たちの通信記録が見られないようにする事以外ほとんど触れてこなかったわけだ。

俺たちがやり過ぎれば疑われるのは皇であり、当然世界会議では責められる事にもなる。

それは俺の望む所ではないから、メール暗号化サービスを提供しているのは『秘密組織』と大々的に宣伝しておいた。

このようなサービスを提供せざるを得なかったのは、『九頭竜が魔法通信内の情報を盗んでいる為』だとハッキリ伝えておくのも忘れない。

それは多くの王族貴族が知る所であり、少なくとも今回の件で九頭竜に味方する者はいなかった。

今後に関しては、秘密組織の動向を注視していくという事にはなるのだろうけどね。

まあ世界中が納得するような事だけに使えば、特に問題視もされないだろう。

尤も、標的となった九頭竜のような国は、秘密組織の実態を探し続けるのだろうとは思うけど。

さてこの日、妖精王国には別の問題が起こっていた。

いや、この手の問題は頻繁に起こっているのだけれど、今回は特にといった所か。

妖精王国ジャミルを訪れる人というのは、『妖精を見たい観光客や冒険者』か『妖精と友達契約をしたい金持ちや冒険者』となっている。

見に来るだけなら特に問題にはならないのだけれど、友達契約をしにくる人が問題を起こす。

と言うか、『どこで友達契約ができるんだ?』『友達契約させろ』『友達契約にはいくら金を出せばいい?』など、友達契約できるのが当たり前のように言ってくる。

友達契約は妖精との信頼関係や、何より妖精が認めたヒューマンでなければならないわけだが、友達契約を求める輩は最初からその資格が無いような奴らばかりなわけで。

町の者たちはそれを説明するのに一苦労となっていた。

そしてこの日も、対応に難しい客がジャミルの役所を訪れてきていた。

「わたくしはエルフ王国スバルで最も美しい女性に選ばれた『昴流ベルトーネ』ですわよ。さっさと友達契約できる妖精を出しなさいよ」

大帝の俺が様子を見に来ると、とにかく綺麗なエルフの女性が騒いでいた。

薄い色の金髪は長く、肌も綺麗でとにかく見た目の印象は綺麗な女性だ。

聞こえてきた内容から察するに、エルフ王国スバルではかなり有名な美人さんなんだろう。

そういえばスバルに行った時、町一番のベッピンさんが結婚するとかって情報を耳にしたが、もしかしたらその人なのかもしれない。

自分でいうだけの事は確かにある。

しかし性格やなんかは顔に出るもので、少し視線が鋭く我がままそうに見えた。

服装もイタイくらいに派手なお姫様衣装で、砂漠の真ん中にある町で見ると不自然極まりない印象が伝わって来た。

ベルトーネの対応をしているのは、元魔人のゴーレム従業員の一人だった。

「さーせんが、そんなサービスはうちじゃやってないんすよ」

「おだまりなさい。わたくしがお願いしているのですから、黙って妖精の一匹くらい差し出しなさいよ」

無茶苦茶な人だな。

この部屋にも妖精は何人もいるんだけど、みんな隠れて様子を窺っていた。

しかしこうやってごねる人ってのは何処の世界にもいるもんだな。

転生前の世界でも沢山いて、相手するのに疲れるからもう言いなりになったりするしかなくなる。

ゴネ得って言葉もあるくらいで、本当に普通の人にとっては敵だよな。

それでも今回は残念ながら、ゴネても職員にはどうにもできない事なんだよ。

仕方ない。

出て行って話をするか。

俺は受付の奥から従業員の後ろまで歩み出た。

「申し訳ありませんがベルトーネさん。妖精の数を一匹二匹と数えるような人と友達契約する妖精は、おそらくこの町にはいませんよ。お引き取りください」

「なんですって?!あら、あなたはどちら様でいらっしゃいますの?」

俺が出るといきなり態度が柔らかくなった。

「私はこの国の王、妖精大帝です。この羽をごらん下されば分かるとおり妖精ですよ」

「あら王様。妖精にも人間サイズの方がおられるのですね」

「妖精大王として生まれて来た妖精はこのくらいの大きさになるんです」

「そうなんですのね。では大帝様。わたくし、あなたと友達契約してさしあげてもよくってよ」

この女、ちょっと見た目が綺麗なだけでよくも此処までマウントポジション取れるよなぁ。

ある意味凄い人だと思うわ。

「さっきも言いました通り、この町にベルトーネさんと友達契約する妖精はいないですよ」

「だったら結婚してさしあげてもいいですわよ」

おいおい、もしかして俺、ヤバい女に目を付けられたんじゃあるまいな。

「ベルトーネさんは今年結婚されたばかりじゃありませんでしたか?」

あの時の話が本当なら、きっとそういう事だよね。

「もう別れましたわ。別れても王族の苗字は返しておりませんけどね。でも王族として認められておりますのよ。王族同士の結婚なら釣り合いも取れてますわよね」

王族の苗字か。

エルフ王国の苗字事情はよく知らないけれど、どうやら『昴流』は王族の苗字らしい。

という事はエルとは親戚になるのか。

話を聞くに、おそらくエルの親戚と結婚して別れたって感じか。

