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見た目は一寸《チート》!中身は神《チート》!  作者: 秋華(秋山華道)
中央大陸編
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短い屋敷での生活と世界の事

ゴーレムたちに働かせ、本体である俺は、町で買いあさって来た本を読んでいた。

この世界の事をもっと知っておく必要があると考えたし、そこから何か不老不死の呪いを解く方法を見つける事ができるかもしれないと思ったからだ。

「何々?この世界は天界と魔界、そして人間界から成るか‥‥」

天界と人間界を行き来する事はできない。

しかし魔界と人間界は、魔界の扉を通って行き来が出来るようだ。

その扉は今もあって行き来が行われているという説と、今は無いが時々扉が現れて魔王が復活するという説に分かれている。

どちらが正しいかは分からないが、確実に言えるのは行き来は可能ということ。

天界には神というヒューマンが、魔界には悪魔というヒューマンが住んでいる。

どちらも人間とはくらべものにならないくらいに魔力が強い。

天界の場合はそれを神力ともいう。

人間界には、人間以外に、エルフ、ドワーフ、(オーガ)、獣人が暮らしている。

エルフとドワーフは、人間と神の半神とも云われているが定かではない。

どちらも人間と共に暮らしていたりするが、それぞれの町もあったりする。

エルフの特徴は、魔力に優れ耳がやや長く、ドワーフの特徴は身体能力に優れ比較的身長が低いヒューマンである。

逆にオーガと獣人は、人間と悪魔の半魔とも云われ、人間界では嫌われる存在となっている。

だからどちらも人間と共生はしておらず、それぞれ隠れ里を持ってヒッソリと暮らしている。

オーガの特徴は、魔力にも身体能力にも優れ、真っすぐな二本の角が生えている。

獣人の特徴は、色々な動物の特徴を持っている種が存在し、身体能力に優れているといった感じである。

ヒューマンは全て交配が可能だが、エルフとドワーフの間、或いはオーガと獣人の間には子は産まれないとされる。

だがエルフとドワーフの間には稀に産まれる事があるらしく、その子は神の子とも云われている。

人間とエルフとドワーフの血は強く、オーガと獣人の血は弱く、例えば人間とオーガの間に産まれる子は全て人間となる。

人間とエルフ、或いはドワーフの間には、ハーフエルフやハーフドワーフなどが産まれ、血が強い方に特徴が近づいていく。

三代もすれば薄い血の特徴は無くなると言われている。

オーガと獣人の血は弱いが、時々覚醒遺伝によって、オーガや獣人の血が入っている人間からオーガや獣人が産まれる事もある。

そういった場合は捨てられる事も多いが、町から出て隠れて育てる親もいる。

そんな事もあり、僅かではあるが住民カードを持たない人間もいる。

「俺も設定では何かそんな事が絡んでいるのかもな。オーガの血を引く人間の子とかな」

俺は読み終えた本を閉じ、次に勇者に関する本を読み始めた。

昔この世界には色々な人種の人間が住んでいた。

しかしその中で肌の黒い黒人は、オーガや獣人と同様に『人間と悪魔の間に産まれた子』として嫌われていた。

三千年ほど前、世界から完全に黒人を消してしまおうとする者が現れ、世界的に黒人狩りが行われた。

そして完全に黒人はこの世から姿を消した。

しかし黒人の血は色々な人の中で生きていた。

時々覚醒して黒人が産まれてきたが、その都度捨てられたり殺されたりしていたらしい。

しかし黒人が忘れられた頃、世界に悪魔が現れた。

誰も悪魔を倒せず世界に絶望が広がった頃、捨てられた一人の黒人がその悪魔を打ち滅ぼした。

それで世界はその黒人を勇者ともてはやした。

その黒人は子を残さず死んでいったが、それ以来時々産まれてくる肌の黒い人間は、勇者として大切にされる事になった。

ただ黒人は子を残す事が不可能だった。

いつしか黒人は、悪魔が現れる時に産まれてくる勇者として語り継がれている。

「俺は日本人そのままって感じだから、勇者ではなさそうだ」

俺は読み終えた本を閉じ、別の本を手に取った。

「今度は魔物の本か」

魔物は、魔界に住む悪魔以外の他生命体を指す。

魔獣、魔生物の総称だ。

魔生物の事だけを指して魔物という事も多い。

魔物は魔界の扉を随時行き来しているという説と、こちらで既に生態系の一部に組み込まれているという説がある。

正解は両方だというのが最も有力で、生態系の一部に組み込まれている魔物は既に確認済みだそうだ。

魔獣の頂点と云われるドラゴンは、既にいくつかの場所でこちらに住み着いている事が確認されている。

それと並ぶ黒死鳥と呼ばれる魔獣も、生態系がある程度解明されていた。

百年に一度リーダーの入れ替わりがあり、その時期になると人々の住む地まで山から下りてくるらしい。

新鮮な鯉を食べる必要があるとか。

力はドラゴンの方が上だと言われているが、『空の黒死鳥』『陸のドラゴン』というのが二大魔獣である。

どちらも人の姿に変化する事ができて、案外人と一緒に暮らしているのではないかという話もある。

ただ、魔物にはもっとレアな存在も多く、ドラゴンや黒死鳥よりも強い魔物は存在する。

クラーケンもその一つで、百年ほど前には南の大陸の東の海で確認されたとか。

「俺が今いる大陸は中央大陸だから、南の大陸に行くには、西の大陸を経由して行く事になりそうだな」

他にも、クラーケンは東の大陸や南の大陸の西側、西の大陸の東側でも確認が記録されている。


俺の読書は二週間ほど続いた。

気が付けばこの世界に来て初めての正月を迎えていた。

そしてこの日、丁度御伽総司の住民カードが失効するはずの日でもあった。

つまり御伽総司は、去年のこの日に何らかの理由で住民カードと木彫りの熊を失う事になったわけだ。

或いは死亡した可能性も高い。

少なくとも此処まで住民カードの再発行を依頼した形跡はないから、間違いなく死んだと考えていいだろう。

これで晴れて総司の住民カードは俺の物になったと言える。

「背乗り完了か」

背乗りとは他人の身分を盗んで成りすます行為である。

前世では某国人が日本人に成りすます犯罪があったな。

あの時問題視していた事を異世界で自分がやるとは思わなかった。

少し失笑が漏れた。

さて、時を同じくして金集めに出していた七体のゴーレムが、目標にしていた百億円を集めていた。

チートの俺が金を集めるのは容易い。

盗賊の金を巻き上げ、ドラゴンが巣にためたお宝をかっさらえばいいだけなのだ。

俺は『瞬間移動魔法』で御伽総司のゴーレムだけを先に部屋に戻した。

他ももう回収して良いのだが、少しやり残した事が有ったり、冒険の途中だったりで今止めるのは惜しい所だったので、キッチリ片付いてからにする事にした。

おっと瞬間移動魔法について説明が必要かな。

瞬間移動魔法とは、一度行って見た事のある場所へ一瞬で移動する魔法である。

この魔法なら本来竜宮城へも一瞬で行けるはずなのだが、記憶が曖昧で転生前に行った事のある場所へは転生できないようだった。

俺は御伽総司の住民カードを操作した。

まずは集めた百億円の中から十億円を異次元から取りだし、それをカードへ収めた。

お金はほとんど異次元に収納する事に決めている。

ゴーレム間で受け渡しする必要もないし、住民カードを使うと手数料という名の税金を取られるからね。

これでようやくランクアップだ。

ブロンズから一気にプラチナに上げる場合は、プラチナに上げる十億円だけで済むので多少お得である。

ちなみにゴールド価格は五千万円、シルバー価格は百万円、紛失再発行時のブロンズは十万円となっている。

町の外の者が新規でブロンズカードを作る場合は一億円で作れるが、王族やギルドの許可が必要なので発行してもらえる人は少ない。

だからカード譲渡による販売が裏で行われているわけで、そこではだいたい一千万円で取引されているようだった。

それでランクアップだが、魔法により自動で行われる。

カードの枠の色が、ブロンズから銀色基盤の少しカラフルな感じへと変化していった。

「おお!なんかスーパーレアなカードみたいだ」

ホログラム加工されたトレカのような輝きを持ったカードと言った方が分かりやすいか。

枠だけだけどね。

カードのランクアップが終了すると、直ぐに何やらメッセージが届いた。

新機能を先に試したかったが、とりあえずメールが届いているようなので確認する事にした。

「カードに関する何か説明でも送られてきたのかね」

そう思ってメールを開いてみると‥‥。

『よう!オレオレ!久しぶり!とうとうゴールドカードになったんだな!おめでとう。それで早速なんだが、約束の五千万円、振り込んでくれよ。ゴールドになったら返すって言ってたよな。よろしくな』