「残念ですが、エルフと妖精では種族が完全に違うので結婚はできませんよ。子を残す事ができませんから」

「子供なんてどうでもいいじゃありませんか。結婚に必要なのはお互いの意思だけで充分なのです」

転生前の世界でもこういう事いう人、いたよなぁ。

同性婚を認めろとか。

でも結婚ってのは、『子供を作れる者同士が一緒になる事』なんだよね。

もしも此処を違えたら、動物との結婚やアニメキャラとの結婚、或いは兄妹親類との結婚や幼女との結婚まで認めなければならなくなる。

何を基準に決められた法律やルールなのか、そこを(たが)えてはいけない。

国や家を継いでいく人を、或いは未来を託す人を残す為に結婚するわけで、もしも子供が作れなければそこで家は終わるのだ。

結婚はその家を受け継いでいく為のもの。

尤も、一夫多妻でも多夫多妻でも良くなれば、また見方も変わってくるのだろうけれどね。

或いは国や家を受け継いでいくという価値観を全ての人が失くせば、結婚なんてどうしようと勝手にはなるんだろうな。

ただ人間には寿命があって、それに近づくにつれ何かを残したいという気持ちも強くなってゆく。

だからその価値観を失う事は現状はあまり考えられない。

目の前にいる個人の今の幸せだけを考えるのなら、結婚なんて全て自由にして良いと思う。

でもこれは家の未来、国家の未来、そして大きく言えば世界の未来に関わる事だから、国家を預かる今の俺は、子供の作れない結婚を公に認めるわけにはいかないのだ。

もしもそれをする指導者がいたら、民や未来を捨てたと言えるだろう。

「私は国を預かる立場の王です。王が国の繁栄に反する行いはできませんよ。あなたの為に民を裏切れないという事です」

大それた発言をしたものの、本音は『こんな我がまま女と誰が結婚できるんだよ』って感じなんだけどね。

王という立場上、なるべく波風は立てないように言っただけだ。

「わたくしの求婚を断るなんて信じられませんわ。それこそ男としてどうなんでしょう。もういいわ。妖精一匹早く差し出して頂戴。それで勘弁してあげるわ」

それもまた案外その通りだと思ってしまうな。

女性からの求婚を断る男なんて。

でも逆に日本の神話では、女性からの求婚や誘いは駄目だとされている。

蛭子が産まれたからね。

五体満足健康で良い子供を産みたいなら、プロポーズなんかは男性側からするのが良いとされているのだ。

俺は転生前日本人だったから、その辺りは信じる事にしている。

それにしてもこのベルトーネとかいう女、エルフのくせに馬鹿だよな。

どうしてこんなになってしまったのか。

そこには理由があって、きっと同情すべき事もあるんだろう。

でも流石にいい加減腹が立ってきたな。

「何度も言いますが、妖精はペットでもなければモノでもありません。あなたは妖精と友達契約を結ぶにふさわしくありませんから無理です。お引き取りください」

俺がそう言うと、取り巻きの連中が少し殺気を放ってきた。

やる気かねぇ。

エルフだからそこそこ能力が高いのは認めるが、こちらにはゴーレム蘇生した元魔人たちが結構いるんだよ。

それに大帝自身かなり強いから、ぶっちゃけこの程度のエルフたちじゃ相手にもならないと思うが。

俺たちは身構えた。

するといきなり思わぬ事が起こった。

ベルトーネがいきなり泣き出したのだ。

「わーん!妖精が欲しいよー!一人じゃ寂しいんだよー!友達が欲しいんだよー!えぐえぐ‥‥」

まいったね。

女の最終兵器だよな。

泣かれると男としてはどうにも辛いわけで。

「普通の友達で良ければ私がなりますよ。ただしあなたの今の性格では私も辛いですし友達ができるとも思えません。性格を直す努力はしてもらいますけどね」

「ぐすん‥‥友達になってくれるの?」

おいおいちょっと可愛いじゃねぇか。

こういうしおらしさを見せられるとな‥‥。

というわけで本体の俺。

「エル。突然だけどパーティーに新しいメンバーを加えようかと考えているんだが、どんな奴が来ても問題ないか?」

「えっ?いきなりですね」

「まあな。今妖精大帝の所で色々あってな。パーティーに加えようかどうか悩んでいるヤツがいるんだ」

ベルトーネ本人が嫌がるかもしれないけどな。

「わたくしは誰でも問題ありませんよ」

「本当か?なら誘ってみるか」

一応エルの許可は得たと。

「どうして金魚たちには聞かないんだよ?」

「そうじゃな。わらわは問題ないけどそれでも聞いてほしいのじゃ」

「いや、エルの知り合いっぽいからな」

「なるほどそうでしたか。えっ?誰でしょうか?」

「まだ内緒だ」

エルの許可も取った事だし、さて大帝の俺。

「はい。更にあなたの仲間に推薦したいパーティーメンバーがいます。あなたはその冒険者パーティーに入って一緒に冒険してみるといいでしょう。そしたら多少性格も矯正されるでしょうしね」

「冒険者パーティー?わたくしがですか?」

「ええ、きっと楽しいですよ。皆さん上下関係抜きに対等に話せる仲間になるのです。つまり友達になれるという事です」

流石に無茶だったか?

こんな我がまま女じゃ流石に冒険とか無理を言い過ぎたかもしれない。

「やりますわ。冒険者になりますわ。わたくし、美しく生まれすぎてしまいそうある事をずっと求められてきましたが、本当はそういうのがやってみたかったのですわ」

ありゃりゃ。

まさかそういう系のお嬢様だったか。

箱入りで期待され大切に育てられた人にありがちな話。

「ではパーティーの所に送りますね」

「ええ。ですが準備は‥‥」

「そんなものはあちらに行ってからどうぞ」

俺はベルトーネを俺のいるところまで瞬間移動させた。

直ぐに本体の俺の目の前までベルトーネはやってきた。

「よく来たなベルトーネ。みんな!今日から新しく仲間になるベルトーネだ!俺はこれからベルと呼ぶぞ?いいな?」

「えっ!?えっ?!ここは何処?あなたは‥‥子供?なんですの?あれ?この仮面の子供、どこかで見た事がありますわね」

「まさか新しい仲間がベルトーネとは‥‥」

エルは少し頭を抱えていた。

おそらく親族の嫁だった?女だから、それなりにはこいつの事を駄目だと理解しているのだろうな。

でもこれからその駄目な所を矯正してやるのだ。

「ええ!?エルグランド様ではありませんか!どういう事ですの?まさかエルグランド様のパーティーにわたくしが?」

「そのまさかだ。みんな!ベルに挨拶してやれ」

「私は金魚だよ!とっても美人さんなんだよ。よろしくなんだよ!」

「わらわは熊王佐天じゃ。元悪魔王サタン様じゃからの。お主が弱くて魔物に殺られそうになったら助けてやるから安心するがよいぞ」

俺は少し佐天の頭をこづいた。

「何をするんじゃ!?」

「佐天偉そうにしすぎだ。人間界じゃお前が助けられる事の方が多いかもしれんぞ」

「うむ。確かにそうなのじゃ。よろしく頼むのじゃ」

さて次は‥‥。

「ベルトーネ。此処では甘えは許されませんよ」

「エルグランド様‥‥分かってますわ。それにここの方々はわたくしに対する目が今までのどの方とも違います。どうか仲間に入れてほしいです」

「自分、洋裁っす!大丈夫っしょ。甘えた事いうようなら放置され死ぬだけだし‥‥」

おいおい洋裁。

突然出てきていきなり厳しい現実を突きつけてやるなよ。

「洋裁さんよろしくですわ。わたくしこう見えても苦しい事に耐えるのには慣れているのですわ」

「ほう。じゃあ自分が楽できるように頑張ってね‥‥」

洋裁はそういうと、再びナイフに戻って鞘に収まった。

「えっと‥‥洋裁さんって‥‥」

「洋裁は俺のナイフとして復活したダークドラゴンだ。前世が島津家の洋裁。結構複雑な奴だけど偶に頼りになる仲間だ」

「えっ?ドラゴン?それに佐天ちゃんはさっきサタンとかなんとか‥‥」

まあ驚くだろうな。

「このパーティーは今結構尖った奴らばかりでな。エルは元エルフ王国国王、佐天は悪魔王、金魚は‥‥死ぬ前は有栖川領ガガンモの元領主で今は幽霊だ」

「それでパーティーのリーダーである策也は、此花第二王国継承権第二位の王子で数多くの国を統括する影の支配者って所ですかね」

おいおい。

こいつも仲間になるんだからいずれ知られるわけだが、そういうのはあまり話さないでほしいぞ。