‥‥これは‥‥。

「オレオレ詐欺じゃねぇか!!」

俺は一瞬住民カードを床に投げつけそうになった。

ゴールドカードとか言ってる辺り、メールが送れるようになったら自動で送信する類の詐欺メールだろう。

こんなのに騙されて振り込むヤツいるのかね。

俺は気を取り直して機能を確認していった。

魔石、アイテムが収納できるようになっていて、インターネット機能も前世で使っていたスマホと大差はない。

通話機能に関しては、番号が二十桁あるので、一々打ち込むのは面倒そうだ。

通話帳というか住民番号帳もあるので、通話をする可能性のあるやつはこちらに登録しておこう。

既に二件の登録があった。

この町の冒険者ギルド協会と、冒険者ギルドの総合受付番号のようだった。

「とりあえず冒険に出る前の目的は、これでミッションコンプリートかな」

何時から冒険の旅に出かけようか。

読みかけの本もまだ残っているし、金集めに出しているゴーレムももう少しキリの良い所までやる事をやらせておきたい。

一人旅も良いが、ここ二週間ゴーレム七体で冒険してきた。

経験値的には三ヶ月半の冒険をしたようなものだ。

それに今度は子供の姿で旅をする事になる。

誰か大人を連れて行きたいな。

出来れば可愛い女の子がいい。

「定番だしな」

そんな事を思いつつも、俺は読みかけの本の続きを読む事にした。

この世界では、皇族、王族、貴族のみが名前に苗字を持つ。

その苗字の数は決まっていて、新たに貴族になるには、どこかの貴族家系が絶滅して苗字フリーにならないと駄目だとか。

或いは既にいる貴族と結婚したり養子などになる手もあるとか。

何にしても今は苗字に空きは無く、新たに貴族になるのは難しいという話。

「まっ、俺は既に貴族だし関係ないけどな」

この後も俺は一日本を読み続けた。


次の日の事だった。

メールが一通届いていた。

相手はおそらく、背乗りした御伽総司の父親らしき人物。

内容から察するに、どうやら総司は親が反対する中家を出たようだ。

御伽家は貴族の中ではかなり下級で、王都『シタッケネ』を中心に活動する大商人の家系のようだった。

総司を跡継ぎにするつもりだったようだが、出ていかれて困っていたのだろう。

そんな息子がプラチナカードへランクアップしたのを見て、複雑な気持ちになっているのが窺える。

とにかく一度戻ってこいという内容だった。

「しかし、貴族に背乗りは早まったかなぁ。身内のいないヤツを探すべきだったか」

返事を返すかどうか迷う。

「いや、返事しねぇとこの家に乗り込んできそうな雰囲気なんだよなぁ」

相手の情報は、相手のナンバーと名前、それに生年月日が分かっていれば閲覧可能だ。

既に此処の住所も割れていると見て間違いないだろう。

仕方ない、バレないように最小限で返す事にしよう。

「戻らない。今重要なクエスト‥‥クエストもバレてそうだから、ミッション継続中、ってこんなもんでいいかな」

俺はそれだけをメールで返信した。

その日の夕方再びメールが来ていたが、俺は未読のままにしておいた。

忙しくてメールが確認できない風を装った。

これはもうこの家には長くはいられないかもしれない。

このメールの間隔から、おそらく父親はかなり忙しい人物だろう。

暇なヤツなら即返信できたはずだ。

慌てる必要もないだろうが、何ヶ月も住んでいたらおそらく父親はやってくる。

まだ二週間程度しか暮らしてないんだけどね。

ゴーレムを戻して準備ができてたらすぐに旅立とうと思った。

2024年9月24日 言葉のおかしな所を修正

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