特別に見られるのは好きではないからな。

「それでベルトーネさんの自己紹介がまだなんだよ」

「あ、はい。わたくしは昴流ベルトーネよ。この世で最も美しいと云われているわ。良くしてくださって構いませんわよ」

やっぱりこういう挨拶になるのね。

でもそれで引くような奴らはもううちのパーティーにはいないか。

「なんかとっても偉そうなんだよ」

金魚がベルの頭をチョップした。

「いきなり何をなさるの!?」

「わらわもじゃ」

「ではわたくしも」

続いて佐天とエルもベルの頭を小突いていった。

「エルグランド様まで‥‥」

「このパーティーに入った以上、ベルは誰の上でも下でもないんだよ。仲間は皆対等だ。偉そうなことを言ったらそうなるから覚えておけ」

ベルは少し惚けていたが、直ぐに納得したようだ。

「子供が生意気な事を言いますわね」

「俺はこう見えて十九歳だぞ。もう大人だ」

「わたくしは二十四歳ですわ。策也くんよりも年上なのですわよ」

マジか。

いや、エルフだから実はもっと上なのかと思っていたけど、俺の実年齢からみればたたのジャリガールじゃないか。

実年齢は言えないけれどね。

「策也くんは止めろ!それなら呼び捨てでいい」

「いやですわ。策也くんは策也くんですわ」

くっそ。

この女、もう一度泣かせてやろうか。

「ベル。その恰好では冒険者はできないな。俺が服を見合ったものに変えてやる」

俺はそういうと、魔法でベルのお姫様衣装を斬り刻んだ。

と言ってもスカート丈を短くして、クリノリンスカート風に変えただけだけどね。

クリノリンスカートってのは、スカートが傘のように開いた針金とか入ったヤツだ。

据わる時にはちゃんと閉じるよう魔法も施してある。

「いきなり何を?」

「どうだ?それなら動きやすいだろ?」

「ええ。確かに言われれば‥‥割と気に入りましたわよ」

「ところでベルは戦闘経験はあるのか?」

よく考えたら、冒険者をやるなら戦闘は必須だ。

リンの時のように一から特訓ってのも面倒だよな。

「一応魔法と剣術は一通りマスタークラスですわよ」

「ほう」

邪眼で確認した所、魔力はもう少し大きくドラゴンクラス辺りか。

この中に入れば最弱だが、金魚のようにアイテムで固めればもう少し強くなれそうだ。

「武器は剣術に使うような剣だな。防具は何か使えるか?」

「防具は使った事がありませんわね」

「そっか。ベルが戦う為に必要な武器アイテムは用意してやる。明日まで待ってくれ」

「用意してくださるの?感謝して差し上げますわ」

本当にこいつをパーティーに入れて良かったのだろうか。

まあこうやって話をしてよく観察すれば、ただのツンデレ系かと思えるけどね。

こうしてベルトーネが仲間に加わった。

果たして上手くやって行けるのだろうか。

なんとかなるとは思うけどね。


次の日の朝、俺は既に夜の内に武器アイテムを用意していた。

「ベルにはこれらのアイテムをやる。まずは武器だが、けしにぐの剣改だ。けしにぐの剣を叩き直して女性でも使いやすい形状に変えた。ジャバウォックの魂が三つと魔石を十個使用したインテリジェンススォードにしてある」

インテリジェンススォードとのコミュニケーションを通じて、少しでも性格がマシになればという思惑もある。

「なんだか凄そうな剣ですわね。凄い‥‥持つとその凄さが伝わってきますわ」

「分かるか。ならばつかこなせるだろう。闇と炎属性の攻撃が可能だ」

「素晴らしいですわ」

「次は守り用アイテムだ。俺は仲間に死なれるのが一番嫌だからな。守りアイテムは付けてもらうぞ。まずはミスリルゴーレムの指輪だ。魂と魔石を三つずつ付与してあるから、いざって時には勝手に守ってくれるだろう。体や衣服をミスリル化する」

魂を三つ持っているので、三人同時に攻撃されても対応が可能だ。

「いざって時には安心ですわね」

「それともう一つ、翼竜の魔石を合計十二個使った守りの腕輪が二つだ。強力な風が敵の攻撃を受け流してくれる。飛行能力もアップできるだろう」

「飛行はそんなに得意じゃありませんの」

「これを付けたら自在に高速で飛べるようになるさ」

飛行能力は俺のパーティーでは必須だからな。

飛べない冒険者はただの冒険者さ。

「ベルには以上だが、佐天にはまだ何もやってなかったから用意しておいた」

「おっ!そうなのか?それは嬉しいの」

「大事に使ってくれよ。これは環奈の魔石を使った短刀だ。名付けて『環奈刀』。超音波振動で切れ味を向上させ、巨大な敵に対応したり間合いを広げられるよう長さも魔力によって変化させられる」

「環奈?冒険者を引退した前の仲間じゃの」

「そうだ。そいつが使いこなしてた二本の刀を一本の短刀にしたような感じだ。きっと魔石が使い方を教えてくれるだろうさ」

知らんけどね。

魂は無くてもそこに念は残っていると思うんだよな。

信じる者は救われるさ。

こうして俺たちは心機一転ザマクナの町を目指した。


そして二日後ザマクナの町に到着した。

魔法通信で調べた所によると、ザマクナはファッションの町だそうだ。

この世界の物とは思えない素敵な衣装を着た人が町を歩いているらしい。

自由の町ならではの衣装もあると云う。

服装なんて何処も自由だとは思うのだが、更にどう自由にできるのだろうか。

俺たちはとにかく町へと入った。

感想は‥‥。

「いやマジで見苦しい感じがするな」

「奇抜な服装をした人が多いですね」

「いやいやいや。奇抜って言葉だけで表しちゃ駄目だろ?あの女なんか片乳丸出しだぞ?いいのか?」

「全部は出てないんだよ。先っちょに何か貼ってあるんだよ」

「取れましたわね」

乳がモロに出ているのに、その女は気づかずに歩いて行った。

「あちらの殿方も見苦しいですわね」

「ほとんど急所が丸見えだな。自慢できるほどのものではないぞ?」

「策也‥‥でも確かにあれじゃほとんど見えてるのと同じですね。パンツが薄すぎます」

「こりゃ完全にモザイク表現が必要じゃの」

そ、そうだよ佐天。

つかなんで佐天がそんな表現知ってるんだよ。

もしかしてこの世界にもエロビデオやエロ本のようなものがあったりするのだろうか。

「この町、もう出ますか?」

「そうだな。エゲツナイの町もそうだけど、自由は行き過ぎると駄目だと改めて確認できたよ」

「金魚は悪くないファッションだと思うんだよ」

「じゃあ片乳出して歩くか?」

「金魚は胸が小さいから遠慮するんだよ」

「魔法ででかくしてやるぞ?」

「‥‥さあ、今日も移動用の家で過ごすんだよ」

こうして俺たちは五分もしないうちに町を出た。

滞在時間最短の町だった。

2024年10月5日 言葉を一部修正

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